●天津敏

 天津敏さんといえば、子供時分の怖いおじさんナンバーワンだった。最初の擦り込みは、たぶん<隠密剣士>だったろう。役名は覚えていないが(ネットで検索したら5・6部の風魔小太郎か、7・8部の甲賀金剛のどちらかだと思う)なんだか不気味で怖い人だと思った。次が、<仮面の忍者・赤影>の甲賀幻妖斎(目の上のグリーンのアイシャドウ、細い眉、天津さんのメイクがバリバリでかっこいい)そして、<水戸黄門>第5部の鉄羅漢玄竜と続いていく。水戸黄門も、この第5シリーズは天津さんの役が非常によいスパイスとなって、シリーズ中でも傑作だと思う。悪が際立てば、また、善も際立つのである
 主だったその三役以外でも、時代劇や現代劇まで幅広く悪役をこなされていたので、ある時期はほんとうによくお見かけしていた。最近も、時代劇専門チャンネルなどでよくお見かけする。仕置人に銭形平次…荻島真一さん版の隠密剣士でも敵役であった。79年に58歳という若さでお亡くなりになられたときには、最初の怖いおじさんであった天津さんの死に、いたく衝撃を受けたものである。いつのまにやら、天津敏さんという独自の雰囲気を醸し出される俳優さんに、心を魅かれていたのだなあ…と自分でもびっくりした
 先日、赤影の金目教編をDVDで購入した。やはり、いい。天津さんの演じる敵役には、何とも言えぬ品と色気がある。悪い奴でも、つい一目置いてしまう、そんな悪役なのである。(2003.6.15)
名前 天津敏(あまつ・びん)
生年月日 1921年2月16日・1979年、58歳で死去
主な出演作 <日本侠客伝>(1964)、<赤穂城断絶>(1978)ほか
TV作品も特撮、時代劇、現代劇に関わらず多数出演
MEMO 東宝ニューフェイスから宣弘社のTV出演を経て、東映の映画などで渋い敵役を演じる