2003年 7月

2003年7月27日(日)   NEDO「新エネルギー講座」より

「日本のエネルギー政策と今後の展望」  近畿経済産業局 資源エネルギー部 エネルギー対策課 村木哲男課長

世界のエネルギー需要の現状と見通し。
1.世界のエネルギー需要はアジアを中心とする発展途上地域におけるエネルギー需要の急速なのびにより2030年には2000年比で66%増加する。内4割はアジア地域。
2.世界のエネルギー需要に占めるアジア地域のシェアは2000年の28%から2030年には34%に拡大。特に中国ののびが大きく、アジア全体の増加の40%を占める。
3.エネルギー需要が拡大する中、各地域の石油の輸入依存度は高まり、特にアジア地域の依存度は2020年には8割を越える見込み。

世界のエネルギー供給の現状と見通し
1.世界のエネルギー供給は、石油が約4割、石炭、天然ガスがおのおの約1/4と、化石燃料が太宗を占める。
2.長期的には天然ガスのシェアが2000年の23%から2030年には28%に増大することが見込まれるものの、石油が引き続きエネルギー供給の中心を占める基本構造に変化はない。
3.エネルギー供給の中心を占める石油は、他に比べ可採年数が少ないことに加え、その賦存が中東に集中し、長期的には中東の石油供給比率がさらに高まることが予想される。

我が国のエネルギー供給の動向
1.我が国のエネルギー供給は国内炭が60年代に競争力を失う中、これを石油が代替し、石油危機前には一次エネルギー供給の約8割と、供給の太宗を占めてきた。
2.70年代の二度に亘る石油危機を経て、海外炭、天然ガス、原子力等脱石油政策の下、石油代替エネルギーの導入が促進され、石油への依存度は約5割と大きく低下。(77%(73年度)→52%(00年度))
3.90年代に入り、エネルギー供給面における効率化の要請が高まってきたが、原子力・再生可能エネルギーの供給制約等があるため、経済成長に必要なエネルギー供給の太宗は依然化石燃料となっている。(化石燃料の依存率85%(90年度)→83%(00年度)、化石燃料供給量のGDP弾性値0.4(80年代)→0.9(90年代))

我が国のエネルギー需要の動向
1.経済活動にとって必要不可欠なエネルギー需要は、60年代の高度経済成長と連動して大きく増加。
2.70年代から80年代に置いては、70年代に起きた2度の石油危機を経て、産業部門を中心に国民各層の省エネ努力等により省エネと経済成長を同時達成(エネルギー消費のGDP弾性値は約0.5。特に産業部門の消費量は第一次石油危機を下回る水準で推移。
3.経済的低迷に直面した90年代は、エネルギー消費の伸び率を上回る状況(同弾性率は1.14)これは、快適さ・利便性を追求するライフスタイルの浸透等により、民政・運輸部門を中心に一貫して大きく伸張したため。

地球温暖化への対応
気候変動枠組み条約の発効(1994年)、その下での京都議定書の採択(1997年)により、我が国は、温室効果ガスを1990年比6%削減することが求められ、今後、地球温暖化対策推進大綱(2002年)に基づきエネルギー・環境政策等各般に亘る施策を展開。他方、地球規模での取り組みの実効性確保のためには、排出量の大きな米国、中国等が参加する新たな枠組みづくりが大きな課題

エネルギー期限のCO2排出量
1.エネルギー起源のCO2排出量はエネルギー消費の拡大と伴に一貫して増加。経済的に苦況に直面した90年代に置いても約10%増加。特に、製造業を中心とした産業でエネルギー消費がほぼ横這いに止まる中、豊かさを求めるライフスタイル等を背景に、乗用車等の運輸・旅客分野、家庭・業務といった民生分野の増加が顕著。
2.効果的な対策が取られずにエネルギー消費の拡大が継続するならば、2010年度のエネルギー起源 CO2排出量は、90年度比で20%以上増加するとも見込まれている。
3.他方、京都議定書の6%削減目標を達成するためにはエネルギー起源CO2を90年度レベルまで規制することが必要であり、今後、民生・運輸部門を中心に一層のエネルギー消費の合理化が求められる。

今後のエネルギー政策
 温室効果ガスの約9割がエネルギー起源のCO2。これを2010年度において1990年度と同水準に規制するために、需要面では、民生・運輸部門を中心とした省エネの徹底と、供給面では、新エネ・原子力の導入促進と化石エネルギーの」燃料転換を推進。また、各種技術開発等の環境対策強化の観点から、歳出面におけるエネルギー特別会計のグリーン化を進める。

我が国のエネルギー政策の当面の課題と対応
1.安定供給の確保
 エネルギー自給率が約20%と、諸外国と比べ海外依存度が格段と高い脆弱な供給構造を是正するため、エネルギー供給源の多様化等安定的エネルギー供給確保を着実に推進。
2.環境への適合
 温室効果ガスの約9割はエネルギー起源のCO2であり、エネルギーと環境は一体不可分。エネルギー・環境政策の推進により、2010年度のエネルギー起源CO2排出量を90年度レベルまで抑制。
3.市場原理の活用
 経済のグローバル化進展の中、経済発展の基盤であるエネルギーの一層の効率的供給を実現するため、自由化等の規制改革を引き続き推進。

新たな長期エネルギー需給見通し
 エネルギーセキュリティ−の確保、各エネルギー間ベストミックスの達成、環境制約への対応等を踏まえた、新たに目指すべき2010年度における環境調和型のエネルギー需給全体の姿は、以下の通り(2001年7月総合資源エネルギー調査会答申)
 需要面では産業部門では大幅な削減、民生部門は持続的な増加となり、最終エネルギー消費全体は、現状を若干下回る程度。供給面では石油は2010年度の供給量が現状を下回る水準まで低減。石炭は延びを抑制。天然ガスは現状を上回る供給量を達成。原子力は発電所10〜13基の増設を実現し現状に比べ大幅な伸びを達成。新エネ等では官民の最大限の取り組みにより現状の約3倍の供給量を達成。

新エネルギー法による工場・事業場対策
平成14年度の省エネルギー法改正において、エネルギー消費の伸びが著しい民生業務部門におけるエネルギー管理の強化。第一種特定事業者ではエネルギー管理士の専任、中長期計画の作成・提出、定期報告。第二種特定事業者ではエネルギー管理員の専任、定期報告。

今後の省エネルギー対策の効果
5,700万kl。うち産業部門2、050万kl、民生部門1,860kl、運輸部門1,690lkl、分野横断対策100万kl。我が国の全家庭の年間総エネルギー消費量5,500万klを上回る量に相当する。

新エネルギー
新エネルギーとは、実用化段階にあるが経済性に制約があり十分に普及していない、太陽光発電、風力発電、太陽熱利用、雪氷熱利用、バイオマス発電、バイオマス熱利用、バイオマス燃料製造、廃棄物発電、廃棄物熱利用、廃棄物燃料製造、温度差エネルギーおよびエネルギー新利用形態としてクリーンエネルギー自動車、天然ガスコジェネレーション、燃料電池を言う。

新エネルギー導入の意義
新エネルギーは、二酸化炭素の排出が少ないこと等環境へ与える負荷が小さく、資源制限が少ない国産エネルギー、または石油依存度低下に資する石油代替エネルギーとして、エネルギーの安定供給の確保、地球環境問題への対応に資することから、持続可能は経済社会の構築に寄与するとともにさらに新エネルギーの導入は新規産業・雇用創出にも貢献するなど様々な意義を有している。

新エネルギーの導入実績と2010年度の導入目標
官民最大限の努力を前提とした「2010年度新エネルギーの導入目標」として原油換算で1、920万klを設定。この目標を「地球温暖化対策推進大綱(平成14年度3月19日地球温暖化対策推進本部決定)」の中で位置づけ。

新エネルギー導入の課題
新エネルギーの中には発電効率等のエネルギー変換効率や設備利用率が低く利用効率の面で課題を有するものがある。新エネルギーのコストは低減してきているが現時点では既存電源等と比較して高いレベルにある。そのため補助金制度や電力会社の「余剰電力購入メニュー」が設けられている。
/以上、NEDO「新エネルギー講座」より。   NEDOホームページ <http://www.nedo.go.jp/>

 NEDO(=通産)が、CO2削減を主たる理由として相変わらず原子力発電の推進に熱心で、新エネはコスト的に問題があると言い、現在の3倍程度つまり形式だけ推進するとのこと。電力事業のコストダウンにつながる電力の規制緩和すなわち電力事業の自由化には全く触れず。省エネは新エネと同じ、やってますと言えればよい程度の取り組み。
 我が国の年間エネルギー消費量は6億kL弱であり、このうち家庭で消費されるエネルギーは10%弱である。2010年の省エネルギーの目標5,500kLはだいたいこの量に相当する。新エネルギーはその量の約1/3を目標としているわけである。
 文明の発達と共に人類のエネルギー消費量は飛躍的に増加したが、一方人類はその需要増加分の大半を省エネルギーで生み出してきた。このことをソフトエネルギーパスと言っている。経済停滞の下での省エネ10%の削減目標はいかにも小さく、新エネは目標というべき数値とも言い難い。
 ところで新エネのホープはバイオマスと言われている。しかし通産のこれまでの産学フォーメーションとは筋違いだから何時までもいろもの扱いである。そういう意味ではバイオマスの次と言われる風力は筋がよい。
 引用したNEDO提供の内容は、良く知られた内容であるが我が国のエネルギー施策のまとめとして良く本音が表明されているので長文だが敢えて要点を記載したものです。


2003年7月27日(日) 下水汚泥の有効利用(2003.6.24下水道新聞より)

 「バイオソリッド利活用基本計画に関する委員会」(委員長平岡正勝−立命館大学)による「バイオソリッド利活用基本計画策定マニュアル」改定案が了承された。
 嫌気性消化プロセスでのエネルギー利用について。流入下水量5万トンの処理場で汚泥から発生するメタンガスによる発電では処理場の消費電力量の3割を賄え、960トンのCO2が削減される。全国の下水処理場の全ての下水汚泥を地域ごとに集約処理し発生するメタンガスで発電すると年間17憶KWHの省エネルギーとなり、61万トンのCO2削減となる。全国の下水汚泥を集約し反応槽に他のバイオマスも受け入れ、さらに高効率技術を適用すると年間67憶万KWHの省エネルギー、240万トンのCO2削減となる。(以上下水道新聞より抜粋)

 消化プロセスと発電設備(用地、汚泥の移送を含む)のコストが発電電力量と見合うかどうか。もし見合わないとすればそのコストを下水道料金に転嫁すべきかどうか。CO2削減が国家的な使命だとすれば発生源が公平に負担するひとつの方法は環境税かもしれないが、環境税の使途は様々なCO2削減方策の中で最大の投資効果が得られる方策を選択せねばならないが、それが可能か。結局新たな規制と補助金(=利権)を生み出すだけかもしれぬ。
/以上

2003年7月12日(土)  国土交通省 8日発表による2002年度1級河川の水質調査結果。

 109水系の1094地点でBODを測定し年間平均値を比較した結果。環境基準を満たした点は全体の85%。( )内は昨年順位。

[ベスト5]
  1(1)尻別川(北海道)
  1(3)後志利別川(北海道) しりべしとしべつがわ
  1(3)札内川(北海道)
  1(2)宮川(三重)
  5(10)大野川(大分)

[ワースト5]
  1(3)鶴見川(神奈川)
  2(2)大和川(奈良・大阪)
  3(1)綾瀬川(埼玉・東京)
  4(5)猪名川(大阪・兵庫)
  5(4)中川(埼玉・東京)

 川の風景は魅力的である。東海道新幹線から眺めると木曽川が一番美しい。水量が多く広い河川敷には木が良く育っていて醜いコンクリートや石積みの護岸が見えない。醜いのは最近はやりの河川敷の花壇などを配した平面的な公園だ。
 大きな川は豊富な水の流れと風にそよぐ緑の木々があるだけで十分に美しい。河川はデザインしないことが最高のデザイン。人工物を見せない工夫が唯一のデザインであって欲しい。
関連HP <http://www.mlit.go.jp/river/press/200307_12/030708/index.html> 

2003年7月12日(土) 人間開発指数
 国連開発計画(UNDP)は8日、所得水準や教育の普及度、平均寿命などで国民の豊かさを総合評価した「人間開発指数」ランキングを発表した。@ノルウェーAアイスランドBスウェーデンCオーストラリアDオランダEベルギーF米国GカナダH日本Iスイス。最下位はシエラレオネ。日本は政治経済への女性の参加度合いを示す指標では44位、前年32位からさらに後退。所得格差や失業などを分析した先進17カ国の指数も講評したがスウェーデンが首位。米国は17位日本は10位。以上9日付け日経

 Human Development Indicators というところのDevelopmentというのは先進国(Developed Country)、後進国=発展途上国(Developping Country)のDevelopmentである、というと分かり易い。人間開発指数と言われるとなんのことだがわからん。つまり「人の先進国度」というような意味である。邦訳はもっと良く考えてもらわないと大切なことが伝わらない。日本の「豊かさ指数」がもっと官の採点のような意味合いを強めると意味が在るものになるのだが、どうやら国連のこのHDIというのは国家の採点と言えるもののようだ。もっと関心が持たれても良いのではないか。

 関連HP <http://www.undp.or.jp/hdr.htm>

2003年7月12日(土) ATCエイジレスセンター
 「年齢やハンディに関係なくだれもが人生を豊かにおくるために生まれた製品やサービス、町づくりについて最新情報を提供」−パンフより。大阪市とアジア太平洋トレードセンターが設置。介助器具などの展示が豊富。

 母と一緒に杖と歩行支援具(シルバーカー)を探しに行った。当然ながら私にはこれらの商品知識が無いので、ホームセンターや百貨店で販売されていることは知っていたが、公設の展示場をWEBで探してここを見つけた。以前飯田橋の東京都福祉機器総合センター(JR飯田橋駅隣接のセントラルプラザ12F〜15F)を訪問したことがある。そこには厖大な身障者用介助器具や衣服を展示しており車椅子などは広いフロアに100種類以上在ったろうか。だから大阪にもこのような展示場があるはずだとおもったからだ。

 土曜午後だったが展示場は空いており丁寧な説明を聞いた結果、特にシルバーカーの選択には使用者の運動能力によってかなり専門的なアドバイスが必要だということがわかった。杖はデザインが豊富で材料もカーボン、アルミ、木製と在り形状も様々である。バリアフリー住宅の展示もある。
 介助器具が必要な場合はむろんだが、そうでない人も、いずれ身体能力が衰えた時の生活を実感できる。

 このセンターの全体的なこと。展示品の販売もしているのだが効率の悪さからみて販売が目的ではない。本施設が役所のサービスにしても、訪問する人の少なさから見てコスト対効果は著しく低い。総合案内のブースにいた女性が、わざわざ我々の用向きを聞きに来てくれた。シルバーカーを説明してくれた男性は50種類以上もある製品の特徴を熟知している上、使用者の障害の程度や運動機能を良く知っていた。優秀な人達が十分に生かせていない。

 場所:車だと阪神高速湾岸線南港北出口から5分。電車ではコスモスクエア南港トレードセンター前駅すぐ。住所:住之江区南港北2-1-10ATCアジア太平洋トレードセンターITM棟11F。TEL06−6615−5123水曜休館 <http://www.ageless.gr.jp> なお、飯田橋のほうは近く移転とのことである。

2003年7月6日(日) バグダッドでフセイン像を米軍がひき倒した時の報道が突然切断されたこと

 大量破壊兵器がみつからない。にも関わらず国内では米国盲従の小泉政権の人気が相変わらず高く、イラク戦争はすでに忘れ去られたかのようだ。

 フセイン像がひき倒されたのは米軍演出のショーであった。局名は忘れたがその時の日本のテレビ報道では、「騒いでいるのは200名ほどで、はるかに多くのイラン人が黙って遠巻きにまわりを取り囲んでいる。泣いている人もいる。米軍に祖国を踏みにじられたことを嘆き憤っているようだ。」と現地レポーターがしゃべった直後、衛星回線が途絶えた。日本側のアナウンサーが何度か現地を呼んだが再びつながることは無かった。私は間違いなく誰かが回線を切断したと思い、その後の報道を注意していたが二ヶ月経ってもこの中断に関する情報は見あたらない。

 5月の連休中に「文明の衝突と21世紀の日本」(サミュエル・ハンチントン)[集英社新書]を読んだ。アメリカの覇権と国際関係論に関する有名な「文明の衝突」の他に2編の論文を含む。ちょっと気が重いが本書に関連することについて今後、少しずつ書いて行くことにする。 

2003年7月6日(日) 生物学のお勧めの本 「熱帯雨林」 井上民二著 NHKブックス 

 2週間ほど前にNHKで放送していたので思い出した。ぜひ本のほうをみんなに読んで貰いたいと思う。私は5年ぐらい前にNHK出版の新書で読んだ。著者は京都大学の教授だったと思うが、現地ボルネオの飛行機事故で亡くなっている。

 熱帯の植物の生態を知ると、数億年の進化の果ての壮大なそして絶妙な生物同志の関わりに感動させられる。そして種の多様性の価値を思い知らされる。進化の理由を考えるために、利己的遺伝子の読み物(以前本欄に書いた)を、読んでおいて良かった。そうでなければただ不思議だと思っただけだったろう。さらに約10年位前の本だが動物のサイズに関する本(象の時間ネズミの時間 中公新書)がお勧め。

 いずれも生物学と言うよりは一般向けの読みやすい本だが、私はこれらから、生命や環境問題への自分自身の感覚に大いに影響を受けた。

[関連GAB] (12月23日)

END