南アルプス南部(光岳〜聖岳)縦走
久し振りの南アルプス南部。前回は丁度4年前のこの時期、聖岳の真正面にある笊(ザル)ヶ岳だった。その時も標高差2000mを越す急登の山であったが、今回もそれに劣らずタフなコース。880mの易老渡(イロウド)から2591mの光(テカリ)岳へ、そして易老岳(2354m)、茶臼岳(2604m)、上河内岳(2803m)と縦走し、最後に聖岳(3013m)に登頂したのち一気に2100mを下るという長丁場の山行であった。
いずれにせよ、南アルプスは奥深くアプローチも長い。そして山は大きくどっしり構え、歩く時間も長い。
人は少なく静かな山で、自然がたっぷり残された素晴らしい山である事は間違いない。
当初はテント泊を予定し、それなりの荷物の重さにフウフウ喘ぎながら登り、テン泊寸前に大雨に遇い全身ずぶ濡れ。
致し方なく素泊まり(3000円)の山小屋に切替え、濡れた身体を乾かすハプニングもあった。

展望イメージmap(クリックすると拡大します)

【山  域】南アルプス南部
【山 名】 光岳(2591m)、易老岳(2354m)茶臼岳(2604m)、上河内岳(2803m)、聖岳(3013m)
【登山方法】テント泊
【行程】
●H15年9月12日(金)
 千里中央(21:50)ー西名阪ー東名阪ー中央道ー飯田ICー易老渡2:45(仮眠)
●9月13日(土)
 易老渡8:10〜易老岳14:05〜光小屋17:25(私とどんかっちょ!さんは、小屋泊まり。郭公さんはテント泊)
●9月114日(日)
 光岳ピストン6:40〜易老岳8:35〜茶臼岳11:55〜上河内岳〜聖平小屋17:15(私とどんかっちょ!さんは、小屋泊まり。郭公さんはテント泊)
●9月114日(日)
聖平4:10〜聖岳6:50〜便ヶ島13:20〜易老渡=かぐらの湯温泉=飯田IC=中央道=名神吹田IC=帰宅10:00
【メンバー】
 郭公さん ・どんかっちょ!さん、・森の音、途中、聖平でRINさんと合流、さらにDOPPOさんと易老渡で合流
H15年9月12日(金)
この日は丁度台風14号が沖縄に接近、その後進路を北にとると予報がされていた。些かヤキモキさせられる天気ではあるが、台風一過を吉と信じて21:50分に千里を出発。当初4名の予定が、RINさんが台風の悪天を恐れ3名になった。
飯田ICを下車し、一路易老渡(いろうど)までの深夜の山道が続く。この間雨も降らず時折月も出ていた。飯田から約2時間弱、南アルプスは懐が深い。易老渡には既に20台程駐車して仮眠をとっていた。すぐ仮眠用にテントを出して寝たが2〜3人用テントだと少し窮屈であった。夜明け頃パラパラと雨が振出したので、寝袋が濡れると嫌なので私だけ車で仮眠。ウトウトとしているとどんさんにコツコツとノックされ目覚める。すぐ朝の行動食を食べながら出発の準備。出発は8時10分であった。
易老渡駐車場
H15年9月13日(土)
易老渡駐車場手前の吊り橋を渡るとすぐ樹林帯の急登が迫ってきた。何やら嫌な予感。あの笊ヶ岳の登りに似ている。「まあ〜笊ほどではあるまい。暫くすると緩やかになるわい」と思いながら登っているが、一向に変わらない。「ヤレヤレ荷物も重いし、適当に休息とりながら登れば何時かは着くワイ」。二人は快調みたいだ。段々遅れがちになる。GPSという強い味方もいるから安心。「あれ、おかしいな〜?GPSは間違いなくこの方角を指している。なのに道が狭くなりガレ場になった??どうも地形からして側道を歩いているようだ。では引き返してみよう。あ!こんな処に赤テープがあったのか」。どうやら右に曲がるのを直進したようだ。二人は待ってくれていた。「ゴメン、ゴメン。道を間違った〜(^ ^ゞ ポリポリ」
つまり、GPSの進路は間違いないけれど、事前にポイント作成するおり粗めのルート設定するから、その誤差を充分読取れなかったのだ。(^ ^ゞ ポリポリ
長い長い登りであった。何と6時間掛けて易老岳(2354m)に到着。実に1500mの高度差を登った勘定だ。
樹林帯を登る 易老岳のピーク。カメラが壊れた郭公さん。

ここから、三吉ガレの間は緩やかな立ち枯れしたシラビソの樹林帯が続き、ほっと気分転換できた。が、また三吉平を過ぎた頃から涸れた沢すじを登るのだが、これまた疲れた身体には応える。事前に同じ山仲間からの情報で聞いていたが、流石噂に違わず厳しい登りだ。。数本の休みを取りながらユックリではあるが登った。どんかっちょ!さんは、私より6歳も年上なのに元気そのもの。健脚とは前から知っていたが、まざまざと見せつけられた。郭公さんは、少し私に合わして頂いたのか、ゆっくり登ってくれた。
実はこの時、「次回南アルプスに登る時は小屋泊まりにしよう、約18キロの荷物を持って長時間歩く体力が落ちているしな〜・・・・もう歳やし〜・・・・・・」。疲れた時は、あれやこれやと色々考える。そう考えながら登ると何時の間にか山頂に立っている。これが私のスタイルや!山頂に着けば、そんな辛い事はすぐ忘れてしまう。
途中、静高平での水場は涸れていた。

17時25分やっとこさ、光小屋に着いた。今日はここでテント泊。荷物を降りし、郭公さんのテント設営。2〜3人用テントなので、少し窮屈かも。荷物はテント内に入れられないので、私が持っていたツエルトにまとめて収納すればよい。周りには4張りのテントがあり、夫々食事をしていた。
光小屋のテント場 光小屋

さあ〜!と思ったそのとき、雨が振出しザアーと土砂降りに変身した。あれよあれよと云う間に全身ずぶ濡れ。どんさんも同じ状況。郭公さんは、その時既にテント内だったので、事無きを得る。こうなれば、濡れた身体で狭いテントで食事して寝るのも辛い。明日の行動にも差支える。急遽、どんさんと私は、小屋泊まりにした。素泊まり3000円。郭公さんは、テントで寝るとか。
濡れた身体を乾かすには小屋は有難い。小屋も混雑していた。多分テントから切替えた人もあるかも?
そこで持参の食料で食事をしている間に身体も乾いた。消灯は7時30分。慌しい食事と寝床確保に時間がすぐ経過。
充分な間隔の寝床は確保出来なかったが、兎も角足を伸ばして寝れさえすれば有難い。
家に電話しようと思ったが、小屋には電話もなく、携帯も通じず。、まるで下界から隔離されたような気分だった。
トイレも外で、従来のボットンとバイオの洗浄トイレが2台設置されていた。
疲れているけどすぐ寝れなかった。真夜中に喉が乾き、枕元に置いたペットボトルの水を飲みまた寝る。
外では台風の影響か、かなりの強風が吹き荒れていた。

H15年9月14日(日)
寝たのか寝てなかったのか分らないうち、早立ちの人がゴソゴソ動き出す音にフト目が醒める。時間を見ればもう4時過ぎ。
山の朝は早い。昨夜、郭公さんと本日の起床集合は、6時にテント前と約束していた。今日は、天気が良さそうな予感がする。
外は段々と明るさが増し、少しガスッているが天気はまずまずであろう。小屋の食堂内でのコンロ使用がOKなので、コーヒーを飲むためお湯を沸かし、パンとカロリーメイトを食べる。水は小屋専用のペットボトルが多数置いていたので、それを拝借。
昨夜の疲れもあまり残らず、筋肉痛の痛みもなく今日は良い感じだ。
6時過ぎ、郭公さんのテントに行くと既に食事も終わり準備万端。昨夜強風に悩まされ、テントの通気候からも雨水が侵入して大変だったとか。ヤレヤレ昨夜3人一緒にテント泊しなくて良かったな〜(^ ^ゞ

光岳山頂まで空身でピストン。小屋から往復30分で行ける。南アルプス南部の名峰に相応しく落ち着いた雰囲気がある。山頂は少し樹林に囲まれ展望が利かないが、今日歩く茶臼岳、上河内岳、聖岳の縦走コースはきっちり見えた。
光(てかり)岳山頂 是より茶臼、上河内、聖岳の峰々を縦走する

今日の行程は長い。約11時間。昨日の易老岳まで引き返す事になるが。光岳も早々に終了させテン場を6時40分出発。光小屋を北に少し歩くと草原状が広がり木道が設置されている。ここは草原状の静高平と云われコイワカガミなど高山植物が多いとか。水場もあるが、昨夜も確認したが涸れていた。
静高平の木道。後方光小屋 キノコ雲に向かって

今日は長丁場の為、イザルヶ岳はパス。お二人は少し残念がっていた。何故なら富士山を見る事ができるから?
昨日歩いた易老岳迄のコースは熟知していたせいか疲れも感じず順調だ。樹林帯の様子や変化など余裕を持って観察できた。それにしても素晴らしい晴天に恵まれた。やがて8時35分易老岳到着。ここから先は我々にとって未知のルートだ。

易老岳から希望峰まで稜線歩き。途中眼前に聖岳の勇姿がシラビソの原生林の間から見えるたびに感動が甦ってくる。
途中お花畑もあったが、殆ど時期が終わり枯れていた。仁田池への分岐の処で小休止。この間郭公さんは濡れたテントを広げ乾かしていた。暖かい日差しと涼しい風が心地よく、ついウトウト・・・・。茶臼岳の登りは昨日に比べれば大した事なかった。
茶臼岳11時55分。少しガスがかかり視界はよくなかった。
シラビソの木々の間から聖岳が見える 正面の茶臼岳を目指して

茶臼岳を下り亀甲状土の草原に差し掛かったところでDOPPOさんが稲荷寿司を食べながら待っていた。大阪を1日遅れで出発、逆コースを歩いて来たDOPPOさん。何処で遇うか楽しみだった。やはり俊足だ。小屋泊まりで荷物も軽いとはいえ、昨夜大阪を出発して今日ここまで歩いてこれたというのは流石である。今日の泊まりは茶臼小屋とか。あと僅かだ。明日は光岳に登り、我々と駐車場で合流する時間差は如何に?ゆっくりと雑談したいのは山々なれど、残念ながら20分程でまた分れる。
ここの草原から見える上河内岳は実に綺麗な形をしていた。後ろを振り返るとDOPPOさんが手を振っていた。
DOPPOさんと遇う 上河内岳を目指す重装備隊

上河内岳登りは岩場となり、ハイマツが出現した頃沢山の雷鳥と遭遇。5〜6匹はいただろう。全然逃げず、色んな鳴き声を発していた。「おいおいどけて頂戴。踏みつけるよ〜!」
雷鳥一家 奇岩竹内門

上河内岳山頂は、コース上にザックをデポして往復15分。山頂は少しガスっていたが、時折晴れ間から双耳峰をなす笊ヶ岳が顔を出した。
これより南岳に下り、更に聖平小屋まで長い下りになる。足にマメが出来たようだ。最初は痛みも少なかったが段々痛くなる。
でもあと僅か、我慢しよう〜。長い長い下りに疲れも出てきた。「まだか〜〜!」
やっと木道の道が見えてきた。17時15分、聖平小屋到着。
DOPPOさんからRINさんも来ていると聞いていた。旧小屋前のテン場に移動し「お〜い、RINちゃん〜!」と声を出す。すると奥のテントから手がニュ〜と出てきた。「あっ、いたいた!」
台風で急遽中止したつもりが翌日カンカン照り。じっと家でいると却ってストレス堪るので、四日市から堪らず追いかけてきたという。しかもテントを持って5時間30分でここまで登ってきたというから女性とは云えこれまた凄い。
私とどんさんは、今夜もこの小屋泊まりにした。郭公さんとRINさんは夫々持参のテント。
食事と宴会は、昔ながらの旧小屋でする。水場も目の前。トイレも旧式とバイオの水洗式もあり。やはり電話もなく携帯も通じない。小屋代も素泊まり3000円。旧小屋には山屋さんが15人ほど泊まっていたが広いので楽々であった。
色々四方山話に花が咲き、ひとしきり飲んだ頃お開きにする。明日3時起床の4時出発である。

H15年9月15日(月)
3時に目覚ましがなる。ゴソゴソ仕度をしているとやはり同じように早立ちの人が起き出す。
昨夜作っていたアルファー米に水をいれ柔らかく溶く。オカズも沢山残っていた。
食後4時にテントに行くと、お二人も準備が終わっていた。
歩き出してまもなく昨夜のマメが痛んだ。「こりゃ〜大丈夫かな〜」と思っているとRINさんがバンドエードを出してくれた。取敢えず薊畑(あざみばた)分岐まで登る。助かった〜m(__)m 空には星がキラキラと輝いていた。RINさんのペテルギウス、シリウスがこれ・・・と星の星座を説明していたが、残念ながら私は足の治療に専念しゆっくり見る事できなかった。そして荷物をサブザックに切替えその他はデポする。
荷物も軽くなったしマメの痛みも和らいだので何とか3人に付いていける。聖岳まで登りで約3時間弱、かなり急勾配であった。5時を過ぎると空も明るくなりヘッ電も要らなくなる。今日も素晴らしい天気に恵まれた。
小聖平に着く手前でふと頭を上げると正面に富士の山がくっきり山頂部分が見えた。「おお〜富士だ!」そうこうする内ご来光の光が逆光に眩しく目に飛び込んできた。5時32分であった。
小聖平から見える山容は何とも云えぬ迫力がありご来光の光と富士の山、笊ヶ岳が綺麗だった。昨日から歩いてきた光岳からズ〜ット上河内岳までクッキリ見渡せ、その長さに感動を覚える。よくぞ歩いてきたものだ!聖岳のドンと構えた岩肌と大きさに圧倒される。
ここから聖岳山頂まで近くに見えて中々接近してこない。丁度北アルプスの槍ヶ岳の登りと同じようだった。ジクザクの登りを繰り返しやっと頂上に到着。6時50分。
聖岳山頂(3013m) 富士山とご来光

「うわ〜・・・・・!」何と360度の絶景が。流石3000m峰の展望は抜群だ。遠くまで山並みがくっきり見える。目の前に赤石岳、兎岳、その後ろに中央アルプスが。その右後方に北アルプスの槍ヶ岳が見える。東に笊ヶ岳と後方に富士山。南に光から上河内岳の縦走路が・・・・・。
いつまで見ても見飽きたらない。正面に奥聖岳が見える。歩いて25分と地図に記載されていたので行く事にした。
怪獣の背のような稜線を歩いているようだ。適度に岩がゴツゴツあるかと思えば平坦な個所もある。
奥聖岳から見ると悪沢岳がよく見えた。私は南には未だ未踏峰の山も多いので機会あったら是非登りたいものだ。
南アルプスは北と違い雄大でどっしりした山が多い。人も少ないので益々気に入った。
手前赤石岳と後方悪沢岳の勇姿

7時40分に下山開始。
9時に薊畑分岐。
野猿のアトラクション。籠に乗り沢を渡る
これからまた重い荷物を下げて西沢渡まで。これまた長い長い下りであった。いつまでも続く原生林。
苔むした原生林が南アルプスを象徴しているかのようだった。
西沢渡では、野猿のアトラクションが楽しみだった。テレビとか本で見た事あるが乗るのは初めて。
荷物を籠に乗せ自分も乗る。沢に渡されたロープを両岸で引っ張る。一人でも可能。

便ヶ島まで林道歩き。何の変哲ない道も疲れた足には長く感じられた。やっとこさ広場駐車場に到着。
13時20分。やっと着いた〜\(^O^)/
4人で固い握手。
RINさんの隣にDOPPOさんの車があった。未だ着いていないのだな〜。
本来我々の駐車した易老渡まで歩いて30分かかるが、RINさんのお蔭で車で移動。
易老渡に着いた時、何とDOPPOさんがこちらを向いて歩いてきた。
まるで計ったようなジャストタイミング。流石DOPPOさんもお疲れ気味だった。

この後、5人が帰りの道中にある「かぐらの湯」で汗を流す。
帰路に入って中央道を走っていると阪神タイガースが逆転でマジック2となったと知った。それから2時間後横浜がヤクルトに勝つと優勝が決る。ラジオの電波状況が悪く耳を凝らして聞く。横浜勝利で阪神優勝!とアナウンサーの絶叫が聞こえてきた。
星野監督の優勝インタビューに思わず目頭が熱くなった。18年振りの優勝であった。

同行して頂いた方々のHPです    *郭公さん 光から聖へ−南アルプス南部縦走
                      *どんかっちょ!さん 南アルプス南部光から聖岳縦走
                       * DOPPOさん 上河内岳から光岳
                       

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