暑くてバテた雨飾山 

 長野県北安曇郡小谷村、新潟県糸魚川市、2018年7月15日 


布団菱を真上に荒菅沢を渡る。
雪渓の冷気が霧になり、冷たく
心地よい。沢水を遠慮なく頂いた

雨飾山1963m(長野県小谷村・新潟県糸魚川市)へ登ってきました。

自宅からの遠さ、交通の便の悪さからなかなか足が伸びなかった山ですが、5月に高妻山山頂から見た雨飾山の長い背中と、その端の尖ったピーク(深田久弥は日本百名山の中でこの双耳ピークを「猫の耳」と呼んだ)がとても美しく、その姿が頭に焼きつき、憧れ尽きずに登ることに。

8月14日 名古屋に出張のあったSさんは名古屋から松本経由で大糸線に入られ、大糸線・豊科駅で合流。雨飾山山麓の小谷温泉キャンプ場でテントを 設営。うだるような炎暑の昼間でしたが、海抜1200mのテント場は日も落ちるとすごしやすい。テントの前でランタン(LED)をつけて山の話・ 無駄話をしながらビールを飲むのは至福のひと時。さて明日はどんなものでしょう。

翌日15日 朝5時20分、テント撤収して出発。日の出前の樹林帯は心地よく、尾根に取り付いてからもさほど苦しくありません。標高を上げるとブナの 林が広がってきて、そこからはややトラバース気味に進み、どこからともなく沢音が聞こえてきます。50mほど緩く下ると荒菅沢です。6:40分。 目の前に広がった沢は渡渉点のすぐ上までまだ雪渓となっており、あたり一面天然クーラーの如く快適です。7月の半ばにして海抜1480m地点での 雪渓です。いかに積雪が豊富か想像がつきます。雪渓面を溶ける雪が水蒸気になり、低く霧が立て込めるその遥か上に、布団菱と呼ばれる雨飾山の山頂下の 巨大な岸壁が威圧的にたっています。崩れ落ちてくるのではないか、と威圧感を与える風景です。ここで15分間の休憩。

ここから山頂まで90分の標識がありますが、等高線の詰まった500mの壁を登って行くことになります。暫くは樹林帯ですが、じきに森林限界を抜 け出て獰猛な夏の日に無抵抗でさらされる道となりました。森林限界を出たあたりで傾斜はますます急になり、足場もゴロタの、登り辛いルートになり ます。梯子の混じる急登、汗が容赦なく流れくらくらしてきます。これを予見して2リットル持って上がったペットボトルもぐんぐん減っていきます。ガ マンの登りが続きます。

腕時計の高度表示を見ながら稜線の標高地点迄あと100m、あと50mと登って行くと、やっと空が広がり海抜1894m地点、稜線。8:23分。 あの、高妻山から見た美しかった長い背中に登りついた事になります。先行していたSさんは430を開局されていました。

ネマガリダケの原が広く奥に伸び、その果てに盛り上がり(深田久弥の言う)猫の耳が立っている、この風景は美しいものでした。トンボの飛び交う広 闊な原にはハクサンフウロやイワギキョウ、アザミなどが咲き、さながら山上の楽園とはこのことを言うのでしょう。陽射しはなるほど強烈ですが吹き 抜ける風は心地よい。

これまでの登りで体力を使い果たした感がありますが、最後の猫の耳への登りは思っていたほどもなく、9:05分、ついに山頂(海抜1963m)に立つことが出来まし た。左右のピークは30m程度しか離れておらず、石仏の並ぶ越後側ピークで無線は50メガをを開局。今日は新規調達した西無線のNTS-620のデビュー戦です。電源を入れるとノイズレベルは高いですがバズ音はありません。バンドをスキャンするといきなり59レベルで飛び込んできたのは網走市の局。あ、Esが開 いている。これではダメだ、と茅野市の縞枯山から出ていた移動局を呼ぶのみとします。新規調達したNTS-620 にとってはしょっぱいデビュー戦となりました。山頂展望は申し分なく、北の眼下には糸魚川の市街地、ぐるりと時計回りに海谷山塊の岩峰群、焼山と火打、高妻山、戸隠、そして更に回ると槍ケ岳から栂海新道までの北アルプスの稜線。

Sさんは2mFMでパイルに包まれており、秋田や蔵王の局とも交信できたようです。そんな中、仲間のTさん(JK1NRL)が北ア・蝶ガ岳、そし てヤマランのSさん(7K1CVP)が蓼科の前掛山とも交信され、私もコンタクトをとることが出来ました。各局、遠出されているようです。

下山は、ますます日が高くなったためか、きついものでした。玉の汗が流れ、頭はボーっとしてきます。軽い熱中症にかかっていたのでしょう、荒菅沢出合まで降りてきたときには半ばモーローとしており、冷たい沢水を立て続けに呑み、頭に水をかけ、人心地つきました。

まだまだ辛い熱中症の下りを続け、キャンプ場に戻ったときにはこれまたボロボロ。首にかけていたタオルが一日の汗でずっしり重い。今日の行程自身 は標高差は800m程度なのですが、樹林帯を出てからは容赦ない炎天、(稜線以外は)サウナのような中をひたすら歩くのみ、さすがに消耗しまし た。行動食を随所で補給し、塩分飴、水分もしっかり取ったのですが標高が中途半端に低いこともあり、暑さも半端なく、これまでにない辛い山となり ました。

小谷温泉・雨飾荘で入浴しさっぱりし(@700円)、帰路、白馬のコンビニで大量のペットボトルを買い込みガンガン水分を取りながら横浜に戻りま す。面白いようにペットボトルが軽くなります。冷たいものへの希求は止まず、信州は蕎麦だろう、と途中の道の駅(ぽかぽかランド美麻)で打ち立て の蕎麦を食べ、ようやくひと心地。(ここの蕎麦はとても美味でした)

軽い渋滞の続く長野道・関越経由で横浜到着は23時を回り、やはり、雨飾山は遠いな、と言う実感が湧きました。

森林限界を超え笹平の稜線に登るまで
暑くて苦しい登りが続いた
笹平は広闊な風景で胸のすく想い。
トンボが飛び交っていた
深田久弥が猫の耳と詠んだ山頂の双耳峰は
思ったよりお互いの距離は近かった

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