ここでは、今年の論文本試験の問題と、考えられる論点を書いてみました。なお、論点は、私が考えられる限りのものであることをご了承ください。
また、私は、解説や答案例を公表するほどの力はないので書いていません。解説や答案例は、予備校等が作ったものを参照してください。
なお、私は、両訴選択なので、法選の科目については問題のみ書いてあります。
●憲法●
【第一問】
地方公共団体が、職員の採用について、日本国籍を有することを受験資格の一つとした場合の憲法上の問題点について論ぜよ。
また、日本国籍を有することを管理職登用資格の一つとした場合についても論ぜよ。
《論点》
・外国人の人権享有主体性
・外国人に公務就任権は保障されるか
【第二問】
住民訴訟(地方自治法第242条の2)の規定は、憲法第76条第1項及び裁判所法第3条第1項とどのような関係にあるかについて論ぜよ。
また、条例が法律に違反することを理由として、住民は当該条例の無効確認の訴えを裁判所に提起できる旨の規定を法律で定めた場合についても論ぜよ。
《論点》
・住民訴訟と司法権の関係
・司法権と法律上の争訟の関係
・事件性の有無
●民法●
【第一問】
Aは、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定して、その旨の登記をしたあと、Cに対し、甲土地を建物所有目的で期間を30年と定めて賃貸した。
Cは、甲と地上に乙建物を建築し、乙建物にDのために抵当権を設定して、その旨の登記をした。その後、Cは、甲土地の庭先に自家用車のカーポート
(屋根とその支柱だけから成り、コンクリートで土地に固定された駐車設備)を設置した。
右の事案について、次の問いに答えよ(なお、各問いは、独立した問いである。)。
一 Bの抵当権が実行され、Eが競落した場合、乙建物及びカーポートをめぐるEC間の法律関係について論
ぜよ。
二 Dの抵当権が実行され、Fが競落した場合、乙建物及びカーポートをめぐるFA間の法律関係について論
ぜよ。
《論点》
・借地権、従物と短期賃貸借
・附合と従物性の判断基準
・抵当権の効力
【第二問】
多数当事者間の債権関係において、複数の債務者全員を連帯債務者とするよりも、一人を主たる債務者とし、その他を連帯保証人とする方が債権者に
有利であるという考え方がある。この考え方について、契約の無効・取消し、債権の存続、譲渡及び回収という側面から論ぜよ。
《論点》
・連帯債務と連帯保証の効力(契約の無効取消・時効中断・免除・債権譲渡通知・債権回収について)
●刑法●
【第一問】
学生の甲と乙が深夜繁華街を歩いていたところ、一見してやくざ風のAが、甲に因縁をつけ、甲の胸ぐらをつかんで付近の路地に引っ張り込み、
ナイフを甲に突き付けた。甲と乙は、身の危険を感じ、こもごもAの顔面を殴って路上に転倒させ、ナイフを奪い、これを遠くに投げ捨てた。
甲はその場から逃げようとしたが、乙は、Aが転倒したまま「待ちやがれ。」と怒鳴って右手で上着のポケットを探っているのを見て、
Aがまた刃物を取り出そうとしているものと勘違いし、Aの腹部を数回力まかせに蹴りつけた。その間、甲は、乙を制止することなく、黙って見ていた。
Aは、乙の暴行により、すい臓破裂の傷害を負って死亡した。
甲及び乙の罪責を論ぜよ。
《論点》
・過剰防衛(追撃行為)と共同正犯の成否
【第二問】
甲は、たまたま居合わせた妻乙の面前で、隠し持っていたけん銃を用いてAを射殺した。甲は、殺人罪の訴追及び処罰を免れる目的で、実弟である丙に対し、
犯行に使ったけん銃を手渡し、身代わりとなるよう依頼して警察に出頭させた。一方乙は、警察から参考人として事情を聞かれた際に、
「確かに丙がけん銃を発射しAを殺害したところを見ていました。」と供述した。
甲及び乙の罪責を論ぜよ(特別法違反の点をのぞく。)。
《論点》
・犯人による犯人隠避罪の教唆犯の成否
・親族による犯人隠避罪の成否
・証拠偽造罪、虚偽告訴罪の成否
●商法●
【第一問】
株式会社の取締役の職務執行に対する監査役による監査に関して、取締役会による監督と比較して、その範囲及び方法について論ぜよ。
《論点》
・監査役の監査と取締役会の監督(意義・範囲・方法)
【第二問】
商人Xは、商人Aに対して、Aが営業上使用する機械を、代金の弁済記を納品の6ヶ月後とする約定で売却して引き渡した。
その際、Aは、売買代金債務を担保するため、Aを振出人、Aの取引先Yを受取人、代金債務の弁済期を満期とし、Yの裏書のある約束手形を、Xに交付した。
ところが、右機械には瑕疵があったので、Aは、Xに対して、満期の数日前に、売買契約を解除する旨の意思表示をした。
(一) Aの契約解除は、有効か。
(二) 右解除が有効であるとしたとき、Xが遡及権を保全した上、Yに対して手形金を請求した場合、Yはこれに
応じなければならないか。Yが裏書だけをしたときと、売買代金債務の保証契約もしたときとで違いはあるか。
《論点》
・526条適用の成否
・隠れた手形保証における人的抗弁
●民事訴訟法●
【第一問】
原告の法律上及び事実上の主張に対して被告がする陳述の態様とその効果について説明せよ。
《論点》
・法律上の主張(認める場合、争う場合)
・事実上の主張(主要事実についての主張、間接事実、補助事実についての主張)
(自白・否認・不知・沈黙)
【第二問】
甲は、乙の不法行為により2,000万円の損害が発生したと主張し、そのうち500万円の支払いを求める訴えを提起した。
乙は、甲の主張を争い、請求棄却の判決を求めた。
裁判所は、因果関係が認められないとの理由で、甲の請求を棄却した。甲は、この判決確定後に残額1,500万円の支払いを求める訴えを提起した。
この場合における訴訟法上の問題点を論ぜよ。
《論点》
・一部請求と残部請求の可否
・判決理由中の拘束力の可否
●刑事訴訟法●
【第一問】
警察官が、暴力団組員同士の乱闘事件による傷害の準現行犯人として甲を公道上で逮捕した後、自動車で約3キロメートル離れた警察署に連行し、
逮捕から約1時間後に同警察所において、甲の身体及びその携帯していたバッグを捜索することは許されるか。
《論点》
・逮捕に伴う無令状捜索(逮捕後)
(時間的・場所的接着性の有無)
【第二問】
甲に対する殺人被告事件において、乙が、「甲が殺すのを見た」と丙に語った旨の検察官面前調書は、どのような場合に証拠能力が認められるか。
それぞれの場合の要件について述べよ。
《論点》
・再伝聞における検察官面前調書の証拠能力の有無321条1項2号の要件)
●破産法●
【第一問】
自然人が破産宣告を受けた場合の自由財産と破産債権者との関係について論ぜよ。
【第二問】
会社に長期間勤務したAがローンの返済に窮して破産宣告を受けた。
この場合において、次の(一)から(三)までについて、破産財団に含まれるかどうか論ぜよ。
(一) 退職金債権
(二) 交通事故による後遺症に対する傷害保険契約に基づく保険金債権
(三) 日本国外に所有している別荘
●刑事政策●
【第一問】
財産刑の刑事政策的意義を説明し、その問題点と解決のための方策を論ぜよ。
【第二問】
我が国における女子の犯罪・非行の現状と特質を述べ、その刑事政策的対応について論ぜよ。
●国際公法●
【第一問】
A国は、B国によるC国侵攻が切迫しているとの判断の下、B国に対する空軍と海軍による示威と封鎖を行った。
その直後、国際連合安全保障理事会は、BC国間に、平和に対する脅威が存在するとし、すべての国に対して、この脅威を増大させないよう、
勧告する決議を採択した。この決議後、A国は、侵攻が一段と切迫したとして、B国の基地を攻撃した。
A国の一連の行動は、A国の立場から、どのように根拠付けられるか。
なお、関係国は、すべて、国際連合の加盟国であること、及び、C国から、A国に、いかなる要請もなかったことを考慮せよ。
【第二問】
国内裁判において未承諾国家及び未承諾政府はどのような扱いを受けるか、その行為の効力に対する批判に言及しつつ、論ぜよ。
●国際私法●
【第一問】
先決問題は本問題の準拠法所属国の国際私法による、との見解について、例を挙げて論評せよ。
【第二問】
X女は甲国在住の甲国人であり、Y女は日本在住の甲国人である。Xは、その夫の甲国人AとYとの日本における不貞行為が原因となってXA間の婚姻が破綻するに至った、
として、Yに対し慰謝料請求を請求する訴えを日本の裁判所に提起した。Xの請求の準拠法は何か。
●労働法●
【第一問】
就業規則と労働契約の関係について論ぜよ。
【第二問】
バス会社であるA会社では平成9年度のボーナスの支給額をめぐって労使の交渉が行われていたが、交渉が行き詰まった状況の下で、
組合は抜打ち的に貸切観光バスの長距離運行業務に従事する組合員に対し、早朝2時間の時限ストを指令した。
そのため、A社では予定されていた貸切観光バスの長距離運行にかかわる業務について代替者の手配がつかず、
旅館のキャンセル料の負担等を含めて数百万円の損害が発生した。組合は早朝2時間の時限スト終了後、車両整備業務に従事する旨A社に通告していたが、
A社は時限スト終了後の右組合員の就労を拒否するとともに、スト当日の8時間分の賃金をカットした。
さらに、右の抜打ちストを違法であるとして、組合員及び右ストを指令した組合三役を相手取って損害賠償を請求した。
右賃金カットは有効か。また、損害賠償請求は認められるか。
●行政法●
【第一問】
違法な受益的行政処分の職権取消しは、どのような場合に許されるか。
【第二問】
許認可の申請に関し、次のような場合に、処分に取消原因たる瑕疵があることになるか。
1 行政庁が、申請に不備があるとして、補正を求めることなく直ちに申請拒否処分をした場合
2 行政庁の申請拒否処分の理由の記載が不十分であったが、相手方は拒否の理由について十分に知っていた場合
3 行政庁が、当該申請に係る行政手続法第6条所定の標準処理期間を過ぎてから申請拒否処分をした場合