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村治佳織儀ギターリサイタル


 
2001.12.9(木曜日) 16:00開演  

アクロス福岡シンフォニーホール

コージさんからカオリンのレポートが届きました。DVDも発売され、近頃めっきり大人になった彼女の演奏が聴けたようです。何度も佳織姫の演奏を聴かれたコージさんが羨ましい。オイラなんてまだ一度も・・・です。(凹)
尚、頂いたメールはそのまま転載されて頂いております。
万一内容に関してご意見等ありましたらお手数ですが、管理人YASUまでメールにてご連絡願います。




****村治佳織ギターリサイタル****

日時…………2001.9.25(木) 16:00−18:05

場所…………アクロス福岡シンフォニーホール

        <プログラム>

バッチェラー ………ムシュー・アルメイン

バッハ ………………シャコンヌ

ラック   …………ブテットゥ

ブローウェル…………黒いデカメロン

        <休憩>

トゥリーナ…………ファンダンギーリョ

サインス・デ・ラ・マーサ…………暁の鐘

ロドリーゴ…………ファンダンゴ

      …………祈祷と踊り

ファリャ…………ドビュッシー賛歌

     …………粉屋の踊り

        <アンコール>

マイヤース…………カバティーナ

ディアンス…………タンゴ・アン・スカイ

バリオス…………パラグァイ舞曲

 

<感想>

かのマルタ・アルゲリッチも弾いた福岡のクラシック専門ホール。それは、天神と中州の間に構えるアクロスビルの一角にあるのだが、両脇にバルコニーを3階まで備えた九州ではめずらしいホールである。ステージが低く、お茶の水のカザルスホールを豪華にした感じ。響きは良いと思う。1200人くらいの規模でギターには少し大き過ぎるが、こんな会場で演奏できるギタリストは幸せだ。開場時間ぴったりに着いたのだが、すでに長蛇の列。このホールを満員にできるのだから、たいしたもの。二年前の熊本芸術劇場のときも2000人の席が満員で、キャンセル待ちにずらりと並んでいた事を思い出した。開演時間を少し過ぎて優雅にカオリン登場。予想に反して黒のドレスだった。1曲目が始まり、ギターがよく鳴っていることに驚く。特に低音がこもらず、極めてクリアだ。鮮やかに弾ききった。2曲目が大曲シャコンヌ。非常に期待して聴いたのだが、以外に平凡な演奏だった。あっさりした感じなのだ。1曲目もそうだったが、早いパッセージになっても、顔色一つ変えずに弾いて技術的な破綻がない。その面ではすばらしいのだけれど、訴えてくるものが今一つ。この曲の持つ劇性が感じ取れず、少し残念。最初の1小節を弾くときから、最後のD音を意識して弾いて行って欲しいのだけれど。3曲目ははじめて聴く曲。短いけれど美しい曲である。前半最後の黒いデカメロンは、手馴れたもの。聴かせどころもうまく弾いた。くしくも、この曲の献呈者であるシャロン・イスビンが来日中である。ここで20分の休憩。この合間に3階のバルコニー席を見学、どんな感じかを確かめたが、やはり遠い。この席でギターを聴くには少しつらいと思った。休憩が終わり、再びカオリンが登場。今度は、上が明るめの赤に下が白のいでたち。スペインを意識しての衣装だろう。後半に入るとさらに調子が良くなったと感じる。ファンダンギーリョはいい演奏だったと思うが、目の前で今聴いているわけではないので、具体的には書くことができない。ここで、おもむろにマイクを手に話し始めた。最近は、クラシックの演奏会でも聴衆に語りかけることが多くなったが、とても好ましい事だと思う。先日聴いた木綾子さんのときもトークがあったが、カオリンのほうがずっと知的で好ましかった。今回のツアーでは一番大きいホールでの演奏だそうで、小さいのは200人くらいの規模とか。スペインに3ヶ月ホームステイしてしゃべれるようになったこととか、DVDの製作のことなどを聞かせてくれた。2曲目に入る前に、プログラムにはないけれど、と言って「暁の鐘」を弾き始めた。トレモロの名曲だが、これがまた実に美しい演奏であったのだ。なんと粒のそろったきれいなトレモロだったろう。この演奏にはしびれた。僕の中では、ラッセルと並んで今まで聞いたトレモロでは最高ランクだったと思う。「ロドリーゴ」の2曲はよく知られた曲。ファンダンゴは単2度の不協和音で始まる名曲だが、ステージで聴くのは初めてのこと。途中の連続するトリルも鮮やかに決めた。「祈りと踊り」は、後半の舞曲はイマイチ躍動感がないようにも感じたが、しかしうまいものだ。最後がファリャ。「ドビュッシー賛歌」は、地味な曲なので、評価しにくい。曲は知ってはいたけれど、正直に良く分らなかったと言うしかない。あまりステージでは弾いて欲しくない曲だ。一転「納屋の踊り」は、良く知られているだけにステージで弾くのはプレッシャーがあるかもしれない。演奏は、もう少しスピード感があっても良いように感じたりもしたが、総じていい演奏だったのではないかと思う。アンコールは3曲。彼女、どんなに拍手しても1曲しか弾かないこともあったので、この日は弾いた方だろう。実はアンコールの曲はおなじみの曲ばかりだったのだが、演奏のできはすこぶる良かったのだ。それで、2曲目のアンコール曲を弾くときに、これで最後です、と宣言したので、さすがにもうないと思ったのだが、しかし聴衆は席を立たたず、拍手をし続けた。そのかいあって、再登場。今日は時間が早くまだ弾いていいと言っていただいたので、とまた弾いてくれたのが、バリオスのパラグァイ舞曲。これがまたすばらしい演奏で、終わりと思っていても席を立ちがたく、その後もしばらく拍手は続いたのだった。聴衆にまた聴きたいと思わせるコンサートであったことはまちがいない。最後にぜひ申し添えておきたいのだが、終始ほんとにすばらしいステージマナーだった。動きが実に優雅で、笑顔がホールいっぱい3階にまでに届いていた。