Summicron R 50mm f2.0の作例

ズミクロン50mmは、M型用もR型用も、とてつもなく高性能なレンズだ。開放f値を2.0に抑えたため、無理のない設計が可能だったのだろう。現行Rレンズの中で最も安価だが、これ1本でRレンズの真髄を味わえる。より高価なズームレンズを買うより満足度は大きい。
R用ズミクロン50mmには2つのタイプがある。初代ライカフレックス登場時に発売された5群6枚タイプ(前期型)と、R3の時代にリリースされた4群6枚タイプ(後期型)である。前期型はドイツ製、後期型はカナダ製だが、現行の後期型ズミクロンはすべてソルムスで製造されている。いつからドイツ製に戻ったのかは不明。また前期型は先細のデザインで、エルマリート35mmと共通の金属製フードを取り付けるようになっている。フィルターはリテイニングリングでシリーズVIを挟み込む。後期型は引き伸ばし式のフードが鏡胴に内蔵され、フィルターはE55のネジ込み式だ。
城主が所有しているのは前期型の純正3カム。義父が「3カムのズミクロンなら2本あるから」と譲ってくださったもの。西の方角には足を向けて寝られない。
アサカメのテストだと、球面収差はごくわずかな過剰補正だが、膨らみは小さく、開放から良好な描写を約束している。解像度は絞り開放時、中心でミリあたり200本、平均140本。f5.6に絞ると、中心で250本、平均で152本に向上する。球面収差が過剰補正のため、絞ると描写は向上する。残念ながらMTFのデータはないが、実写の感想では、M用のDRズミクロン(7枚玉)と比較してコントラストは高い。作例の市松人形のように、漆黒の黒髪が黒く潰れてしまうのはやむを得まいが、シャドーの諧調などはなだらかに表現され、立体感がある。
色再現は、この個体はやや黄色による癖がある。しかし、数種の異なるコーティングがあるそうで、ひと括りには言い切れない。
作例はf4でシャッターを切っている。