人さらい


第七病棟『人さらい』☆☆☆(11/2,浅草橋・福井中学校)

 廃校の古い校舎を通り、突然現れた坑道を抜けると、そこにはもはや走ることをやめた列車の車両、アンナカレニーナ号。その前に現れた二人の男。取り除かれたレールをつなげば、忘れられた何かがやってくると信じている。中年の朝市と若い夕市。
 その駅に偶然やってきた女、桃代。かつて男にすっぽかされて以来、ずっと男を捜していた。その男、朝市との再会。夕市は彼女を慕っていたが、実は桃代は、朝市にさらわれた夕市を連れ戻すよう、家族に頼まれて探していたのだった。

 石橋蓮司と緑魔子の、出会っては別れ、逃げては追いかけ、の人生模様。世間から忘れられた二人の忘れられた濃密な過去が、再び流れ始める。取り除かれた廃線が再びつながれたとき、もはや帰ってくることのないとあきらめていた夢が再び帰ってくる。あきらめずに追い求めていれば、そのまま帰ってきていたかもしれない夢は、しかし再び夢の中に消えていった。二人の再びの巡り会いのためには、また次の廃虚、次の物語をまたねばならない。。。

時かけ


観劇印象レビュー[ TOP | 95年 ] 時かけ