DR Summicron 50mm f2.0 (Near Focus)

レンジファインダーカメラの欠点の一つは近接撮影が困難なことだが、このDRズミクロンは二段切換式のヘリコイド&カムと補正メガネでそれを見事に克服した。最短撮影距離は48cmだから、一眼レフ標準レンズ並みに寄れる。誰が考えついたのか、どういう理屈でそれが可能なのか、深くはわからないが発明者に拍手喝采だ。
「新M型ライカのすべて」(朝日ソノラマ刊・中村信一著)によれば、レンズ構成は通常のリジッドタイプと変わらず、「物理特性のよいもの」をDRタイプに回したのではないかと推察しているが、この人の著書は憶測が多く、また間違いも散見されるのであまりあてにはしていない。ただ、ライカの標準レンズの基準焦点距離である51.6mmのレンズヘッドをDRタイプに優先的に回している可能性はある。近接撮影が目的だけに、ボディ側の距離計との整合性が一層問われるからだ。ライカの標準レンズの焦点距離が、52mmだったっり、51.8mmだったりするのは、手工業だった時代には当たり前のことだった。
作例は今年、雨の季節を前に萌絵ちゃんに買ってあげたゴム長と傘。最短撮影距離の48cm、絞り開放でピントはピタリ、右側のキティに来ている。パララックスもよく矯正されている。

DR Summicron 50mm f2.0 (5m to subject)

これはすでにギャラリーにも掲載した写真。ギャラリーはネガフィルムからのスキャンだが、これは新宿のラボでプリントしてもらったものをフラットベッドスキャナーで取り込んだ。モノクロ256諧調では微妙なトーンが出ないのは残念だ。プリントでは左後輪のトレッドパターンや、リアエンドの反射も美しく出ている。雲は覆い焼き。