充足した三頭山から笹尾根

(1995/10/28、29、山梨県北都留郡上野原町、東京都西多摩郡檜原村)


かねてからアマチュア無線のフレンド局でお互いに50メガバンドで山岳移動をこなしている河野氏(JK1RGA)と泊りがけで山岳移動に行かないか、というプランが進行していた。秋たけなわ、選ぶ山には限りがない、が近く手ごろに泊れる(=無料で泊れる)施設があるという事で奥多摩は避難小屋のある三頭山に白羽の矢が立った。

JR五日市の駅前から都民の森までの直通バスに揺られる。満員だ。先週も三頭山に移動運用したという河野氏から伝え聞いてはいたが三頭山東面は噂通り「都民の森」と称され開発されつくされていた。オリエンテーリングコースや、特に巨大な木工センタ−などがありここまでせずとも、といった感だがこれで子供達が自然に触れる機会が増え山や自然に興味を持つようになれば、というのが狙いなのかもしれない、と道々河野氏と話す。そのせいで園内には登山路や散策路などが錯綜してわかりずらい。

(三頭山山頂に揃った50メガ山岳移動マニア?
左から7K1CVP、JK1RGA、7M3LKF、JF2HBH)

悪い事ばかりではない。都民の森からの三頭山は標高差も余りなく比較的容易に山頂に着くのだ。都民の森が無ければバスもここまでは上がって来ないだろう。恩恵にはあずかっている。。登りついた山頂からは富士が殊のほか大きい。イヤーすごい眺めですねぇとどちらからともなく声がかかる。さて無線。ぐるりと見回すとキラリと光るものが山頂の一角にある。近づいてみるとSSBの変調音すら聞こえる。ありゃー先客だ!FT690mkII単体にダイポールをあげて運用しているのは「山と無線」のメンバ−鈴木氏(7K1CVP)だった。それでは先に寝場所を確保しますか。山頂から10分程度おりると立派な三頭山避難小屋。荷物をおいて山頂に戻ると鈴木氏と何やら親しげに話し込んでいる男性一人。名前を聞けば何とこれまた「山と無線」仲間の堤氏(JF2HBH)だった。今までに何度も交信している。期せずしての初顔合わせとなった。いくら良い季節とはいえこんな狭い山頂に50メガの山岳移動マニアが期せずして4人も揃うとは驚きである。

立派な避難小屋は最近建て替えられたばかりのようで木の香りが漂い暖かい。同宿は7、8人。ヘッドランプを灯しながら夕食。ビールを飲みながらストーブに着火して夕食を作る。私のオプティマス123を見て河野氏は「懐かしいもの持ってるねぇ」。よもやま話に盛り上がる。山で過ごす一夜の楽しさ、さもない話かもしれないがそのよもやま話の素晴らしさといったら!

* * * *

早朝の笹尾根は気持ちよい。ブナ林を透かして見上げる空、さわやかな空気が身を包む。今日はこのまま笹尾根を歩き丸山まで歩こう。曇天で空が低いが足は進む。ブナの自然林とスギやヒノキの人工林が交錯する。ブナはいい。心がなごむ。スギ・ヒノキの人工林は暗く、気が重くなる。笹尾根はなだらかなコースが続きいくつもの峠道が交差する。尾根の北側・秋川沿いの集落と南側・鶴川沿いの集落の間にいにしえの頃から数多くの交流があったことの証であろう。

休憩をしていると河野氏が赤いザックからガサゴソとお菓子を取り出した。東鳩の「オールレーズン」だった。干葡萄の入ったやわらかなクッキーは妙に腹によく収まってくれる気がする。「いいでしょー、これ。山には昔からこれを持ってくるんだよね。食べやすいしもちがいい」。河野氏はかつては職域山岳会でアクティブで雪から岩までをこなしていたという。山も無線も20年のベテランだ。学ぶべき事はたくさんある。

里に近いせいか丸山の山頂はゴミが多く少し荒れ気味。鶴川の谷へ下山しようと試みるが廃道っぽくコースがわからない。秋川の谷へとルート変更。峠道は自然なコース設定で歩きやすい。下りついた人里バス停で河野氏にトコロテンをご馳走になる。

気の合う人とののどかな山行はあっという間の二日間だった。充足の山歩きだったといえよう。又何処かご一緒させてください・・。

都民の森10:00−三頭山・アマ無線11:30−三頭山避難小屋(泊)16:30/6:25−槙寄山7:20−丸山・アマ無線8:40/12:50−笛吹バス停14:15−人里バス停


アマチュア無線運用の記録

三頭山 1531m
山梨県北都留郡上野原町
FT690mkII+リニア(10W)、2elHB9CV
46局交信、最長距離交信:茨城県多賀郡
笹尾根の最高峰。奥多摩屈指の人気の山。電波の飛びは申し分ないが人気の山ゆえに人が多い。
丸山 1098m
山梨県北都留郡上野原町
FT690mkII+リニア(10W)、2elHB9CV
43局交信、最長距離交信:宮城県宮城郡
笹尾根上の1ピーク。特に顕著な高まりもない。10W出力に2elHB9CVと自分には珍しいほどのパワフル装備で運用した事もあり満足のいく交信結果だった。

Copyright:7M3LKF,Y.Zushi,2000/2/15


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