笊ケ岳

(2002/8/10,11、静岡県静岡市、山梨県南巨摩郡早川町)


(上倉沢源流部から望む笊ケ岳。
原生林の果てに風格があった。)
 
Ricoh GR1, F11AE,ASA100

コースの長さに不安があるわけではなかった。マイペースでも歩く自信はあった。コースの高低差に不安があるわけでも決して無かった。それなり時間をかければ登れるだろうと思っていた。ルートファインディングも事前に調べたところではコースはそれなりに整備しているという。では大丈夫だろう・・・。

決定的な不安要素は特に無いというのにどうも気が重かった。この漠然とした不安、気の重さは、やはり大きな山に一人で入っていく、という事から来ているのは明白だった。不安要素を一つ一つ辿っていけば、上手くほぐれていく。でも、結局は絡まりあった要素はほどけることなく不安は漠然と膨らむばかりだった。

何年か南アルプスの南部に通うと当然のごとく気になる山が出てくる。笊ケ岳だ。聖岳の山頂から深い大井川の谷の向こうに見た立派なその姿が忘れられない。山伏の山頂から望んだ雪を被った雄壮な双耳峰は今でも頭に鮮明に残っている。農鳥岳から南下する白根南嶺尾根は南アルプスの中では一般的ではなく訪れる人も無く静かな山域として知られている。笊ケ岳はそんな静寂の山脈の中に一人大きな存在を示すピークだった。

笊ケ岳へは山梨県側の山麓・雨畑から布引山経由で登るのが一般的な様であるが標高差2200m以上もあるそのコースは自分にはとても無理だろう。そんな事から自分には縁の遠い山でもあった。遠くから見る単なる憧れの峰に過ぎなかった。が、聖岳から茶臼岳を歩いた昨夏、その素晴らしい姿を前についに決めた。来年こそは笊ケ岳に登ろうと。簡単なコースはないのだろうか・・。山梨県側からではなく静岡県は椹島から入るコースがあるのは前から知っていたがインターネットなどで情報を検索してもそのコースについての余り詳しい記録はヒットしなかった。ガイドブックも決して多くなかった。ただ標高差は少なく1600m程度だ。自分に可能そうなコースはこれしかないように思える。途中で一泊してなんとかこなせないだろうか?東海フォレストに事前に聞いてみるとそれなりに整備をしている道だという・・・。よし、よくわからないけどこれにトライするしかないのだろう・・・。駄目だったら戻れば良いや、と自分をリラックスさせてみた。

* * * *

椹島へは2年連続の通いとなった。今年は畑薙ダムのかなり手前に大きな駐車場が設けられており東海フォレストの送迎バスはここまで来るようになっていた。昨年のバスと同じ運転手氏の運転するマイクロバスに乗る。ここまで来ると「もうなるようになれ」と山行への漠然とした不安は消え変に落ち着いた気持ちとなる。1時間はたっぷり揺られると椹島に着いて、満員の乗客も皆三々五々赤石岳や千枚岳へと散っていく。こちらも椹島ロッジで缶ビール一本を仕入れてからゆっくりと歩き始める。林道を少し北上し千枚岳の入山口をやり過ごす。ここから千枚岳・悪沢岳へと入山したのはもう4年前の事で、一瞬遠くの青空のもとにそれらしい山々を仰いだ。

鉄橋を越えた右手に入山口があった。注意書きがあり「椹島-笊ケ岳へのコースは難易度が高く滑落危険箇所の多い上級者向けコース、要注意」とある。一瞬、後悔したがもうサイは投げられている。びびる気持ちを踏み押さえるように薄暗い樹林帯へと導かれた。

いきなりの急登で沢音が一気に遠ざかる。登山道の様子は思ったより悪くない。もっともまだ始まったばかりだ。25分で傾斜が緩むと視界が開け送電線鉄塔の立つ広場に飛び出た。とここで突然ひと気を感じると思案顔の男性が立っていた。挨拶もそこそこに登るのか下りるのかを聞いてしまった。登るという。ス-ッと、気が楽になった。このコースを、独りではなかった・・・・!。聞けばその男性は転付峠経由で笊ケ岳を目指していたが東海フォレストのバスが百軒小屋まで行かずに転付峠まで行く事も出来ず、仕方なく詳細の分からぬままこのコースに足を入れたという。コースの概要を告げると彼も安心した様子だった。自分の本日の幕営予定地を告げ、先行した。

特徴的な地形の1372m峰は送電線から15分で、これを越えると一気に急登に突入した。地形図ではこのまま500mは休みなしの一本調子で標高を稼がなくてはいけない。重厚な林の中をひた登る。辛いが吹く風が涼やかで足が思ったよりも伸びる。インターネットで検索した数例の登山記録では、このあたりに熊の捕獲檻があった、とか、実際に熊を見た、と言ったものがあったが、それらしい檻はない。もっとも不安から口笛や物音をわざと大きく立ててみる。ザックに着けた熊よけの鈴の音が随分と小さい音に感じてしまう。

変わることのない登りを前にため息が出る。ザックを下ろし、休憩する。シャリバテに襲われやすい体力勝負のコースでは食事を分割して摂るのが良いように思う。コンビニお握りを一つ食べる。見上げると倒れ掛かるような樹林帯で、南アルプスここにありといった気がしてくる。重層的な緑の屋根に包み込まれてふっと一瞬気分が遠ざかったような気がした。くだんの彼が登りついたのを見て、再び腰を上げる。

まだまだ続く重厚な登り。コースは赤ペンキが5から10m位おきに出ており迷うのが難しいくらいで、ずっとこんな調子だとずいぶんありがたい。しばらく登ると道が徐々に右手にトラバースし始めた。地形図上の1857m峰を少し巻くのだろうか・・・。ぐるぐると右手へ回りこむように進んで行くと赤石岳を望む尾根の末端に上りついた。ここまで休憩を入れても送電線から1時間45分だから思ったより悪く無いペースだ。ここからは急登からは開放されるが今度は湿っぽい二重山稜のなかを進むようになる。シダ類のようなものが生え、転がる鹿の糞に山の深さが凝縮されてくる。先ほどの男性が後から来るはずだがその気配も無くなった。まったくひと気がない。

なにか物影に動物が潜んでいるような気がしてならない・・・負けてなるものか!意図して陽気に歩こうではないか!頻繁な赤ペンキを拾いながらじめっとした道を辿って行くと前方に何やら立っている。近ずくと真新しい指導標でそこには「←椹島2時間、→笊ケ岳4時間半」とある。
(重層的な樹林の上に夏空が広がっていた。)
Ricoh GR1 SPOT測光 ASA100
(尾根に登りつくと今度は湿っぽい二重山稜となった。)
Ricoh GR1 Program Auto ASA100

この調子ならこの先の整備状況にも悪くあるまい。ガイドブックによると丁度このあたりから生木割への踏跡が分岐する、とあったがそれらしいものもなく、じきに道は右手にトラバースし始めた。ここから今日のテント場までほぼ標高を変えぬまま長い長いトラバースの始まりである。ガイドブックでは急斜面で滑落に注意、とあった箇所がこれから連続するはずだ・・。

1本目の沢を渡る。先ほどの標識から15分。ロープの急登があり踏み跡はやや細くなる。とここで急に目の先に動く影を見る。なんだろう、人だ。大きく咳払いをして注意を促す。向こうも気づいたようで、すれ違う。「あっ、人に遭えた!」と言っている。今朝早く椹島を出て笊ケ岳を往復してきたという。気になるコース状況は悪く無いという。上倉沢のあたりで一人と遭ったという。お互いにエールを送りあって先に進む。

2本目の沢まで9分。これをこなし3本目の沢までは25分。ほぼ平坦だが微妙な上下もある。3本目の沢は結構大きく水量も豊富でごくごくと好きなだけ水を飲む。旨い。見上げるはるか上から流れてくる沢。急峻な斜面だ。足元に絡まるアザミがニッカソックスのうえからチクチクと痛い。ここから急登がしばらく続き、水を飲みすぎたせいもあるがへばって足が出ない。もうすでに1000mは登っているし、このへんが自分の限界点だろうか。

危なっかしい桟道も出るが注意して渡る。ロープの箇所なども出てくる。相変わらずの急斜面のトラバースではあるが樹林帯の中ということもあり恐怖感はあまりない。コースとて、良くは無いがこれだけ整備されていれば問題は無い。4本目の沢は25分で到着。ここで15分ほど休憩を取る。ビタミンやカルシウムが豊富だというシリアルを行動食用に調達してきたが、イチゴクリームなどもサンドされておりこれがなかなかいける。ついでの今日の幕営用の水をポリタンに満たすとザックが一段と重い。

15分で5本目の沢。これも水量は多い。再びここから沢に沿って登らされる。ヒーヒー言いながら登り平坦となると8分で6本目の沢でこれは伏流で水量はちょろちょろだ。文献によると沢は全部で6本渡るとの事なので、これでおわりだろう。尾根を小さく回りこむとしばらく進んで、6本目の沢から25分で大きく展望が開けた。目の前に笊ケ岳がいきなり飛び込んできた。あれが、そうか・・。深々と生い茂る原生林の果てに三角形のピークが堂々と立っていた。憧れの、あのピークの元に、ついにお膝元までやってきた・・。アザミと黄色い花々が咲き乱れる草原を下り、稜線から落ち込んでくる大規模なガレ沢を横切った台地に西日をあびた暖かな草地が待っていた。16:05、上倉沢源流のガレ。5時間15分の今日の行程は終わった・・。

テントを張るが例の人はまだ来ない。稜線が近く風が上空をヒュルヒュルと舞っている。誰も、居ない。目の前には稜線から落ち込んできたスケール感の大きいガレで凡そ非日常的な風景だ。取り囲む原生林は重厚で空気の密度が濃く、その中に声を出しても周りにスッと吸い込まれてしまいそうだ。おそろしいまでの、全くの、ひと気の無い世界。あぁ、こんな場所があったのか・・。こんな、壮絶なまでに美しい世界が全く人の目に触れることなく存在しているのだ・・。こんな所にたった独り・・・。あぁ、これが南アルプスなのだ。

何もすることがない。テントの横にロールマットを広げてごろりと横になる。夏空は青く、高い。この調子なら明日の朝には憧れのピークに立てることだろう。風も止むと全くの無音の世界で、自分の心臓の音さえもが聞こえてくる。満足感と、喜びと、不安感が複雑に混じりあって急に物悲しくなってしまった・・。

1時間近くして突然ガレの向こうから「オーイ」と大きな声がした。あぁやっと来たか、例の男性だろう。こちらも「オーイ」と大きく返すとその声がたちどころに周りの空気の中に吸い込まれている様を感じる。やがてお花畑を抜けてくだんの彼が到着した。少し、安心した・・。

ご苦労様。
イヤー結構長かったですね・・。

樹林の向こうに太陽が隠れるととたんに気温が下がってくる。上着を着込む。食事を終えてテントの前で彼と話しこむ。彼は明日は所ノ沢越え、そしてあさっては青薙山で白根南嶺を何日もかけて縦走するという、そんな彼もきっと南ア中毒なのだろう。大阪から休日のたびに実家のある焼津まで戻ってはこのあたりの山を歩いているとのことだった。安倍奥の山、深南部の山、など自分の知らない世界の話を色々としてくれる。未知の山への憧れが湧いてくる。すっかり周りが暗くなり胴震いを感じるような寒さに我に帰り、テントに戻った。鹿の鳴声と小動物の気配をすぐそこに感じながら、疲れているのに寝付けないという一夜を過ごした。

* * * *

隣のテントからモゾモゾと動いているのを感じて時計を見ると4:40だった。近所の登山道具店の夏山バーゲンで買った羽毛150gの超軽量シュラフでも充分眠れた。あぁ朝になって嬉しい。テントのジッパーを降ろすと今日も天気が良さそうだ。夜露に濡れたフライをはたいてみる。さぁーっとものすごく純度の高い冷涼な空気が入り込んでくる。山の朝は、いつも素晴らしい。

湯を沸かし暖かいレモンティーで目を覚ます。隣のテントの主は「イヤー今日からはいよいよ独りだなぁ」と言っている。ここまでこれほどコースがよいのであれば実は自分も所ノ沢越え経由で中の宿まで歩くのも悪くなかったかな、などとも考える。もっとも入山前にはそんな余裕もなかったのだ・・。

テントを片付けザックをここにデポして身軽になって一足早くテント場の裏の樹林帯に踏み込んだ。まだ薄暗い樹林帯には獣の気配も濃い。昨晩はこのあたりから鹿の鳴声が良く響いていた・・。割とあっけなく7分で樹林帯を抜け出すと目の前がぐっと広がり、水のないガレ沢に出た。そこに下りて今度はこの中を緩く高度を稼ぎながら登っていく。いよいよ笊ケ岳の肌に取り付いた感じだ。
(上倉沢ガレからハイマツ尾方面を仰ぐ。)

ガレの中を歩きやすい箇所を選んで登っていく。赤布が時折ぶらさがっている。15分後左手に示される赤ペンキに従ってガレ沢を離れると今度は樹林帯の中に導かれた。すぐにジグザグのつづらおれとなり進むと、樹林帯の中を何かが動いている。一瞬どきっとするがよく見ると人だった。ゆっくりと踏みしめるように登っていく。大きく咳払いをしてからじきに追いつくと、今朝やはり上倉沢を出たという。我々のテントの先の樹林の中に幕営していたとの由。

空荷の私が先行し高度を稼ぐと朝日を浴びた頭上の林が逆光のシルエットで浮かび上がる。もう稜線なのだ。ガレ沢から離れてちょうど30分。稜線に出た。目の前に朝日を浴びて黒い富士と毛無山。あぁ眼下に山梨県が広がった・・!これが白根南嶺の縦走路だ! ついにここまで来たという思いがある。踏み跡は細いがしっかりとしている。目指す笊ケ岳はいよいよ近く、朝露に濡れるか細い道を辿る。この道は何故か小さな羽虫が多い。黒くたかるように飛び回る虫を分けて高度を稼いでいくと朝露でニッカズボンがぐっしょりと濡れてくる。

30分で待望の山頂だった。着いた・・・!誰も居ない。南アルプスの名のあるピークでこれほどの静寂に支配されている峰もあるまい。森林限界を超えたわけではないが、山頂部には潅木の中にハイマツも生い茂り高山の趣がある。さすがに南ア屈指の展望台と言われるだけあって、全くその言葉を裏切らない展望が我が手にあった。目の前には小笊を従えた富士が立派だがむしろ興味は自分の中のスター達に注がれる。北を見てすらりと尖る北岳、重厚な間ノ岳、農鳥は間ノ岳に重なり判別しがたい・・・、西へ徐々に目を向けよう。一人存在感の塩見岳。そしえ近景となって牛の背のような悪沢岳、堂々と赤石岳、最後の大物・聖岳。さらには負けじと上河内、茶臼が続く。自分が歩いたピークなのだから間違えようがなかった。どの山頂も目をつぶらなくても思い出せる、素晴らしい山々なのだ・・。

ハイマツにワイヤーダイポールを乗せてピコ6で50MHzの運用をする。こんな簡単な設備でも30分でパイルも混じり10局交信。遠くは奈良や京都あたりが呼んできた。距離を感じさせない強烈な電波だ。途中で先ほどの単独行が、更に閉局してから昨日の彼が登って来た。しばらく皆で山座同定をしながら時を過ごす。皆それなりに感慨ひとしおの様で写真をとったり思い思いに過ごしている。二人とも今日は所ノ沢越だそうで、もうここからさして時間もかからないようだ。

1966年5月、と書かれた記念プレートがあった。35年以上も前だ。そんな昔に、この山に惹かれ残雪を踏んで上がってきたパーティのことを考えた。山に惹かれるという気持ちに時代の違いはない。彼らの感動も、きっと自分の感動も、全く同じ事だろう。そんなことを思っていると不意に、もう下りても良いや、という気持ちになり、三角点の近くの小さな石を記念にザックに放り込む。残った二人と互いの健闘を祈りここで別れた。この山頂をともに踏んだという、仲間という気持ちがあった・・・。

* * * *

往路を忠実に辿る下山は心配もない。無事上倉沢でザックを回収し、長いトラバース道に踏み込んだ。6つの沢を越え、湿った二重山稜を歩くようになるとあとは下界に下りることばかりで一杯になる。もっと率直に言うと椹島で味わうビールへの夢想だ。

急坂を淡々と下りて行く。結局コースへの不安も、一人への不安も、杞憂に終わったように思える。いや、山を下りる時って、結局いつもそう思うものなのだ。都会の中で色々な人の中で過ごし色々な予定やしがらみに追いかけられていると独りで静かな山へ行くことへの憧れは増してくる。でも実際実行しようと思うとやはりう不安だし、気も重い。そうしてとにかくやってみるとなんでもなかったように思える。少しだけ自分が偉くなった様にも、思える・・・。そうして、また毎日が始まっていく・・。しばらくすれば日常が再び積み重なって山への思いが湧くのだ・・。

急坂も1372mピークで終わり送電線鉄塔台地を過ぎると沢音が近づき林道が見える。あぁ下りてきた。例の注意書きの看板の前で。思わずガッツポーズ! やった、やった、と大きな声を出してしまった。結局笊ケ岳から椹島まで、鹿一頭以外、誰にも会うことがなかった・・。

椹島ロッジ近くになり夫婦らしい中高年のパーティとすれ違う。「今から、千枚ですか?」と聞くと「いぇ笊へ」と言う。「やぁ僕も今笊から下りてきたところですよ」というと相手の顔も輝き、コースについての質問が飛んでくる。出来るだけ、分かるだけ詳しく質問に答えて彼らを見送る。この時間から歩いて上倉沢まで行くとしたら結構遅くなるかもしれない・・でも明日、彼らを待つであろう感動がどのくらい大きなものかは自分もよく知っていた・・。

椹島から畑薙ダムへの帰りのバスに乗るためには東海フォレストの経営する山小屋に食事つきで泊まり、バス乗車時にその領収書を見せないとバスには乗れない仕組みだが、駄目かもしれないと覚悟しながら売店で聞いてみると何と3000円で乗れるという。バスに空席があるとそのへんは割とフレキシブルなようだ。これで今日帰れることが決まった。今日中に家族の待つ元へ戻れると思うとやはりほっとする。ついでに赤石温泉の白樺荘で山の香りたっぷりの湯を浴びていこう、とたちどころに現実的なプランが固まってくる。

あー、終わった。ともかく大成功だ。1泊2日の、周りから見ればさもない行程でも、自分にとってはとても大きかった。

バスまであと20分。自販機でよく冷えた缶ビールを買い、ぐいっと流し込むと喉がバクハツした。グルグルと回り始め、もう疲労感と達成感が入り混じって、あぁこれでもういつ山をやめてもいいや、といった気持ちすら湧いてくる。そんなことは無いのはこの自分が一番良く知っているのに。そういえば昨夕、テントの前でくだんの彼と話しながら彼が言っていた言葉が頭をよぎる。「まだまだ登る山があるのにわざわざこんなところにくるなんて、お互い好き物だね。」・・・・。本当に、そうなのだ。でもそれは、笊ケ岳を目指す者への最大の賛辞の言葉ではないか、と思っている。

大井川に沿って進むバスの中から、今ごろ彼らがいるであろう白根南嶺の、障壁のように聳える山々を首が痛くなるまで見上げていた。

(終わり)


(コースタイム:2002/8/10 椹島10:35-登山口10:50-鉄塔台地11:15−1372m峰11:30-(15分休憩挟む)-赤石岳見晴台13:15-「←椹島2時間、→笊ケ岳4時間半」指導標13:47-1本目の沢14:02/14:10-2本目の沢14:19-3本目の沢14:43-4本目の沢15:09/15:15-5本目の沢15:30-6本目の沢15:38-上倉沢源流の崩壊地16:05・テント泊

2002/8/11 テント場5:50-ガレ沢合流5:57-ガレ沢から離れる6:11-稜線(白根南嶺尾根)6:40-笊ケ岳・アマチュア無線7:10/8:10-椹島下降点8:29-ガレ沢合流8:37-テント場9:06/9:15-6本目の沢9:40-5本目の沢9:46-4本目の沢9:59-3本目の沢10:14/10:30-2本目の沢10:49-1本目の沢10:56-「←椹島2時間、→笊ケ岳4時間半」指導標11:10-(8分休憩挟む)-1372m峰12:30-鉄塔台地12:35-登山口12:52-椹島13:10)





左上:上倉沢のガレを渡った
高台は絶好のテント場だ。
左中:笊ケ岳山頂から。小笊の向こうに朝の富士がすくっと立っていた。左下:聖岳をバックに。
右:笊ケ岳からの眺めは期待を裏切らない。千枚岳、悪沢岳、赤石岳と役者が並ぶ。
(ハンディGPSをザックの上蓋に入れて取得した今回の足跡。1857m峰から明瞭な尾根に乗る。しばらく先で
トラバースに転じるがここで6本の沢を渡る。テントを張った箇所は明るく開けて気持ちが良い。水は途中の沢で得た。)

データはGPS(Garmin eTrex Venture)から「カシミール3D」を使い同ソフトに付属の5万分の1図上に展開したもの。

アマチュア無線の記録

笊ケ岳(ざるがだけ) 2629m 静岡県静岡市、山梨県南巨摩郡早川町
50MHzSSB運用、ミズホMX-6S(1W)+ワイヤーダイポール、10局交信


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