神楽峰から中尾根ルートの山スキー 

 新潟県南魚沼市 2018年3月31日


昨日は神楽峰へ登ってきました。終日快晴、風もなく、山頂はポロシャツ1枚でも快適、絶好の山スキー日よりでした。

神楽峰への山スキーは前回が2005年4月23日でしたので13年ぶりでした。バックカントリーの人気が増えたこととパウダーを求める外国人を中心としたスキーヤ・ボーダーの増加による遭難が増えているとはここ数年聞く話ですが、それを受けてか今や神楽は冬季のスキー場外への立ち入りは雪崩ビーコンの装着が義務付けられていました。ビーコンはスキー場下部でレンタル出来ると知り予約をしておきます。前回の神楽峰はスキー場トップ(最上部の第5リフトは休止していた)からの往復ルートでしたが、今回は幸いに第5リフトも運営しており、これで登坂時間は1時間弱はカットできました。辿ったルートは第5リフトから神楽峰往復、そして中尾根ルートでの下山。

第5リフトからの登り始め。ここにはセキュリティゲートがあり、係員がルートや装備を細かく聞いてきます。日本語よりも英語による注意看板のほうが大きいのはやはり外国人入山者が多いと言うことでしょう。さらにビーコンの受信機がゲートに設置されており、電光掲示板に○が着くと入山可能。ここでシールを張り、出発です。広大な雪原の中にオオシラビソが点在し、規模は小さいですが、なんとなく南八甲田の睡蓮沼から駒ヶ峰に上がる雪原風景と近いものがあります。広いので距離感はピンとしません。100mほど標高を稼ぐと顕著となってくる尾根がありこれに 乗るとしばらくすすんで小ピークへ立ちます。ここが主稜線。神楽峰はここかは南はわずかです。

雪庇の発達した主稜線、波打っつており歩きづらいのですがシールを外すことなく注意深く進みます。最も高くなったところが神楽峰のピーク。前方に は苗場山がおおきく聳えています。山岳展望は抜群で360度の展望が得られます。妙高・火打が望めるのは当然としても、飯豊はSさんに言われる まで気づきませんでした。また、日光白根や燧も国境稜線の先に顔を出していました。北には日本海。南側の関東平野は霞んでいます。

無線は 私はいつものアルインコDJ-S57にRH770での運用。手始めにみなかみ町移動の仲間Tさん(JH1QZW) をメインで呼ぶとコールバックがありQSO、そのままCQを出し続けると流石に上越国境の2000m級、関東平野へのロケはとても良く、430FMでは呼ばれ続けます。出力は2.5W に落としているのですが、それでも一度もメインに戻ることなく30分弱で10局の交信。山と無線メンバーのNさん(JI1RPN)にも呼んでいただきました。まだまだ呼ばれ続ける気配ですが、先もあるので閉局をアナウンスしました。

神楽峰山頂でシールを剥がし、さあ下山。大きな洗濯板状の主稜線ですが、やや登りもあるもののさして苦労なく登りで上がってきた小ピークに戻りま す。ここからは更に北へ、中尾根が派生するジャンクションピークを目指すことになります。眼下の大斜面を一気に滑ります。ザラメ一歩手前の雪です が滑りやすい。大きなターンを数回、風が気持ちよい。滑りきってジャンクションピークへ登り返し。ここは板をザックにつけてツボで登ります。雪は腐っておらず靴が潜ることはありませんでした。Sさんはシートラーゲン。板をザイルで引っ張っています。

ジャンクションピーク1984m点に立ちます。ここから中尾根が北東に向けて派生するのですが、もう一本南側に、東に向けて派生する小尾根があります。これに間違って乗ってしまうと中尾根南側の谷に誘導されます。この中尾根南斜面と谷は雪崩の起きる地帯でもあり、正確に中尾根に乗りたいところです。この小尾根に乗ってしまうのを嫌い一旦ジャンクションピークまで登ったのです。地形図とコンパスで周囲を俯瞰。ピークから発生するいくつかの尾根、この中から望む尾根に正確に乗るのはなかなか難しく、滑り始める前に入念に北側を偵察し地形図と照合します。北側がすぐに谷になっているのを確認してから北東に向けて滑り出します。

滑り始めはオオシラビソの疎林の中を緩く進みます。尾根の態をなしていない原ですがじきに尾根らしくなってきます。雪崩ゾーンを避けるべく右側には行かぬよう忠実に尾根を辿ります。木の間隔が程よく、スキーも快適に回せます。尾根は太くなったり細くなったり、南八甲田の櫛ケ峰を滑っている 気持ちになります。

無心に滑って振り返ると下りてきた尾根がすでに高くなっています。叉滑ります。樹間でターン。気持ちよい。生きてて良かった、大げさですがそんな 気分すら感じます。やがて尾根が細り斜度も急になります。高度計は1700m。地形図でもここから標高差50mは等高線が密になっています。ターンが厳しく、横滑りで下がります。雪が緩いので真下への横滑りもやりやすい。たちまちスキーの下に雪がたまり、ラッセル車の様相です。きつくなってきてキックターンを交えます。

下るにつれて雪質が悪くなってきます。このルートの着地点である和田小屋が眼下に見えます。やがて下からゲレンデの音楽が流れてくるとゴールは近い。このまま尾根の末端まで行きたいところですが、南の谷へ一旦舵を切るとそのままゲレンデの横に飛び出ます。中尾根の末端はゲレンデ裏手の谷へ落ちており、忠実に下っていたらゲレンデには登り返すところでした。

無事ツアー終了。パトロール小屋に顔を出し、下山した旨名前を告げます。ここから見上げる中尾根は、高度感もあり、逆行の中に聳え立っており、これを下ってきたのか、と思うと、嬉しさが尽きぬことなく湧き上がってきます。半日の小さなルートではありますが、東京からも近く、手ごろなわりに は充実感のある絶好のバックカントリールートと言えるでしょう。(ただし山頂近くまでリフト・ゴンドラをフル活用するのでお金はかかる)

ここで暫くビーコンの訓練タイム。神楽スキー場はビーコン練習の為にこのエリアの一角を区切ってビーコンパークとし、そこに幾つもの発信機を埋没させており、自分達が身につけている雪崩ビーコンでそれを探す、という訓練が出来るのです。パトロール小屋でその埋没発信機をONにする装置を貸してくれます。少し長くなりますが、なかなか勉強になりましたので、使ってみた感想なりを文末に記そうと思います。

3月の最終日を山スキーで満喫できました。下山後湯沢ICそばの神泉の湯(500円)で汗を流して、珍しく渋滞が殆どない関越を南下し横浜に戻りました。

第5リフト終点から登り始める
シールが良く効いて快適な登りだった
苗場山(中央)を捉えると神楽峰(左手前)
は小さな高まりに過ぎなかった
中尾根の下り始めはオオシラビソの疎林だ。
ルートをを外さぬよう地形図をチェックする
滑り降りてきた中尾根
楽しめるルートだった

* * * *

アバランチ(雪崩)ビーコン使い方
いまのアバランチビーコンは昔のアナログ時代と違い、デジタルビーコンです。レンタルされた機種は BCA社のトラッカー(私)、トラッカー 3(Sさん)です。単4三本で駆動します。

発信モード: 入山する際にビーコンをONにします。新しい乾電池を入れておけば250時間程度は発信するので、充分な発信時間と感じます。 457kHz、メーカーを問わず共通の周波数です。

探索モード: 探索モードに切り替えると、デバイスにもよりますが遭難者の発するビーコンシグナルを捉えると、手持ちのビーコンから探索音が発信 され同時にその遭難者の位置を方向(トラッカーでは方向別の5個のLEDの点滅する方向、トラッカー3ではディスプレイに表示される矢印)、およ びディスプレイのLED距離表示(メートル単位)がでます。この3つのシグナルで埋没ビーコンを追い詰めていきます。さらに近づくと探索音の音量もまします。

これで限りなくゼロに近づいたところで遭難者が埋没しているとなり、ソンデなりプローブで探り当ててスコップで掘り出す、ということになります。

さて実験
ビーコンパークに入り、4つの発信機をそれぞれONにして、探し出します。20メートル四方程度の敷地なので、発信機をONにするとすぐに手持ち のビーコンが唸りだします。LEDの矢印に従い歩いて行くとビーコンの探索音が大きくなっていき、表示される距離も縮まってきます。

ところが矢印の方向に進んでも、表示距離が縮むときもあればかえって離れるときもあります。しばらく訳がわからなかったのですが、Sさんが、 「あ、後だ!」と一言。なるほど逆向きに歩くと距離が縮まってきました。この矢印表示は、ようは方向・軸の表示ということであり、その軸にしたがって前進するか後退するかは距離計を見ながら決めると言うわけですね。

こうして発信源を追い詰めていきます。手持ち距離表示が5mが4mに、さらに2mに。断続探索音ブザーもますます音量が大きくなります。ところが それ以上距離が縮まりません。一体どこだろう、うろうろします。と、ここで、再びSさん、「下だ!」 なるほど、地面に近づけると、1mから 0,7mへ、0.5mへと表示が縮まりました。

最終的には発信機そのものは雪中に埋めてあるためか見つけませんでしたが、探し方は分かったように思えます。
矢印の方向は軸の表示であり、前進するか後退するかを距離計で決める2m付近まで追い込んだらあとは垂直方向の探索に移る

どうやらこのあたりが、使い方のように思えます。実際の現場で不運にもビーコンを使うことになった場合は気が動転してとても冷静ではいられないで しょうが、この手順に従えばよいのでしょう。

山スキーを始めて15年近く経ちます。残雪期のスキー中心でルートは雪崩に対するリスクを考えた上で選んでいましたが、やはりバックカントリー、備えは必要でしょう。少し考えさせられた山行でした。


(戻る) (ホーム)