近頃尾国でコケるモノ 第10回 by 山田 卓



 えー、実はわたくし久々にSFM買いました。もちろん1996年2月号のことです。特集がクラークの"The Lost Worlds Of 2001"の部分訳にゼラズニイ追悼っしょ(ついでに書いておくと草上仁の連載長編開始というのもある)! へたしたら10年ぶりぐらいじゃないかしらん。いやーそれにしてもやっぱ昔のクラークは良いなあ。解説で「クラークは会話を書かない方がいい」と伊藤典夫さんが書いておられるけれど、ほんと、そのとおりっす。「2010年」のエピローグだけがむちゃくちゃ良かったのもあそこは会話が一切無い昔ながらのクラークの文体だったからなのですねえ。ちなみに「神の鉄槌」の方はと言えば、まああんなもんでしょ、今のクラークって。1700円も払って読むような話じゃないよ。ところで早川にはゼラズニイの本はもう一切刊行予定がないって聞いたけど、悲しいなあ。「光と闇の創造物」とか日本語では読めないのかなあ。こういうところで創元にがんばってもらいたいなあ。

 本題に入る前にまずなんで第1回のつぎがいきなり第10回なのかということだけど、もうわかるよね。そうです、二進数表示なんです。ま、連載が続けば途中から16進数表示に切り替えるかもしれないけど。
 さて、前回はフロッピーから立ち上がらない所で終わったのだけど、そのトラブルシュートに入る前に前回説明できなかったミニマムインストール用のMS-DOSシステムディスクの説明をしておくと、これにはMS-DOSシステムのほかに日本語モードを実現するのに必要なドライバやフォントファイル、XMS・EMSメモリマネージャ、FDISK・FORMATコマンドをコピーしてあって、これさえあれば生のHDをフォーマットして日本語Windows3.1がインストール可能(ここが重要)な最小の日本語DOS環境をHD上に構築できるというディスクなわけ(この他にフリーウェア「FD」の類や適当なスクリーンエディタがあると便利)。なんでこんなディスクを作ったのかというと(DOSのオリジナルディスクから素直にインストールすればいいと思うでしょ?)、要するに市販されているMS-DOS6.2/Vはアップグレード専用で、既に日本語DOSと日本語Windowsがインストールされている上にアップグレードする形でインストールするのが一番綺麗(とぼくは思ってるのだけれど)にセットアップできるからなわけ。ま、2台目だからこそ出来るワザではあるけど。
 で、ここから前回の続きになるわけだけど、FDDから立ち上がらない以上まず真っ先に疑ったのが、FDDそのものの不良じゃないかという事だったのだけれど、これは第0回で紹介した486マシンについているFDDに交換してみたところやはり起動しないので関係なし。となると考えられる原因としてはスロットにささった拡張ボード類による干渉という事になるわけで、とりあえずはまずグラフィックボード以外の全ての拡張ボードを抜いて試してみる。もしこれで駄目ならグラフィックボードに問題があるという事になり、予算ぎりぎりのぼくにとってはかなり厳しい(なにしろグラフィックボードは必須アイテムなので買い換えなくてはいけなくなる)事になったのだけれど、さすがにそこまで疫病神に祟られてはいなかったと見え、この時はFDDからちゃんと立ち上がってくれたのだ。
 で、ここでふっと頭をよぎったのが、ICUすなわちISA Configuration Utiliyがマザーボードに添付されていなかったこと。ICUが無いためにPlug&Play(PnP)対応ボードと非PnPボードとの間でハードウェアリソース(IRQ・DMAチャネル・I/Oポートアドレス)がかち合ってしまいそのためシステムが起動できないのではないかと思ったのだけれど、といってもICUが無い以上どうしようもないので、とりあえず定石に従って一枚ずつボードを加えながら試していったところ、結局悪かったのはなんとSoundBlaster16だったのでした。最初は「なんでえ?」と思ったのだけど、はっと気がついたのが、今回購入したSoundBlaster16は新しいバージョンの物で新たにIDEのCD-ROMインターフェース(EnhancedIDEではHDD以外にCD-ROMなどもサポートされておりATAPIのCD-ROMともいう)が加えられているということ(もちろんジャンパースイッチでこのIDEインターフェースは殺した)。そこでとりあえず486マシンで使っている一番最初の型のSoundBlaster16に替えてみたところ、うーむ、ちゃんと動くでないの。ついでに新しい方のSoundBlaster16を486マシンの方にさしてみたところ、なんとこっちもちゃんと動く! つまりIDEインターフェースの載ったSoundBlaster16とToritonチップセットという組み合わせがまずかったらしいのだ。うーん、うちのToritonは比較的新しいリヴィジョンのはず、なんだけどなあ。ぼくがきちんと設定できてないのかなあ(実は最近原因らしきものを特定できたのだが余裕が無いので次回)。
 まあとりあえずは動くようになったので、OSのインストールに入る。前述のミニマムDOSディスクでHDDに最低限の日本語DOS環境を組み込んだのち、Windows3.1Jをインストールして、さらにMS-DOS6.2/Vをフルインストール、とここまでは順調だったのだけど、あっさりNTのインストールでこけたのだ。ぐっすん。当初、ぼくはNTをSCSIディスクにインストールするつもりだったのでして、というのもNTではEnhacedIDEよりもAHA-2940のPCI-SCSIバスマスタの方がシステムにかかる負荷がずっと小さく遥かに高性能(Toritonチップの売り物の一つであるIDEバスマスタはドライバが無いので問題外)だからなのだけれど、インストールの途中でこけてしまうのだからお話しにならない。きちんとSCSIディスクのパーティションも切れてフォーマットも出来てNTのシステムの転送も出来てるはずなのだけれど、どういうわけかNTがブートできないのだ。NiftyのAdaptecフォーラムから2940のNT用ドライバ最新版をダウンロードしてもみたのだけれど結局駄目で、しかたないので泣く泣くNTもEnhancedIDEディスク上にインストールしました。ただ、いったんNTが立ち上がってしまえば、2940につながったSCSIディスクは問題なく読み書きできるのだから腹が立つ。どうやらシステム起動時に使用するNT3.5付属のOSローダーがToritonチップと相性が悪いようなのでして、速けりゃなんでもいいと言うものではない、ということを如実に示す結果となりました(安定性……)。
 とは言うものの、まあなんとか動く環境が整ったところで、気を取り直してハードウェア添付のドライバ・ユーティリティやおまけソフトをとりあえずはインストール。SoundBlaster16、AHA-2940(EZ-SCSI)関連はうまく入ったのだけど、PowerWindow868(もちろんデバイスドライバとかは問題なくインストールできた)付属のPowerCinema(S3のVision968/868チップ最大のセールスポイントであるハードウェアDCIを利用したソフトMPEG再生ツール)なるおまけソフトでまたもやこけたのでして、サンプルのVideoCDが再生できないのだ。HD上にインストールされたサンプルのMPEGファイルの再生はちゃんと出来るので、問題はPowerCinemaではなくCD-ROMドライブまわり(つまりドライブとデバイスドライバの両方がVideoCDをサポートしてなくてはいけない)という事になるのだけれど、ドライブ自体はVideoCD対応なので問題なし。となるとデバイスドライバという事になるわけだけれど、その時使っていたのはAHA-2940添付のEZ-SCSI(Adaptec純正のSCSIドライバ集)Ver3.04に入っていたドライバで、購入時点ではほぼ最新のバージョンのはずなのだ。VideoCDの再生デモなんてのをその1年以上前から秋葉原でいやというほど見せられていたぼくとしては、デバイスドライバもVideoCDをとっくにサポートしているものと信じて疑わず、2日ほどあれこれいじってみたものの全く駄目。で、なんの気なしにNiftyのAdaptecフォーラムのライブラリを覗いてみたところ、なんとほんの2・3日前にEZ-SCSIが3.06にバージョンアップしている! しかもバージョンアップの主な内容には誇らしげに「VideoCDのサポート」なんぞと書いてあるではないの。つまりぼくが2940を買ったときにはEZ-SCSIはまだVideoCDをサポートしていなかったのだ。じゃあこれまでSCSIのCD-ROMドライブでVideoCDを見ていた人はどうしていたかというと要するにEZ-SCSIではなくCorelSCSI(CorelDRAW!で有名なカナダのCorel社製のSCSIドライバ集)を使ってたわけですね。うーん。
 とまあこんな感じでどうにかこうにかシステム回りのインストールは終了。さて肝心の使い勝手はということで、通常ならベンチマークの値がずらっと並ぶところなわけだけれども、この記事が皆さんの目に触れる頃にはとっくの昔に時代遅れの値となっているはずなので特に明記はしないけど、少なくともNTも95も使っててストレスを感じさせられることは全く無いと言ったところかな(もっとも95はメモリーさえ十分にあればDX2/66でも結構サクサク動くんだけど)。
 さて、どうにかこうにかシステムのインストールもすんだところで、完成した我が自作Pentiumマシンに名前を付けてあげなきゃいけない(本当はNTをインストールした時にもうつけちゃったんだけどさ)。名前を決めるにあたっては、実はこれまで使っていたDX2マシンも使い続ける予定なので(だって捨てるのもったいないんだもん)、LAN(Peer To Peerだけど)をひくことにしていたものだから、それを念頭において考えることにした。知ってる人は知ってると思うけど、LAN端末には大概あるテーマに沿って統一性のある名前が付けられる(たとえば星の名前とか)のが普通で、「Computer1」「Computer2」みたいな無味乾燥で大した意味のない名前はなぜか好ましくないらしい。というわけで、まずそのテーマを決めなきゃいけない。ま、私は寂しい独り者ですから、やっぱり女の子の名前がいいよなあ(渡辺英樹のいやそーな顔が目に浮かぶようだ)、セーラー戦士の本名とか(でもやっぱりレイとかうさぎとかはやだよなあ)、アイドルから取るとか(おれはけーいちか)、一応SFファンだったんだからSF作品のヒロインの名前とか(今どきジョーン・ランドールとかゲリー・カーライルかあ?)、とまあいろいろ考えた末(どこが)、女神様の御名なんぞは格調高くてよろしいんじゃないんでしょうか、という結論に達し、北欧神話のノルンからとって(ギリシア神話のムーサでもいいのだけどなにしろこっちはたしか九柱もいるので選ぶのが大変)、PentiumマシンをVerdandi、DX2マシンの方はUrd(実はもともとHAL9000という名前だったのだけどさすがにこっぱずかしいのでこの機に変えることにした)と名付けることにした(3台目が加われば当然Skuldになる)。
と言うところで今回は終わるつもりだったのだけれど、ここで「緊急速報 Microsoft SideWinder3DPro」だっ!(注:ここから以降を削るなんてなァなしだぞ-->編)
 SideWinder3DProはMicrosoftがWindows95のリリースにあわせ満を持して放ったデジタルジョイスティック(といっても昔98とかにあったような前後左右のON/OFFしかないといったちゃちなものではない)である。従来のアナログジョイスティックはスティックの位置変化(つまり傾き具合)を可変抵抗(要するにボリュームとかに使ってるやつ)で読み取っていたのだけれど、これだと温度による抵抗値の変化がもろに効いてくる(そのためゲームのプレイ中にしばしばキャリブレーションするはめになる)上、なにより消耗が激しくてちょっと使い込むと1カ月ぐらいですぐ駄目(センタリングはとれないわノイズはグチャグチャのるわでゲームにならないことこの上ない)になってしまう(けっこう高級品でもそう)。これに対してSideWinder3DProはスティックの位置変化を光学追尾式のデジタルセンサーで読み取り、ネイティブモードではデジタルデータのままダイレクトにマシンに伝送する(この他にエミュレーションモードとして高級アナログジョイスティックであるCHのFlightStickPro及びThrustMasterのFlightControlSystemとの互換モードがある)。このためSideWinder3DProはアナログジョイスティックよりもレスポンスが良い上、一度キャリブレーションしてしまえば何度も繰り返す必要がなく、それ以上にセンサーが非接触式なので基本的に消耗しない! という「なぜ今までどこもこういうのを出してくれなかったのだ」と思わず叫びたくなってしまうぐらい画期的なジョイスティックなのだ。事実、ぼくは購入してすでに3カ月(本稿執筆時点)になる(その間にWing Commander 3で相当激しく使い込んだ)けれど、全く購入時点と変わらないレスポンスを現在も維持している。今までこんなジョイスティックにはお目にかかったことが無い! その上台座の部分が幅広で実に安定しており、スティック自体も本当に握りやすい。もちろん欠点もないではなく、スティック左側面の第3及び第4ボタンが指で区別しにくいと言うのがあるけれど、慣れてしまえばそれほど気にならない(あと、ほとんどの高級ゲームカード(たとえばGRAVISのEliminator)ではネイティブであるデジタルモードが使えないと言うのがあるけど、普通の人はこんなもん挿してない)。
 このMicrosoft SideWinder3DProは現在誰にでも文句なしにお勧めできる唯一のジョイスティックと言っても過言ではない(98ユーザーやMacユーザー?知るか!)。"Strike with lightning agility and deadly precision!"と言う化粧箱に印刷された煽り文句が実に泣かせる(deadly precisionだぜ)。やってくれるぜ、Microsoft(でも日本語版はちょっと高すぎるぞ)!
 と言うところで今回はおしまい。次回は「涙、涙のPentiumオーバードライブ」の巻。タイトルどおりのコケまくり、乞う御期待!



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