Elmar 65mm f3.5の作例

ヴィゾフレックス用エルマー65ミリは1958年にリリースされた、カナダライツ製のレンズである。レンズヘッド単体では役に立たず、別にユニバーサルフォーカシングマウント(OTZFO)が必要となる。このフォーカシングマウントはエルマリート90mmf2.8(初期型11129)や、延長チューブ(OTSRO)との併用でエルマー135mmf4(11850)、ヘクトール135mmf4.5(HEFAM)のレンズヘッドにも使用できるため、1つ持っていればけっこう重宝する。
初期モデルは梨子地のクロームシルバー仕上げでローレットの美しいレンズだが、1970年にローレットが簡略化されたブラッククロームの鏡胴となり、製造はドイツ・ウエッツラーで行われるようになった。
エルマー65ミリはレンジファインダー機の弱点であるマクロ撮影を可能とし、ヴィゾフレックスII型、もしくはIII型と組みあわせて疑似一眼レフ的に使用する。ところが、ライツ社から一眼レフのライカフレックスが登場した後、ライカフレックス、Rシリーズにこれらヴィゾ用レンズを使用するためのマウントアダプター(14127、14167)が発売された。このアダプターを介してRシリーズに使用すれば、プリセット絞りながらTTL測光によるAE撮影が可能となる(R6はマニュアル露出)。本来ならヘリコイドの繰り出し量により露出倍率を考慮する必要があるはずだが、TTLが使えればそうした痛痒はない。
レンズ構成はエルマーの名の通り、3群4枚のテッサータイプ。絞りは1枚目と2枚目の間にあり、10枚羽根をもつ。
描写は開放から十分なシャープネスがあり、f5.6以上に絞れば、さらに緻密な線を描出する。とはいえ、絞ってもコントラストの高いカリカリした絵柄とは無縁で、しっとりした柔らかみのある描写が得られる。
作例は開放のf3.5で撮影したもの。ちょっと二線ボケっぽいのは、トリプレット(変形)タイプ特有の非点較差が完全には解消されていないせいだろうか。お妃の生まれ年のラフィットである。