鎌倉の裏山・源氏山へ 

 (2013/11/16、神奈川県鎌倉市)


思い立って家内と鎌倉に出かけることにした。この前に鎌倉の町に行ったのはいつだろうか。パソコンの何処かに鎌倉に家族で行った写真が入っているはずだ。まだ二人の子供も小学生と幼稚園だったと記憶する。そんな子供も今やもういつしか成人式を迎える年頃なのだからそれはもう10年近く前の話なのだろう。若宮大通でたい焼きを食べたり、石像屋のアンパンマンの像に喜んだりと、そんな記憶がよみがえってくる。そんな子供達ももう自分の時間が大切で滅多なことで親と連れ立って歩くこともなくなってしまった。それにそもそも自分自身が休日には山だ、サイクリングだ、バンド活動だ、と好きなことばかりをしてあまり家族の事を顧みてもいないのだ。家内には悪いと思う。こんなことが少しだけ罪滅ぼしにはならぬだろうか。余り乗り気でもなさそうな家内と犬を車に乗せて鎌倉へ向かう。

朝比奈から下りていくと鎌倉の市内は昔と同じく大変に混雑していた。鶴岡八幡宮の手前で渋滞にスタックしたので適当なコインパーキングに車を置く。犬は残念ながら車の中でお留守番。のんびりと鎌倉の雑踏を歩く。小奇麗なみやげ物やカフェ、レストランなどがあるが、自分には余り興味がわかない。が家内が楽しそうだ。横須賀線を踏み切りで渡ると前方にこんもりと丘が見えるがあれが源氏山だろう。その手前から佐助稲荷、銭洗弁天を目指す。すぐに裏山になり簡素なトンネルを越えると佐助稲荷は近い。小さなカフェが点在する田舎道を歩く。このあたりの雰囲気はどことなく京都の裏山と言う感じもする。

幾重にも鳥居がトンネルのように重なる佐助稲荷。ここに来た記憶はない。小さな山の麓の可愛らしい神社。少し戻り山すそから手掘りのトンネルを抜けると銭洗弁天。そう、家内と結婚する前に鎌倉を散策しこの銭洗弁天に来たことを思い出した。もう25年以上前の話と言うことだ。当時の風景の記憶は全くないが、ザルに小銭をあけて池の水でそれを洗う、と言うのは確かに覚えていた。なんだか少しだけ昔にタイムスリップした気もする。

トンネルを抜けて車道を少し登るとそこは源氏山公園だった。山頂までのんびりと歩く。海抜93mの山頂。430MHzで一局交信。無事にヤマランポイントも稼ぐ。静かな山頂で周りは桜の木だ。これは春になるとさぞや素晴らしい眺めだろう。そういえばこの谷を挟んで反対側の六国見山にも家族でお花見に行ったこともある。それはもう15年以上前の話だ。山頂からの源氏山方面の桜の見事さ、春の鎌倉のよさを味わったことを思い出す。家内とこうして野山を二人で散策するのも随分久しぶりだ。いつしか子供達も親との行動を離れ、再び家内と二人だけの時間となってしまった。それはそれで流れと言うものだが、なんだかここまでが随分とあっという間だった気がする。25年なんてそう簡単に過ぎるときでもないのだけど、いつしか自分達も人生の後半に差し掛かってしまった。

源氏山を下りて再び横須賀線の踏切を越えるとまた鎌倉の雑踏に戻ってきた。かつて子供達と歩いた街をもう若くはない夫婦で歩く。まぁ、悪くない。車に戻り、犬を連れて再び街のほうに戻る。お洒落なベーカリーあり、そこの屋外のテーブルでティータイムとしゃれ込む。足元の犬が今は家内にとっては新しい子供であろう、しきりに話しかけては楽しんでいる。さてこれからあとどんな時間が自分達を待っているのだろう。次の25年もすぐに経るのだろうか。時の経つのはあっという間、まだ楽しめる時間がある、そう思うと嬉しいものだ。

日も暮れてきて、横浜に帰るとしよう。そう、家内はしっかりとお土産のおいしそうなパンを子供たちの為に選んでいる。11月も半ばになると日が落ちると急速に冷えてくる。少し背中を丸めて車に戻った。


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