とんでもなかった忘年山行 - 日の出山 

(2004/12/30、東京都西多摩郡日の出町)


2004年最後の山は、例年ならばJK1RGA・河野さん、JL1BWG・飯田さんとともに奥多摩の避難小屋で過ごすのが通例となっていたが、今年はタイミングがあわずに日帰りの山となった。

河野さんは年末に少し体調を崩されたという、そんなこともあり、簡単ながら満足の得られそうな山、そして未踏であることを条件に絞込み、大菩薩北部の黒川・鶏冠山を選んだ。ここであれば青梅街道の柳沢峠からの標高差は少ない。しかも下山後には大菩薩の湯があり、汗も流せそうだ。山と湯。よい忘年山行となろう。出発数日前には関東地方にも雪が降り、雪山気分も味わえそうだった。

ところが、出発の早朝、こともあろうに、まさに玄関を出るときにおおきなくしゃみをしたそのとたん、腰に激痛が走ってしまった。あぁやった!やってしまった。もともと自分は腰は弱く何かあるとすぐに腰痛となるのだが、この痛みの具合はすぐに治まるものではないことは今までの経験で分かっていた。

どうしよう、でも心はすでに山に向かっている。山の魅力を絶つことが出来ない。離陸寸前の飛行機を止めるのは不可能に近い。それに自分は車を出すので、行かないと計画崩れになってしまう。とにかく、やや遅れて家を出た。腰に湿布、痛み止めを飲んでの、山行だ。腰痛コルセットもザックに入れた。

河野さんと合流、そして相模原で飯田さんとも合流。腰は運転席に座っている分には良いがちょっと立って歩くことすら出来なかった。これは、とても黒川鶏冠など無理だ。もっとも無理であろう事は出発時に分かっていたが・・。やはりこうなってしまった。

お二人は、もっと簡単な山で良いよ、と言ってくださる。行かなくても良いよ、とも言われるが、それでは申し訳が立たない。高尾山ケーブル?御岳山ケーブル?と河野さん。御岳山のお隣の日の出山は無線未運用だ。お言葉に甘えて、行き先を変えていただいた。

* * * *

(杉の登山道では風に雪の粉が舞って
綺麗だった。Photo by JL1BWG
(御岳ケーブル駅から見る日の出山。
雪がつくと「馬子にも衣装」となる。)
(日の出山から金毘羅
尾根・麻生山展望)
(今回のルート。カシミール
3D使用。by JL1BWG)

御岳山ケーブル駅は数日前の雪が残っていた。登りついた山頂駅はたっぷりと雪が残っている。極力不要なものは車に残してきたので軽くなったザックだが、こんなものでも腰にこたえる。まっすぐ立つ事が出来ないのでまさにくの字になる。前後にくの字ではなく左右にくの字だ。曲がってるネェー とお二人。

御岳の山上集落は明日の大晦日に向けて除雪や初詣準備が随所で行われている。御岳神社詣で大晦日から元旦にかけてオールナイトでケーブルカーも動くという。夜中は氷点下になろう。迷路のように複雑な集落の細道を抜けて日の出山への道に入った。生まれて一年も経たない娘を背負ってこの道を歩いたのはもう10年前の話だ。その娘ももう小学校6年になろうとしている。年月の経過がとても早い。

登山道というよりは車道ともいえる幅の大きな道だ。雪は数センチで、軽い雪を蹴散らしながら歩くのは楽しい。杉木立の中、風が吹くと葉についた雪片が一斉に飛び散りダイアモンドダストのようだ。飯田さんと自分は何とかその輝くきらめきをカメラに収めようとするがなかなかタイミングが合わない。心のフィルムに記録しておくのが一番だ。腰はここまでなんとか持ちこたえている。痛み止めが効いたようだ。

山頂直下の登り坂。立派な東雲山荘を越えて真っ青な冬の空の待つ日の出山山頂だ。抜群の展望で筑波山から新宿副都心、横浜ランドマークタワー、そして江ノ島までが一望できる。山頂はもちろんの事周囲の山はぐるりと雪化粧をしており、わずか902mの低山ながら役者が一枚上がっている。雪の威力は大きい。

アマチュア無線・50MHzの運用は簡単にミズホのピコ6とロッドアンテナダイポールとした。こんな設備でもこのロケーションからは問題なく、途切れることなく交信が続く。飯田さんの1200MHz、河野さんの430MHzも好調なようで、年末の運用とするには相応しかった。

下山にかかろう。といっても元来た道を水平移動で戻るだけだ。ザックを担ぐが腰がたまらなく痛い。ずーっと同じ姿勢だったせいか、とても3分と歩けたものではない。立っているだけで辛いのは初めての経験だ。河野さんがザックを担いでくれると言われる。ためらったが限界がある。お言葉に甘え、空身となって、腰をくの字に曲げたまま伸縮ポールにすがって歩いた。

腰の湯治に、と期待していたあきる野市のつるつる温泉は年末休業との事、公営だとそんなものかもしれない。運転まで河野さんにお願いして、苦悶の表情で御岳をあとにした。

* * * *

楽しみにしていた年末山行はこんな事もあってまったく話にならなかった。山に行かなければよかったかもしれないがその気になった自分をコントロールするのは難しい。不注意とはいえ、くしゃみごときで行動不能になるとは思ってもいなかった。行き先を変更し大幅に縮小した山にも文句を言わず付き合っていただいたお二人には申し訳ない。またどこかへ雪辱戦にでも出かけましょう・・。

肝心の腰のほうは、大晦日から正月三が日は、全く歩く事ができなかった。ごろ寝と正月番組、正月料理に、腹の肉が又ひと回り増えてしまった事が実感できた。さえない新年だ。以来くしゃみをするときは、鼻をつまんでくしゃみをとめる、かなわぬときは腰を引いて背骨に負担がかからない姿勢で一発、を励行している。くしゃみ以外にも腰痛の引き金はあるのだが、ともあれ地雷を踏まずに付き合っていくしかないのだろう。

(御岳の山上集落には音楽を流す軽ワンボックスによる移動マーケット
が回っていた。明日は大晦日。そして明後日は元旦。魚からお菓子まで。
山の上には生活の匂いがあった。) photo Ricoh CaplioGX Program AE
(日の出山山頂にて。5cm程度の
積雪の山頂には素晴らしい展望
が待っていた。)

アマチュア無線運用の記録

日の出山 902m 東京都西多摩郡日の出町 50MHzSSB運用 14局交信 Mizuho MX-6S(1W) + ロッドアンテナダイポール


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