陽春の鎌倉アルプスへ

 (2002/3/10、神奈川県横浜市・鎌倉市)


3月に入りまだ10日も経っていないがここ数日間で急速に暖かくなってきた。今年は東京・横浜の市街地に積雪をみた日もなかった。例年なら年に1、2度はある積雪日だが今年はもうこれで終わりだろうか・・。寒いよりは暖かいほうが、それは良いが、過ぎ行く冬がすこし寂しくもある。今年もとうとう家族で雪遊びをする事もなく気づけばこれで何時しか終わってしまったかと、すこし漫然と過ごした冬へのエレジーがある。

とはいえ春めくと俄然外に出たいという思いが強まる。久しぶりに家族を誘って外へ出てみようか、と考える。冬は去ってしまったようだが、それならば春を一番乗りで楽しんでやろう。気温18度などという三月はじめにしてはとんでもない天気予報を見て、無線機とお弁当を簡単にザックにまとめて京浜東北線に家族で飛び乗ったのは10時半をまわっていた。

横浜市南部の円海山から鎌倉市まで、ずっと尾根伝いに歩けるという。地図を見る限り結構な距離だ。宅地化の進んだ横浜にあってこれはまさに拾い物のコースといえる。ゴールとなる鎌倉市北部の山々は標高150mあたりの小粒な丘陵が続き、これを「鎌倉アルプス」と呼ぶそうだ。横浜からアルプスまで、歩きつなぐのになんとなくロマンが感じられた。

洋光台の駅からタクシーを拾い円海山までは10分くらいだろうか、無線中継塔の立つここからはなかなか素晴らしい展望がぐるりと広がっている。丹沢から横浜港まで、一大パノラマを手に出来る。家族で丘陵歩きをするのは去年の6月ぶりだから随分とご無沙汰していたものだ。

円海山からほぼ南下する稜線にはジムニーなら通れそうな道がずっと続いている。枝道が無数に派生しており、思い思いのコースが取れるのだろう、想像していたよりはるかに人の往来が多い。殆どがスニーカ履きの散歩のついでです、といった感じの人ばかり。実際コース選びによって絶好の散歩コースだろう。犬連れも頻繁に行き交う。一応トレッキングシューズなどを履いてきた自分の足元がやや大げさで恥ずかしい。そんな必要など、皆無だ。

道には杉林に混じる雑木のほかにアオキなどの庭にあるような木々も多い。裏庭をあるく感覚がある。時折展望がひらけるが、宅地がすぐ目の下までのびてきている箇所もある。しばらく歩き大丸山への標識を見て左手に登る急な階段を上る。「おなかがすいて歩けないー」などと言っていた子供たちもこの上でご飯だぞ、というとダッシュで登っていく。嬉しそうに登っていく彼女たち・・・もう幼女でもない長女と、幼児でもなくなりかけている二女・・・急速に大きくなっていく彼女たちを見ながら、おいおい、そんなに急いで大きくならなくていいのに、もう少し、のんびりとしてくれよ・・などと思う。ついこの間長女が着ていたジャケットがいつのまにか二女にフィットしている。そうなるのはわかっているものの余りにも駆け足の成長ぶりに、嬉しいかといえば嬉しいが、寂しいという想いもある。いつまでも蝶よ花よと子供っぽく接したいが、いずれずっと離れていく時期が来る。この調子だとそれはあっという間だ。そんな子供の自我の芽生えを、親としてどう接すればよいのだろう・・。それが寂しいなどと言っているとは、親失格かもしれない・・・。

山頂は小広い草地で、ここでお弁当を広げた。ここが一応横浜市の最高地点とされるらしい。海抜156m。行きがけのコンビニで買ってきた缶ビールを開ける。まさにぽかぽかとしてまだ冷たいビールがとても美味しい。子供たちがお握りを片っ端から平らげていくので、こちらも数個確保しておかないと自分のものがなくなってしまう。ビールが回ってきてビニールシートに思わず横になるとスーッと眠気が襲ってくる。子供たちはベンチで遊んでおり、なりはそれなりに大きくなったがまだまだ頭の中は子供そのもので、それが妙に楽しくも嬉しくもある。

少し風が出てきたようで、再びハイキングコースに戻り南下を続ける。いつしか横浜横須賀道路をトンネルの上で越え、鎌倉市との市境を辿るようになる。相変わらず第一級のコースで、こんなに長いコースが横浜にあったなんて、横浜も捨てたものではないな、と思う。

MTBサイクリストも行き交う山は相変わらずバラエティに富んでいる。右手に横浜霊園を見ながら大きく西へ方向転換していくと、やがて茶店の赤い幟がはためく。鎌倉アルプスとのジョイントとなる天園だ。茶店の横を抜けると興ざめなことにゴルフ場のクラブハウスがあった。残念ながら都会のロングトレイルもここで終わりである。今まさにパーティーがフェンスの向こうでクラブを振っている。そんな彼らより自分たちのほうがずっと安上がりで濃い楽しみ方をしている、と内心鼻が高い・・、偏見かもしれないが。

出来るだけ人口造営物を見ないように進むとちょっとした岩山が目の前に見えてこれが大平山だ。登りついて簡単に50MHzで運用する。子供達はなんと縄跳びなどをして遊んでいる。家内はサンドイッチをほおばり栄養補給。各人各様にチャージして、あとは再び天園に戻る。

再び山の道となり、心が安らぐ。このあたりは鎌倉観光のついでに登ってきたといった感じの街着のカップルなども足元を見ながら登ってきている。たんたんと歩き、山道が途切れるとぐんぐん高度を下げて、観光客でにぎわう瑞泉寺の横に出た。

* * * *

こぎれいな古都に、やや薄汚れた自分達家族はやや場違い・・。それでも久々の観光地。小町通りなどは原宿にいるような感じもする。そういえばその昔、まだ結婚する前に家内と遊びにきたことを思い出した。クレープやアイスクリームなどを食べて、この町を楽しく歩いたことを思い出した。あの頃はこんな大きな娘達がいることなど、想像も出来なかったが・・。奪い合うようにアイスクリームを家族で食べながら、あぁ、何か不思議だなぁ、という想いがわいていた。

人並みにもまれる細い通りから駅前広場に飛び出て、後は横須賀線に揺られるのみだった。横浜から鎌倉アルプスまで陽春の山と古都を楽しみ、満足感が大きかった。嫌がらずに歩いてくれた家族みなさん、ご苦労様でした。


(コースタイム:円海山11:50-大丸山12:45/13:30-天園14:30-大平山14:40/15:14-瑞泉寺16:00-鎌倉駅17:30)
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(大丸山山頂にて) (大平山から横浜方面) (大平山はちょっとした岩山)



アマチュア無線運用の記録

大平山・神奈川県鎌倉市157m 50MHzSSB運用、YAESU FT817+ダイポール

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