雨上がりの三浦を歩く 

(2003/6/1、神奈川県横須賀市)


(暗い林から明るい展望所
へ。明暗に一瞬目が眩んだ。
あそこに立てば、海が見える
だろう・・)

五月連休に南アルプス・鳳凰に登って以来約1ヶ月、山にはまったく無縁な日々だった。出張や仕事の多忙などもありとてもそんな気にならなかったがさすがに1ヶ月も絶っていると何処かへ行きたいという思いがわく。台風が本土を通過したこの週末だったが日曜日の昼前には横浜では雨が去り陽射しも見られるようになった。午後からでも充分歩ける三浦半島の丘陵ハイキングへ家族と供に出かける。

京浜急行の津久井浜駅の横から細道を上がり点在する観光農園の駐車場に車を置かせてもらう。ここは今年の正月に三浦富士に登りアマチュア無線のニューイヤーパーティに参加するために地元の無線仲間の7K3EUT局(塩田氏)とともに来たばかりなので記憶は新しい。もっとも今回は三浦富士ではなく武山に登るのが目的だ。

ゆっくりと舗装路を登り「武山ハイキングコース」を示す指導標があり細い道に踏み込んだ。すぐに山道となる。雨が上がったばかりの林の中は湿気が多く滑りやすい地面と相まってお世辞にも快適とはいえない。雨上がりの草木の放つ生臭さもただよってくる。これを知ってはいたが、1ヶ月間も山に来ないことによる心身のいらつきを解消するほうが大切であった。それに、まぁこれはこれの良さがあるだろう。

子供たちは元気に先へ登っていってしまったので家内と二人でゆっくりと滑りやすい木の階段を登っていく。若い若いと思っていた自分たちだがいつしかすっかり中年の真っ只中にきてしまった。さもない上り坂に息の上がるお互いを見ながらそう考える。

階段道を登りきって平坦になってしばらく単調に進むと武山の山頂は近い。さすがに山が小さいのであっというまで頂上に出る。コンクリートの展望台に電波中継等、それに下から車道が上がってきており神社もあるので、森閑としていたここまでの山道からの対比がひどく現実離れしているように感じた。

展望台からは大都会・横浜を北方に望む。アマチュア無線を一応運用しよう。50MHzはEスポが空いているだろうことや、短時間で済まそうと思っていたので最初から持ってくるのを諦めていた。1200MHzでCQを出すが誰にも呼ばれない。仕方なく家内とQSOして閉局する。

今回の軌跡。ハンディGPSの
データをカシミール3Dにダウン
ロードしたもの)

戻って三浦富士へ南下する尾根道を辿り始める。赤い果実の粒が道すがら落ちており、チェリーの一種ではないか、と妻は言う。野苺もそれに混じる。自分はよく山に来るがそこで見る花や草木にはあまり関心が無く歩きすぎてしまうが、家内は結構良く観察しており、山歩きは好きではないと言っているが結構向いているのではないか、などとも思ってしまう。

滑りやすい黒土の尾根道は雨上がりなので注意が必要だ。途中の砲台山には林道が下から登ってきている。電波中継塔の山なので割愛しそのまま進む。しばらくはこの林道を歩くが、じきに北側へその道は下りていってしまう。そのターンする個所から再び山道となり忠実に尾根を辿る。薄暗い林の中で、緩く登ると数メートル上から明かりが漏れてきた。あそこにたてば、きっと海が見えるだろう。そう思い駆け上がって見ると果たして相模湾が大きく広がっている。海の見える丘陵歩き・・こういうのも悪くない。

一箇所尾根上のピークを北側にやや下りて巻くように進むと今日最後のピーク、三浦富士だ。アマチュア無線局が一局ここで移動運用をしている。挨拶してザックをおろす。ここから先は5ヶ月前に歩いているのでもう未知ではない。

写真をとっていると雨がぱらついてきた。まだ大気は不安定なのだろう。

じっとしていると薮蚊が寄ってきたので、下山開始。すぐに警察犬訓練所の横に出てあとはのんびりとかぼちゃ畑の中を家族四人で歩いて車に戻った。

午後から歩き始めた小さな丘陵歩き。仕事に終われ、家事に追われる自分たちの、ちょっとした気分転換になったのではないだろうか・・。ウィンドサーファーのたむろする国道に出る。若い人もいれば自分と変わらぬ年齢の人もいる。みんな、それなりに頑張って、楽しんでいるんだよな・・。空を覆う雲はまだ時折濃く動いている。雨上がりの三浦を歩いた午後。心地よい気持ちを体で感じながらハンドルを横浜に向けた。


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