近頃尾国でコケるモノ 第1回   by 山田 卓



 いやーやっと出ましたね「ハイペリオンの没落」、と言ってもこのT.T.が出た頃にはもう随分前の話になってるけど。まあとっくにいろんな人がいろいろ書いたり言ったりしてるだろうからゴチャゴチャ書く気はないけど、個人的には、サイブリッドの復元キーツが、人間であるあいだは一切まともな詩が作れなかったのに、ラストでコンピュータと同化した途端に詩を次から次へ詠み出すというエピソードが良かったかな。で、ちょっと気になったのが、連邦CEO補佐官リイ・ハントが復元ジョン・キーツのことを誤って「ビル・キーツ」と呼ぶところでして、キーツのスペルは"Keats"なのだけれど、この最初の'K'を'G'に入れ換えてちょっと並べ替えれば、ね、"Bill Gates"でしょ。
 そのビル・ゲーツのキーノート・スピーチがあった6月22日、ぼくはWindows World Expo In Tokyo *95に行ってきた(当たり前だけれどスピーチが聞けたわけではない)のだけれど、この連載は勿論Windows World Expoのレポートなどではないのでして、Windows Worldの話は(面白い話はいっぱいあるんだけど)涙を飲んで割愛するけど、ただ今年末から来年にかけてWindowsの世界でも3Dグラフィックが本格的にブレイクするだろうな、という印象を受けたとだけは書いておきたい。
 で、今回の上京の最大の目的は秋葉原でのニューマシン組立用パーツの調達にあったのはまあ言うまでもないのだけれど、ただこの辺の話を書くとかなり長くなってしまい(やっぱりお金を使うってのは楽しい)パーツの購入記だけで一回分終わってしまいかねないので、秋葉原巡りの話も涙をのんで割愛する(こればっか)、つもりだったけれどまるっきり何も無しではつまらないので、ちょっとだけ書かせてもらうと、ぼくが秋葉原へ行った6月下旬は言うまでもなく、夏のボーナス商戦真っ盛りの人気商品売り切れ御免という時期だったわけで、さすがにぼくもそれなりに警戒し、CPU(Pentium/120)とマザーボードだけは前もって秋葉原のショップに電話をして予約をしておいた。で、Windows World Expoを見終わった22日の夕方秋葉原に回りCPUを予約した「Two Top」という店へ行ったのだけれど、Pentiumをぼくに手渡しながら店のにーちゃん、「足が折れやすいから気をつけてください」なんぞと言うではないか。「ケースにはいってるんじゃないの?」「はいってません」「がっちょーん!」。CPUはふつーは保護ケースにいれて売ってるものなのだけど、この店ではCPUを導電スポンジにさしてエアキャップ(要するに「プチプチ」だ)でくるんだだけで売ってたのだ。300万トランジスタを集積した200MIPSのCPUに対してこんな手荒な扱いが許されるのかっ、とは思ったけれどそんなこと言ってる場合じゃないわけで、何はさておき秋葉原デパートに走り雑貨売り場で適当なプラスチックケースを探したものの、どうもちょうど良い大きさのが見つけられず、うーんと困って結局どうしたかというと、文房具売り場に置いてあったNintendoのトランプを買って中身を抜き、残ったプラスチックケースをエアキャップにくるまれたPentiumの輸送用ケースにした(これがあつらえたみたいにぴったり)のだけれど、Nintedoのケースに納められたIntelのCPUってちょっと笑えるね。え、笑えない? いいけど、さ。
 さすがにこんなドタバタはこれっきりで、あとはまあだいたい順当に買い揃えることが出来たかな(購入品リストは今回はスペースに余裕が無いので次回)。ただマザーボードだけは入荷が間に合わず、結局7月になってから届いたのだけれど、前回書いたTritonチップセット(それもニューバージョンだ)、Pipelined Burst SRAMの2次キャッシュ、CPUソケットがSocket 7と言うスペックはきちんと満たせたのでまあ満足(ただし結局ISA Configuration UtilityつまりICUは手に入らなかった)。マザーボードの入荷が遅れたのは言うまでもなくPipelined Burst SRAMが品薄だったため。実は6月の中旬頃はどこのショップもPipelined Burst SRAMのマザーボードなんか入荷の予定も立たないと言ってたぐらいで、フリップフラップという店だけが6月末から7月初め頃に入荷すると言うので物も見ないで予約した(安定性……)のだけれど、メーカーは台湾のElite社(型版はTS54P-AIO)でBIOSはPhoenix、マザーボードの基盤上に堂々とVer1.00とあるのだけがおっかない(だってファーストロットだよ!)けど、まあわりと作りはしっかりしてる(みたい)かな。あと、さすが秋葉原というべきか、実は6月22日の時点ですでに133MHzのPentiumが店頭に並んでいた(インテルジャパンの公式発表は6月13日!)のだけど、13万円ぐらいしていた(Pentium/120は75000円ぐらい)ので、さすがに(120MHzを予約していなかったとしても)買えませんでした。ぐっすん。
 で、東京から帰ってからマザーボードが来るまでの間、とりあえず購入したパーツ類に不備な物がないかどうかチェック(動作チェックはもちろん出来なかったけど)したのだけど、ほんの2・3年前とは大違いで何かが足りないということはまあまず起こらない(以前は例えばHDのベアドライブには取付用のネジも設定用のジャンパーブロックもなんにもついてなかったけど、今ではちゃんとした店で買えば冊子になったマニュアルまでついてくる)。でもやっぱりノートラブルというわけには行かないんだよなあ、これが。
 今回買った筐体はGateway2000にちょっと似たフルタワー筐体なのだけれど、ケースを開けて中を確かめてみたところ、なんと、電源ユニットと電源スイッチの配線がつながってなあい! 筐体後面に取り付けられた電源ユニットから太めのリード線が4本まとまって伸びていてその末端が圧着端子で処理されており本当なら筐体全面にある電源スイッチの端子に接続されてカバーがかけられているはずなのに、それが宙にぶらあんと垂れ下がってたというわけ。ううっ、これがほんとの「Unplugged」だ。で、しょうがないから電源ユニットに貼ってある説明書きを読みながらテスター片手にペンチで圧着端子をつぶしてNITTOのブチルゴムの自己融着テープでグルグル巻きにしてつないだのだけど、これでほんとにだいじょーぶかなあ? 100VのACだぜ。漏電していきなりどっかーんじゃたまんないよ。電源入れたとたんにPentiumから白煙があがったらどーしよ、ほんと(ったって、そーなったら泣くしかないわな)。
 さて、マザーボードが到着したところで組立にかかる。組立の実際についてはいろいろな本にノウハウが書いてあるので(今ならアスキーで、ぼくが秘かに師と崇める元麻布春男さんが自作マシンによるロードテストをしておられるので興味のある方は是非読んでください)、ここでは余裕も無いので詳しくは書かないけど、給電ケーブルとマザーボード側のコネクタ(給電ケーブルのプラグが2つに分かれているのでさし方を間違えると悲惨な事になる)の対応と、CPUをソケットにさす向きにさえ気をつければ(もっともPentiumの場合はこの心配は無いけど)特に難しいことはないと思う。あ、あと体や服にたまった静電気だけには十分注意が必要なことは言うまでもないか。さらに付け加えると、実は今回購入したTS54P-AIOには給電ケーブルをさすコネクタが2ヶ所あって、一方は従来からの5ボルト動作用、もう一方は3.3ボルト動作用なのだけれど、なんと3.3ボルト用のコネクタに5ボルトの給電ケーブルがさせてしまう! もちろん間違えてさせばスイッチを入れた途端にマシンがあの火花の飛び散る「シービュー号のコンソール」と化して昇天! なわけだけど、これからはこういうマザーボードも増えて来ると思われるので、念には念を入れたい。もっともなぜコネクタやプラグの形状を変えなかったのか、首をひねっちゃうところではあるね。
 で、ケースにマザーボードを組み込んで給電ケーブルをつないでCPUとRAMをさし、グラフィックボード(今回購入したのは結局カノープスのPower Window 868)をPCIスロットにさしたところで、キーボードとディスプレイをつないでとりあえず電源を入れてみる。緊張の一瞬! 幸いにもと言うか当然と言うか、火花が飛び散ることもなければPentiumから煙が上がることもなく、Power On Self Testなどなどを無事こなしたのちOSがないので起動できないというメッセージを表示して停止した。もちろんこの時点ではこれで正常な動作なわけで、もっともやばい部分は無事通過、いやはやほっと一息だ。ただ、マザーボードのCPU周りの設定がPentium/100用になっていたので、電源を落した後ジャンパースイッチをPentium/120用に切り替える。
 後はサウンドボード(Sound Blaster 16)、SCSIホストアダプタ(AHA-2940)、バスマウス用インタ−フェースボードをそれぞれ拡張スロットにさし、HDDとFDDとCD-ROMドライブを筐体に固定したのちインターフェースケーブルや電源ケーブルをそれぞれ結線してしまえば完了である。キーボードとディスプレイをもう一度つなぎ、前もって作ってあったミニマムインストール用(これについては次回説明)のMS-DOSシステムディスクをFDDに入れて電源を投入する。ガラクタ(って事は無いか)の山がついにコンピュータシステムとして起動する、涙無しでは語れない感動の一瞬だ!
 あれ? え、なに? Bootableなディスクじゃない? おかしいなあ。ほら、こっちのマシン(前回紹介した486機)ならちゃんと立ち上がるぞ。もう一度、と。あら、やっぱりだめ? もういっぺん! えー、だめなの? なんだよそれ。フロッピーからブートできないってことは、ま、まさか……。そんなあっ! うっそだろおーっ! うっきゃー!!

草上仁コーナー

 草上仁の長編が2冊でましたね。角川「愛のふりかけ」に青樹社文庫「ウェディング・ウォーズ」。ぼくももう歳を取ったのか「愛のふりかけ」の主人公のモラトリアムぶりには腹が立ったけど、「ウェディング・ウォーズ」の方はまあ(特に前半)面白かった(ただしむちゃくちゃ身につまされたけど)。でもやっぱり食い足りないぞ。SFを書いてください、SFを。あと2冊とも(「お父さんの会社」もはいるな)そうなんだけど、なんでこうも男は情けなくて女がしっかりしてるんだろう。ひょっとすると草上仁の夫婦生活って……。ちゃんちゃん。



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