近頃尾国でコケるモノ 最終回 by 山田 卓



 8月に新メインマシンとしてPentiumV/500のデュアルプロセッサ機(MBはTyan S1832DL)を作成、あわせてサブマシンをCeleron/400(MBはTyan S1846S)とし、これまでのメインマシンだったPentiumPro/200のデュアルプロセッサ機は家庭内LANのネットワークサーバーに、サブマシンとして使っていたMMX Pentium/200は職場で使用することにした。その結果、一昨年来職場で使っていたPentium/120とマザーボード Elite TS54P-AIOはついに御役御免となってしまった。思い起こせばこの連載をはじめたのが4年前、近頃とみに気力の衰え激しく、私にとっての自作第1号機に使用したというだけでなくこの連載にとっても記念すべきCPUであるPentium/120(とマザーボード)の現役引退を潮時と見て、今回で最終回とすることにした。もう憶えている人もいないと思うが「WindowsNTがサクサク動くAT互換機自作レポート」と銘打ってはじめた連載でもあり(当時のNTのバージョンは3.5)、最終回にNT4.0の後継OSであるWindows2000の話題を取り上げることが出来るのも何かの縁かもしれない。

 マイクロソフトが2万セット限定で一般ユーザーからWindows2000β3評価キットの販売申し込みの受付を開始したのが8月30日。同社のWWWサイトで結構前から予告されていたので受付開始後まもなく申し込みを行ったが、それでもインターネット経由での申し込みを嫌ってFAXを利用したため、受付番号は17337番、結構ぎりぎりセーフの申し込みとなった。ちなみに当初予定されていた2万セットは一日で完売、マイクロソフトは急遽さらに2万セットを追加している(ちなみにわずか2000円のこの評価キットにはWindows2000 ProfessionalだけではなくWindows2000 ServerおよびWindows2000 Advanced Serverまで入っていると言う太っ腹振りであった)。

 β版でもいいからとにかく早くWindows2000がほしかったのは、WindowsNT4.0の制限にそろそろ我慢が出来なくなっていたからで、特にインストール時に4GB以上のパーティションが切れないことが問題だった。4GB以上のパーティションが切れないと言う制限はServicePack3で解消されてはいるが、ServicePackをあてるには事前にNT4をインストールしておく必要があるため、インストール時に関してはこの制限は残ったままだったのである。最近の肥大化したアプリケーション(特にマイクロソフトのアプリケーションは)、アプリケーションのインストール先のフォルダだけでなくシステムフォルダにもどっさりファイルをコピーする。そのため、OS用のパーティションにあまり余裕がないとアプリケーションがインストールできなくなることがある。また、システム管理の面からもOS+アプリケーション用に一つの大きなパーティションを切っておいた方が楽なことが多い。あと、FAT32でフォーマットされたディスクが読み書きできないのも、Windows98を併用(無くせるものならWindows98は無くしてしまいたいが後述する理由でWindows98が必要な事がある)する上では不便この上ない。もちろん、Windows2000ではこれらの制限はいずれも解消されている。

 結論から言えば、Windows2000はβ版とはいえかなり安定しており、NT4+IE4+ServicePack5と比べても特に肥大化したり重たくなった感じはなく、むしろ動作が軽く感じる場合もある。Win32アプリケーションを使うのであれば、ゲームを重視するユーザーでない限り(ほとんどのWindows用ゲームはWindows95/98のみをターゲットとして開発される)、いまだもってDOSの上で起動し16bitコードがゴロゴロ残っていてちょっと何かあるとすぐシステムリソース不足と泣き言を言うWindows98より、Windows2000の方が安心して使えて良いのではないかと思う。Windows2000はUNIXと同じマルチユーザーサポートのOSであり、管理者がユーザーごとにアカウントを作成しユーザーは与えられたアカウントでログオンをするというのが本来だが、ユーザーがログオン作業なしで利用できるオプション(ブート後にOSがデフォールトアカウントで自動的にログオンする)が用意されているので、家庭などでのスタンドアロン環境での使用に際してNT4.0よりも多少は敷居が低くなっている(ただし管理者権限でログオンしていることになるのでセキュリティ上の問題はあるが)。Windows2000が一般家庭にまで普及するか否かは、どれだけの周辺機器(特にビデオキャプチャーと言ったマルチメディア系)がWindows2000をサポートするかと言うことと販売価格(間違いなくWindows98より高い)で決まるのではないかと思う。

 などと誉め言葉ばかり並べたが、いくら安定しているとは言っても所詮はβ、使える環境に持っていくまでにはそれなりの苦労はさせられた。まず一番に困ったのが、新しいビデオカードのドライバがないこと(これではLinuxと変わらんぞ)で、RivaTNTやG200ぐらいまでは添付されていたのだが、メインマシンの3DLabs. Permedia3 Create!、サブマシンのMatrox Millenium G400ともにWindows2000には添付されておらず、当然(まだ出ていないOS用のドライバをつけるベンダーがあるはずもなく)ビデオカードのドライバディスクにも収録されていない。3DLabs.の方は一応β版という位置付けでWindows2000用のドライバをWWWサイトで公開しているのだがこれがβ3より新しいRelease Candidate 1以降にしか対応しておらず(試しにインストールしてみたが使えなかった)、Matoroxにいたってはβ版の公開すらされていないと言う有様、とりあえずカードに添付されているNT4.0用のドライバが使えるはずなのでそれを組み込もうとしたところ、昨今はディスプレイドライバごときにまでインストーラがあってそれがまた融通の利かないインストーラでOSのバージョンが違うと言ってインストールを行わずに勝手に終了してしまう始末である。やむなくコントロールパネルの「ハードウェアの追加と削除」から、セットアップ用のinfファイルを指定する手動インストールを行ったところどうやら組み込めたようだが、はたして正しく組み込めたかどうかは自信がない。まあ、とりあえず動いてはいるので結果オーライだ。

 次に困ったのがCreative Labs.のSound Blaster Live!。天下のCreativeの、しかも発売後2年近く経っているサウンドカードのドライバが標準添付されていないのである。しかもカードに付属のNT4.0用のドライバでも駄目だったからさすがに困った。どっかにドライバはないかと幾つかWWWサイトを覗いているうちに、Microsoftの英語版のWindows2000のページからとんだ米国WindwosNT Magazine主催の掲示板に「Sound Blaster Live!がなんたらかんたら」と言う書き込みがあるのを発見、どうやら「新しいBuildのWindows2000をインストールしたらSound Blaster Live!の音がなんかシャリシャリするようになったんだよなあ」という内容で、これを読んでいったいドライバはどうしたんだと思った人間は私だけではないらしく「ドライバをどこで手に入れたのですか」と言うコメントがすでについており、それに対して「www.betaos.comに行くといいよ」と回答がされている。早速www.betaos.comにいくと、たしかにSound Blaster Live!のドライバがあったので即ダウンロードした。付属のコメントファイルを読むと、β3よりも後のBuildのWindows2000にはSound Blaster Live!のドライバが標準で付属しておりその新しいBuildのWindows2000のCABファイルからSound Blaster Live!のドライバだけ抽出した物とあり、うわっそんなことしていいのかとは思ったものの背に腹は変えられずありがたく頂戴することにしてインストールしたところ、何とか音が出るところまではたどり着くことが出来た。ただし、残念ながらMIDI用のWaveTable音源部はかなりノイズがひどく、またAge Of Empiresをプレイ中に突然音がしなくなったり最悪の場合はWindows2000そのものがクラッシュすることもあるのでドライバのできはまだまだのようだ。

 若干の問題はあるもののとりあえずハードウェアの方は全て動くようになったので、続いてアプリケーションをインストールすることにした。ここでのこまったちゃんは、AdaptecのEasy CD Creater 3.5。インストールしたらなんとWindows2000が起動しない!こりゃOSから再インストールかと一瞬青ざめたが、Windows2000のブート時に「前回正常に起動したハードウェア設定で起動」と言うオプションを選択したところ無事に起動、いやあCD-Rの書き込みソフトってハードウェア設定をいじってたんですねえ、勉強になりました。しかしこのままCD-Rが使えないのは困るのでマイクロソフトとアダプテックのサイトを覗いたが、いずれも日本語のページには「Windows2000β3にEasy CD Creater 3.5をインストールするとOSが起動しなくなるのでインストールしないでください」とあるだけ。ところが米国AdaptecのWWWサイトにはきちんと対処法が公開されていたのである。そこには「ここからダウンロードしたユーティリティを事前に実行した後でEasy CD Creater 3.5をインストールし、最後に3.5Cへのアップデートパッチをあてて下さい(でもできればWin2000対応のEasy CD Creater 4を買ってね)」といった内容の手順が事細かに述べられており、そのとおりにしたら無事にWindows2000β3上でCD-Rを使うことが出来るようになったのだが、それにしてもどうして日本語サイトにはこういう情報が公開されないのかねえ。別に今回のアダプテックに限らずこういうことはほんとに良くあるぞ。

 あとソフトウェアでトラぶったのがProxyサーバー。前述のとおりこれまでのメインマシンだったPentiumPro/200 Dualを家庭内LANのサーバー的な役割のマシンとすることにし、プリンタサーバー・ファイルサーバーに加えて、LAN上のどのマシンからもインターネットにアクセスできるように自動ダイアルアップ機能があるProxyサーバーを導入することした(ダイアルアップルータと言う選択肢もあるがしばらくはこれまで使っていた56Kモデムを使うつもりだったことと我が家のLANは100BASE-TXでHUBまで揃えていたのでProxyサーバーを選択した)。当初はフリーウェアでクライアント数の制限もないWinProxyを考えていたのだが、正式版のVer.1.55およびβ版のVer.2.0ともにどうもWindows2000と相性が悪く、とりあえず動作はするもののしばらくするとエラーで強制終了されてしまう。WinProxyの作者のホームページを見るといくつかWindows2000がらみのトラブルが報告されていたものの、作者の下にWindows2000のテスト環境がなくWinProxyのWindows2000対応はしばらく出来ないとの事。仕方がないので、商用ソフトを導入することにし、接続クライアント数が5クライアントまでと言う制限はあるが値段の手ごろなブレーンのProxy2000スタンダード版(実売価格は約9千円)を購入した。クライアント数の制限についてはPCが全部で4台しかない我が家で使う分にはまあ問題にはならないだろうと判断した。導入後今現在にいたるまで、Proxy2000はWindows2000β3上で安定して動作している。クライアントからはプロバイダへのダイアルアップ作業が必要なく(Proxy2000が自動的に行う)、また最近回線をISDNに切り替えて56Kモデムに換えてTAを導入してからは、ダイアルアップして接続が確立するまでが高速化されたので、まるで常時接続しているような感じで使えて大変快適である。ただ、後で気づいたのだがWindows2000やWindows98 Second Editionにはダイアルアップ接続の共有と言う機能があって、これを使えばわざわざProxyサーバーなんか買う必要はなかったんじゃないかと思ったが、ま、後の祭りだな。

 とまあそんなこんなで現在は若干制限はあるものの、ほとんどのPCによる作業はWindows2000β3上で行っている。おそらくそのうち雑誌とかで大々的に特集が組まれるはずなので詳しくは書かないが、Windows98よりも快適な面が多い。Windows2000で出来ないことと言えば先にも書いたとおりゲームぐらいだが、それも今後変わる可能性が無いわけではない。何しろ、WingCommanderシリーズの生みの親Chris RobertsがDigital Anvil設立後に初めてリリースするゲームとなる期待の新作StarLancerは、Microsoft Gamesブランドで出るだけあってWindows2000対応が謳われているのだ(リリース時期は2000年初頭だが果たしてMicrosoftは日本語化してくれるのか?)。これを皮切りに他のゲームベンダーもどんどんWindows2000対応で新作・旧作を問わずリリースしてほしいものである。

 ちなみに現在我が家ではWindows98はほとんど必要としていない。ゲームはほとんどしなくなったので、Windows98がどうしても必要なのはかみさんお気に入りの富士通のTEOと、私がアカウントを持っているMSNへの接続(MSNは接続に専用のクライアントソフトが必要)の時だけである(プロバイダとして利用している@Niftyに一本化してしまえば良いのだがメールアドレスに愛着があるのでMSNのアカウントを取り消せないでいる)。そういえば確かマイクロソフトはWindows2000はWindows98の全ての機能を包含するといっていたはずだが、少なくともβ3にはMSNのクライアントが付いてなかったぞ。これでどうしてWindows98の機能を全て含むと言えるのだろう。製品版にはちゃんと付けますって事かなあ?  ともかく、この2点さえクリアできればWindows98はさっさと消してしまおうかと思っている次第である。

 最後におまけの話を一つ。先日Microsoft IntelliMouse Explorerを購入。ボールの代わりに光学センサーを使った話題のマウス(これまでも光学マウスというのはあったが目盛りがきってある専用のパッドが必要だった)で、発売日の夕方に栄の九十九電器へ買いに行ったらかろうじて最後に残った一個を購入することが出来た。はじめは名古屋だから入荷数が少なかったのかと思ったが、その後どこのパソコンショップへ行っても商品を見かけないところを見ると、どうやら物凄い人気で入荷するそばから売れているらしい。マウスなんて安いものは1千円出せばおつりがくる御時世に1万円弱もするマウスがそんなに売れるとは思わなかったが、いったいどんな人間が買ってくのだろうか。このマウスについては専用のパッドも使わずいったいどうやって移動量を検知しているのか結構不思議だったのだが、マウス底面の光源がマウスを置いた机などの表面を垂直に真上からではなく斜め上方から照らしており、表面の模様ばかりではなく斜めに照らされて出来る表面の凹凸の影を読み取っているようだ。従来のボールを使ったマウスはボールに細かな埃やゴミがつくだけでスムーズな動きをしなくなるが、IntelliMouse Explorerはそんなことはなく大変使い勝手が良い。ほかにもホイールが改良されて表面に刻み目がつけられている。従来のIntelliMouseはしばらく使っていると手垢で滑ってホイールが回しにくくなったが、刻み目がつくことによって確実にホイールを回すことができるようになった。ただし一つだけ欠点があって、消費電力が従来のIntelliMouseよりも大幅に大きい(約5倍?)こと。我が家ではLANサーバーとメインマシンをCPU切替機を使って一組のキーボードとマウスで操作しているのだが、マウスをIntelliMouse Explorerに換えたところ消費電力が大きすぎて切り替え機の動作が不安定になってしまった。仕方ないのでIntelliMouse Explorerはメインマシンに直接つなぎ、LANサーバーには(キーボード周りにマウスを2つも置くスペースがないので)小型のトラックボールを接続してしのいでいる。それにしてもいろいろと問題の多いマイクロソフトだが、ハードウェアには良いものが多くて感心する(スカだったのはWindows Sound Sysytemぐらいか?)。

 冒頭にも書いたとおり、今回でおしまいです。これまでほとんどSFと関係のないことを好き勝手に書いてきましたが、長々とした駄文にお付き合いいただき有難うございました。書く書くといって書かなかったこともたくさんありましたが、ご容赦ください。

 それでは皆様お元気で。

(Windows2000 Release Candidate 2の到着を待ちながら 1999/11/26)




前回へ

TORANU TあNUKI 64号 目次



Back to Homepage