反戦自衛官


燐光群『反戦自衛官・森の中の回り道』無星(11/23,ザ・スズナリ)

 自衛隊員が週末だけ訪れる「日曜下宿」に、一人の男が訪れる。彼は反戦自衛官、かつてこの下宿にいたサイトウの事を訪ねにきたのだ。反戦自衛官とは、自衛隊にありながら、国民の為にのみ立ち上がるべきだという思想の元、PKOに反対する自衛官である。

 その下宿は、磁石も用をなさぬ、迷い込んだら逃れられない富士の樹海にあった。そこは、現実世界からはぐれてきた人たちが集う場所であり、反戦自衛官の目の前では、得体の知れぬ人物が迷い込み、ふきだまり、通り過ぎていった。

 その樹海で鉄の彫刻に執心し、反戦自衛官と連絡を取ろうとしていたサイトウの身に、いったい何が起こっていたのか。。。

 芝居が終わったとき、どうしてこれで終わりなのか、理解に苦しむ幕切れでした。物語は二幕構成であり、一幕が反戦自衛官の話、二幕がサイトウの話です。二幕でサイトウの謎があかされたとき、それを受けての反戦自衛官の話があってしかるべきでしょう。作者が何らかの見解を示すことなく、ただ反戦自衛官という現実を提示しただけでは演劇とはいえない。たとえ現実が進行中であるにしても、何らかの芝居としての決着をつけるべきではないでしょうか。鉄を打つ音だけに集約させるのはいかにも無理。あれでは芝居が終わりません。全体の雰囲気はそれなりの物を出していたのに、語り口が全てを駄目にしていました。

時かけ



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