遠かった釜無山へのスキー行 

 (2013年2月10日、長野県諏訪郡富士見町)


2月の3連休、天気予報を睨んで一番天気が落ち着いていた日曜日に、山と無線仲間のSさん(JI1TLL局)と長野県富士見町は入笠山系の釜無山を目指しました。富士見パノラマスキー場のトップまでは朝一番 のゴンドラで上がり、そこからはウロコ板テレマークで林道を南下、釜無山へ、という計画です。

9:20、富士見ゴンドラスキー場から入笠山へは一旦下り入笠湿原をカットします。ほとんどが歩きのルートなので自分はいつものプラのテレマーク シューズではなく革靴をチョイスします。フィッシャーのウロコ板はいつものもので、ライトツーリングセットです。Sさんも革靴に細身のフィッ シャーのテレマークウロコ板。足元が軽い。

スノーシューが多く入山しておりマナスル山荘までの道はぼこぼこのトレースが続きます。10:10、入笠山を目指すスノーシューのトレースと別れ そのまま緩いの登りの林道を南へ向かいます。スノーシューはそこそここちらにも入っているようでトレースは相変わらずぼこぼこ。しかし雪は適度に 締まってウロコ板が雪面をよく捕らえて快調に進みます。林道は入笠山の東斜面をトラバースするように進みます。眼下に富士見町とその向こうに八ケ 岳の大パノラマ。緩い登りがしばらく続き、僅かに下り大河原湿原へ、11:00。下山予定ルートである富士見町・沢入から上がってくる林道と合流 します。ペースとしては悪くありません。スノーシューのトレースはここまでで、代わりにここから先は沢入の林道から上がってきたスノーモービルの 真新しいトレースが一条、釜無山方面に向かって伸びています。どうやらラッセルは避けられそうだ、と胸をなでおろし更に南下します。

ここから先は長い。程久保山の取り付き点まで標高差100mをじわじわ林道は稼いで行きます。と向こうから爆音が聞こえスノーモービルが2台戻っ てきました。肩から猟銃をかけた二人。荷台には血まみれの鹿の角。猟師のようです。鹿の解体はどこでやったのだろう。いずれにせよ彼らのお陰でこれまで楽が出来たようです。

程久保山を巻き終えた時点で12時前。釜無の登山口までは未だ少しあります。ここまでひたすら、手足を規則的に動かし、機械の様にスキーで登って きたのみです。ふーっとSさんと顔を見合わせます。絶好の天気で陽射しも暖かい。2月とは思えません。 当初の予定では釜無山13時発を予定し ていましたがさてどんなものか。12:15、釜無山登山口の看板が雪に埋もれています。さぁここから山頂まで直線距離で2km、標高差160mと いったところでしょうか。ところが肝心のスノーモービルのトレースははここから東面へ、林道を忠実に辿って伸びてきます。ピークを目指す我々はこ こから顕著な2003mピークに登り稜線を辿り2116mの山頂を目指すことになります。トレースにはもう頼れません。すこしラッセルしてみます が膝までもぐるパックされた重い雪で先が思いやられます。なによりの肝心の釜無のピークが未だ見えない。ずっと遠いのです。

ため息をついてSさんと顔を見合わせます。正直ここまでやや消耗しています。ここから先、この雪の調子で山頂まで1時間で行けるだろうか。それ にこの硬い雪面をモナカ革靴テレマークで滑るのも難しそうです。二人とも、ここで戻ろう、と意見は一致。

来たトレースを辿り北上します。緩い下りの林道はパスカングでウロコ板の機動性が冴えます。それでも程久保山のピークは踏もう、と肩でシール装 着。ラッセルで山頂を目指します。ズブリともぐる雪に、なによりもシールをつけたスキーが重い。スキーってこんなに重かったっけ?息があがりま す。Sさんの先行トレースを利用させてもらいます。ありがとうございます。ようやく登り付いた程久保山山頂。山麓の北杜市は小淵沢に住む山と無線の友人、YSさん(7L1UGC局)を 430でコール。予定では今晩は下山後に立ち寄り夕食をご馳走になる予定です。予定通りです、と連絡。これで山ランポイントも稼げたので出発です。シールを剥がしここから北斜面を林道まで下ります。ウィンドパックされた斜面。足元のおぼつかない革靴ではとても 滑る自信がありません。慎重にプルークで制動をかけながら下ります。山スキーでは華麗な回転は不要、泥っぽいテクニックで下りれば良いですよ、と Sさん。

林道に降りつき大河原湿原まで戻ります。14:15、大河原湿原。低温と強風でガスストーブがほとんど機能しません。生煮えのカップ麺の昼食を終えて、14:45、さぁあとは沢入りまで林道を下っていくのみです。ようやく安心圏にもどってきたとほっとしますが、この林道、緩い下り坂でスキーの滑りはいまひとつ。

パスカングで加速して片足をスノーモービルのトレースに乗せもう一方の足でプルーク制動かけながら下りると早い。スピードが出すぎると片足をその まま新雪に入れると自動的に制動がかかります。その程度の緩い斜面。しかし東斜面下りていく林道なので思ったより早く周りが暗くなってきます。ひ たすら下りていくのみ。嫌になる頃ようやくゲートがあり駐車場がありました。16:08、入笠山登山の車が4,5台停まっています。ここが沢入で す。しかしここは未だ標高1460mとおもったよりもまだ標高が高い。ここから先はもうスキーがつかえません。えー、ここから車を停めたスキー場 まで歩きかよ。標高差はまだ500m近い。事前調査不足かもしれませんがこれは予測していなかった。しかし行くしかありません。スキーをデポして ここからは意を決して林道歩き。

ここからが本当に長かった。時折凍った急斜面の林道をたんたんと下り、日暮れと追いかけっこでただ歩く。凍結に足をとられてずるっと転倒。肩を痛 打します。ヘッドランプが必要になるか、と焦ります。なんとか集落までおりついたころあたりは完全に闇に包まれました。スキー場についたのは漆黒 の18:00。着替えもそこそこに沢入まで車でとって返してスキー板を回収。パノラマスキー場のすぐ向かい側にある福祉施設、「ふれあいの湯」で汗を流してようやくほっとし ました。今日の行動は都合9時間。ほぼ歩きどおし、くたびれたを通り越し頭も体もずきずきします。

釜無山は遠い。これが二人の率直な感想です。ウロコ板テレマークの機動性をフルに使っての、決して遅いペースの山ではなかったのですが、とにかく山頂は手の遥か先でした。その姿すら拝めなかった。これは入笠のマナスル山荘に泊まるなど、一泊しないと難しいように思えます。結果的に狙った山頂に至ら なかったわけですが、とはいえ敗北感はなく、むしろ絶好のコンディションの中、とにかく山とスキーを満喫したと言う事でSさんの顔にも自分の中 にも満足感が溢れた山行でした。

帰路、予定を4時間以上遅れて小淵沢のYSさん邸に到着。YSさんと奥さん手作りの夕食をご馳走になります。歓談で楽しい2時間はあっと いう間、再会を約束して22:00YSさん邸を辞します。結局横浜に帰り着いたのは深夜1:00。とても長い、とても疲れた、それでいてとても満足し た、会心の一日でした。Sさん、ご苦労様でした。YSさん、ご馳走様でした。

(大河原湿原まではスノーシューのトレースが
多かった)
(常に八ケ岳を見ながらの山行だった) (釜無山登山口の看板までやってきた。
lこの先にトレースはなかった)
(程久保山の斜面に
シュプールを残した)

装備
スキー板 フィッシャーバウンドレスクラウン169cm+ロッテフェラースーパーテレマーク
靴 ガルモント ツア(革靴)

(戻る) (ホーム)