玉原高原・尼ケ禿山でネイチャースキー 

 (2014年4月19日 群馬県沼田市)


一昨年の4月に玉原スキー場トップからシールで登った鹿俣山から見た尼ケ禿山はやや小粒ながら滑りが楽しそうな山という印象であった。このあたりブナ林を縫っての快適なネィチャースキーゾーン。ブナの中を滑るのはとりわけ楽しい。ただし尼ケ禿山は鹿俣山より標高が200m低く1466m。一昨年の遠望では積雪がやや少なそうであったが今年は豪雪だったので充分だろう、そう判断してSさん(JI1TLL局)とともに目指すことにした。

今回は出張帰国後の時差ぼけもあり長距離ドライブを避けたく、Sさんには無理を言ってしまったが高崎駅まで鉄道、そこからレンタカーと言う行程としてもらう。玉原スキー場の駐車場はパスして玉原湖のほとりに続く除雪路を進む。これから登る尼ケ禿山が前方玉原湖の置くに鎮座している。と冬季閉鎖のレストハウスが現れてその前の駐車場で車止めとなった。そこにはスノーシューでブナ林トレッキングとおぼしき二人組みと、ややあって尼ケ禿山を目指すと言う50歳代とおもしき夫婦の一台のみ。この車からは細板が出てきた。これで登るのだろうか。

今日の装備は自分はフィッシャーの140cm板に3ピンテレマーク締め具。この短い板専用に新調したG3のシール。靴はこれまで使っていたテレマークブーツもよく足に馴染んだのだがなにせもう10年近く使っていたので不意の加水分解が恐ろしい。ということでこれまた増税前に背中を押されて新調したスカルパのテレマークブーツ。とおニューが多い。一方のSさんもなんとスコットの山スキーブーツを新調していた。Sさんのブーツはもう20年近い前のモノだったので増税前にこれまた購入したらしい。

車止めからしばらく除雪路を進む。やや下って湖のほとりに出る。海抜1170m。ここが今回のルートで一番低い。この先で山越えの車道の除雪は終了しておりそのまま除雪は右手前方の東大ヒュッテまで続いていた。地形図を広げ、このヒュッテから尼ケ禿山へほぼ真西に延びる尾根を進むのが良いだろうと目当てをつけて、シールをここで装着。コンパスをあわせてヒュッテの裏側の小広いブナの林にスキーを進めた。

ゆっくりとした登りが続く。時差ぼけの取れないカラダにはこんな登りでも辛い。頭の芯が痺れた感覚でぐるぐる回る気がするが、それにしてもブナの林は心地よい。幹の根元の穴を覗く。積雪40-50cm程度だろう。登り続けて海抜1300mあたり。一体は更に広くなりブナの山に来たという満ち足りた思いがわいてくる。ブナの木はその縞模様を見ていると不思議と気持ちが落ち着くのだ。もっともブナの森は熊の棲家でもある。余り遭遇はしたくない。

更に登る。新調したG3のシールもよく雪を噛む。ちょとした下りはこれまでのポモカのシールより滑りがよく思ったより使い勝手の良いシールだ。新調したブーツも足に馴染み問題ない。地形図によるとこの先に送電線鉄塔が立っているはずだが、と目で追うと先行するSさんから「鉄塔ですよ」との声。地形図どおりだ。やや急になった尾根を更に登っていく。Sさんの登りのルート取りは巧みに急登を避けてうまく木々をスラロームしていく。なるほどすごい。やがて玉原越えの車道のトンネルから延びてきた顕著な尾根と合流した。ここに分岐を示す道標が立っている。ここで進行方向はほぼ90度曲がり南下しながら一気に高度を稼ぎ出した。右手に見える雪の谷間がおもったよりも深く、進みすぎぬように注意深くルートを取っていくと見上げる山頂はすぐそこだ。ただし山頂直下100m近くが一気に突き上げる急登だ。シール直登は出来ずに雷光型に登っていく。

登りきるとそこは雪庇の崩れた山頂だった。眼下の玉原湖から上州武尊から赤城山への大展望が待っていた。山頂標識だけ雪が溶けておりその先は急なガレで一気に落ち込んでいる。430MHzでCQを出すと最初は空振りだったがやがて呼ばれ始めた。地元前橋から遠くは都内江戸川区までと交信できる。と物音がしてスキーをはいた登山者が一人登ってきた。先ほどの湖畔の夫婦者だ。ややあって奥さんも登ってきた。二人ともウロコの細板で驚いたことにシールを貼っていない。しかも締め具はテレマークではなくサロモンのクロカン用だ。これだけで何とか登れると言うことだった。非常に軽快な装備で山スキーを楽しむスタイルに驚いた。

天気は良かったのだが風が冷たくなってきた。5月が近いというものの今日は寒気が入っているのか、上州おろしともいえる強風に身が縮む。長居は無用とシールを剥がし、さぁ下山だ。直下の急な下りは注意してゆっくりと滑る。幸いに雪はもう春のザラメでスキーは良く言うことを聞いてくれる。急坂をおりるとあとは快適なブナの林、ゆったりと流すと送電線台地まではあっけない。海抜1380mあたりで尾根の分岐。直進する尾根とは別に顕著な尾根が南東に伸びており一瞬迷うが先行するSさんは迷わずそのまま真東へ進む。とすぐに登り始めた東大ヒュッテが先に見えた。車道歩きを嫌ってヒュッテの裏から更にブナの林を滑り湖面までスキーで下りきって今日の山を終えることにした。

帰りに大きな天狗面で有名な迦葉山の弥勒寺に立ち寄る。更に沼田の市外まで下りて日帰り湯に入ってから高崎までの運転。相変わらず時差ぼけの影響か眠くて仕方ない。高崎からはのんびり帰りましょう、とグリーン券を買って在来線へ。ビール片手に2時間半ゆっくりと揺られて帰浜した。山自身は小さかったがそれなりに楽しめたブナ林のネイチャースキーであった。

(雪庇の尼ケ禿山山頂から玉原湖と武尊山方面) (山頂直下、ブナ疎林の急坂を慎重に滑って下る) (ルート図。GPSデータをカシミール3Dにて付属地形図へ転送)

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