白樺湖・八子ケ峰へショートスキーツアー 

 (2012年4月1日、長野県北佐久郡立科町)


(蓼科山を正面に望む稜線に出ると
キツネの足跡が残っていた)

ここの所週末はいつも悪天であったが春一番の嵐が去った好天の日曜日、Sさん(JI1TLL)と八子ケ峰を目指す。八子ケ峰のツアースキーについては白山書房刊の「山スキールート図集第2集」に詳しいがネットで検索しても最近の事例は余り出てこない。白山書房のガイドブックはなにせ2000年の刊行であるので現状はガイドともずいぶんと異なっていることだろう。このルートも今やあまり歩かれないのだろうか。

白樺湖ロイヤルヒルズスキー場まで車で入る。途中のスズラン峠あたりは路面も積雪と凍結でスタッドレス+4駆でないと不安を覚えるところだ。もう暦は4月だが今年は雪が多い。ロイヤルヒルズスキー場の上部ゲレンデ下の駐車場に車を止める。ガイドブックではここから稜線まではスキーゲレンデにはなっていないのだが見上げる稜線まではゲレンデが広がっている。もっともそのゲレンデはすでにリフトチェアも外されており休業のようだ。スキー場は下部ゲレンデ(白樺湖湖畔まで)までの営業のようだ。地形図によると稜線までは標高差120m。シュプールひとつない休業ゲレンデの端をシールを付けて二人して遠慮がちに上り始める。

登るにつれて対面の車山が大きくなった。この上部ゲレンデはクローズになってしばし時間がたつのだろうか、ゲレンデにはシュカブラが現れ、ところによりパウダー、アイスバーンと荒れている。シールが心地よく利いて思ったより早くゲレンデ上端まで登ってきた。地図を確認して主稜線の方向へ、そのまま灌木が雪面からかを出したまばらなブッシュ帯に足を進めていく。ブッシュ帯を過ぎるとカラマツの幼木が生えた稜線で、これを東に向けて進んでいく事になる。稜線は一部細くなっているがスキーで通過するのには問題がない。細みを抜けるとカラマツ林で前方に蓼科山が大きい。このルートを歩いた人は確かに余りいないのだろうか、ツボ足もスキーのトレースも見当たらない。前方の蓼科山に向かって点々とキツネの足跡が残っているだけだ。緩やかなアップダウンの続く稜線を気持ちよく進んでいく。いくつかの上下をこなすと前方上部ににゲレンデのコースとその右側に少し尖ったピークが見えた。あのピークが目指す八子ケ峰(1833m)だろう。ピークはゲレンデのコースの真南に隣接しているのだがガイドブックにはその旨の記載がなかったからやはりゲレンデができたのは最近の話なのだろうか。

スキー場のリフト小屋が見えてきたあたりで向こうからスノーシューの4人組が現れた。挨拶を交わす。これからロイヤルヒルズスキー場まで歩くとの事で、ここまでトレースを付けておいたと話すと安心した様子だ。リフト小屋を過ぎるとそこはゲレンデの中だ。ここからピークまでは標高差80m程度か。カラフルなボーダーやスキーヤーが滑走する20m幅程度のコースの端を、今度こそ遠慮がちに上り始める。斜面がきついのでクライムサポートを立てると歩きやすい。シールがよく利いて問題ない。ゲレンデ上部まで登りつくとそのまま右手にブッシュを強引に突破してピークを目指す。一足先に上っていたSさんが「山頂です」と声を出したようだがその声が風に飛ばされてよく届かない。灌木を手で払うととたんに風が強い。山頂だ。すごい風だが大展望が目の下に広がっており思わず息をのんだ。

素晴らしパノラマだ。眼下に遮るものが何もない。左手の蓼科山は今は大迫力で至近距離に立っているが目の前の広大な裾野は果てが見えない。肝心の八子ケ峰の山頂標識は足元にあった。二人で記念写真を撮ろうとするが風が強くて難儀する。ガイドブックではまだこの先さらに東へ主稜線をたどりスズラン峠の上から蓼科温泉に向けてダウンヒルする、と書かれているが、自分たちは車をロイヤルヒルズスキー場に置いてあるのでそうはいかない。また往路の車で見た限りは蓼科温泉はすでに雪もなく、ガイドブック通りのダウンヒルも無理であろう。八子ケ峰のピークも無事に踏めたのでもうこれ以上はよかろう、と復路に戻ることにする。

山頂から少し下がったゲレンデの端でシールをはがす。収納のチトシートが風に暴れてシールを貼り付けるのに苦労する。滑走面に固形ワックスを塗る手がかじかんできた。Sさんが430ハンディ機を取り出してワッチすると湯の丸山からのCQが聞こえてきた。向こうもシール登高とのことであるが猛烈な風に吹かれているようで堪らない様子が伝わってきた。何年か前に自分も湯の丸山までシールを履いて上ったことを思い出す。確かに山頂は何も遮るものがなく風が出たらきついだろう。

シールをはがすと先ほど登ってきたゲレンデを数百メートルほど滑ることになる。ゲレンデを滑るのは久々で緊張するがなんとかテレマークターンのコツは忘れていなかったようで下手糞ながら回ることができた。降りきって振り返るとテレマーカーが一人優雅に滑ってきた。お互いに目線であいさつする。テレマーカー同士は相通じるものがあるのだ。今回人から譲ってもらったというジルブレッタを着けた140pのショートスキーを履くSさんは「やっぱり板が短いからキョロキョロするなー」と少し勝手が違う様子。

ゲレンデを抜けて再びオフピステ。カラマツ林に戻り風もない場所で昼食とする。このコースは確かに短くて本格的な山スキーには程遠いルートではあるが、途中のカラマツ林のトレッキングの雰囲気など素晴らしいね、と話す。問題があるとすればコースがゲレンデに始まり山頂直下も再びゲレンデになる点であるが、それに目をつぶればアップダウンも適度にあり半日程度のルートとしては好ルートではないだろうか。

戻りは緩やかなアップダウンをウロコ板の機動力で心地よく歩いていく。カラマツ林の疎林の中は何処にルートをとっても良い、素晴らしいルートだ。「これがブナ林だったらもっと良いんだけど」とSさん。これは贅沢な悩みだっただろうか。、最後に休業ゲレンデに大きなシュプールを描いてツアー終了。ロイヤルヒルズスキー場の下部ゲレンデで一本だけ滑ってから帰路につく。途中で蓼科温泉・親湯のひなびた共同湯で汗を流したが熱くていい湯だった。

(休業ゲレンデのトップから稜線に
取り付く)
(稜線は広くカラマツ林の中に
自由にルートを取る事が出来る)
(ゲレンデ脇の八子ケ峰山頂遠望。
(ゲレンデ右のブッシュのピーク))
(休業ゲレンデにシュプールを描いた)

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