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坪川真理子
デビューリサイタル



 2001.3.31(土曜日)18:45 開演  

東京オペラシティー

桜もほぼ満開というのにみぞれ混じりの冷たい雨というあいにくの天気だったが、開演前にはほぼ満席状態。オペラシティのリサイタルホールは天井が高く芝居小屋のようなフラットな造りだが幸い前から2番目の席だったので彼女の演奏する姿を良く見る事ができた。5年間のスペイン留学を終え今年帰国されたわけだが、若い女性が一人でスペインで5年間生活したというのもなかなか大変なことだと思う。最後の曲を弾き終え聴衆に向かって挨拶をする彼女を見ていたらこっちまで泣けてきた。彼女自身ブローウェルを弾き終えた辺りで目が潤んでいるように見えたが、5年間の海外生活が演奏中にフラッシュバックしたのかもしれない。

彼女の演奏を聞くのはこれで2回目。昨年夏アンダンテで一時帰国コンサートがあったのを聴いたのが最初。とにかくそれ以来非常にしっかりした女性という印象を持っていた。今夜の演奏でも彼女の精神的な強さが、演奏中ずっと感じられた。決して派手さは無いが、地味でもない。美しい音色で丁寧に一曲一曲弾き進めていく彼女のようなタイプの演奏家は、非常に好感が持てる。
今夜の衣装は黒のパンタロンスーツ?(なんと言うのか分からない)にワインレッドのボレロ(坪川さんご本人に教えて頂きました)。なかなかセンスの良いコスチューム。椅子に腰掛ける時最初斜めに座って調弦するのは彼女の癖なのかな。それと今夜もかかとの高い靴をはいていたが昨年の夏のコンサートの時のように足台を演奏途中で直すことはなかった。当たり前だけど。彼女の演奏スタイルは一つ一つの音を丁寧に重ねていくタイプだと思うが演奏姿勢も崩れることなく安心して聴いていられる。前回のステージより右手親指のテクニックに進歩が感じられた。

前半のステージは、最初右手が緊張からか震えてタッチが浅めになっているように見えたが次第に落ち着きを取り戻していった。彼女が好きだと言うデラマーサの作品ではソレアが一番印象に残った。
15分間の休憩をはさんでスタートした後半のプログラムでは硬さも取れたのか、タッチもしっかりとしてきたし音量も増していた。
今夜の演奏で特に面白かったのは、トマス・マルコ作曲の「タロット」からの3曲。私には2曲にしか聞こえなかったが。楽譜が出版されているなら是非弾いてみたい。出だしの親指を多用する早いアルペジオが印象的な作品。それともっとも心に残ったのがブローウェルの黒いデカメロン。戦士のハープで、導入部のスラーが素晴らしい。出だしを聴いただけでぞくっときた。全体に早めのテンポで弾かれ適度なアゴーギクが独自の世界を作り出していた。恋する乙女のバラードのエンディング直前の早いパッセージの箇所のアゴーギクがとても新鮮。フィナーレを飾る椿姫の主題による幻想曲は、以前から聞いてみたいと思っていた曲。それなりに雰囲気は出ていたがコンサートのラストとしてはやや物足りない感じがした。ブローウェルを最後に持ってきた方が、プログラムの構成としては効果的だったと思う。

挨拶の後、アンコールはブローウェルの11月のある日。もう何曲かアンコールをやって欲しかったと思ったのは私だけではないだろう。何はともあれ長い海外生活から日本に戻って最初のリサイタルということで彼女の緊張も大変なものだったと思う。演奏だけでなく最後の彼女の挨拶にも5年間の留学生活を終え帰国した達成感や安堵感、そして彼女を支えてくれた家族や友人らに対する感謝といった様々な想いが言葉の端はしに溢れていた。
真面目で誠実な彼女なら今後ますます演奏家として成長していくだろう。次回のコンサートも期待したい。





プログラム

アルハンブラの小川
アンヘル・バリオス作曲

序奏とファンダンゴ ディオニシオ・アグアド作曲

ソレア、ペテネーラ、サパテアード

レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサ作曲

〜休憩〜

タロットより「皇帝」「力」「世界」
トマス・マルコ作曲

悲しみのあるキューバの風景
黒いデカメロン

レオ・ブローウェル作曲


椿姫の主題による変奏

フリアン・アルカス作曲


アンコール

11月のある日  レオ・ブローウェル作曲



余談だが、今夜のリサイタルで鎌田門下の内輪の発表会で初めて知り合った泉谷君に会った。彼女の奥さんは坪川真理子さんの大学の後輩だそうでとても美しい女性。彼は4月から京都に転勤が決まり明日日曜日に京都に移動するらしい。7月の七夕ライブには出たいといっていたからまた会えるだろう。
またギタ菌さんや、現代ギターのS編集長、メディアカームの社長やギター製作家の今井さんの姿を見かけた。
ギタ菌さんは明日から九州を皮切りにコンサートツアーが始まるらしい。風邪が完治しておらず未だに気管支拡張剤を服用してレッスン等続けられているようだ。コンサートツアーではなかなか身体を休めることが出来ないだろうが早く元気になって万全の体調でコンサートに臨んでもらいたいものだ。14日のGGサロンも期待してますよ。