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GGサロン・コンサート
2002年新春コンサート

出 演
福田進一(ピアノ伴奏:井口真由子)


 
2002.1.11(金曜日)19:00 開演  

GGサロン



プログラム

ギターソロ

幻想曲ニ長調(遺作)〜
アンダンテ・ラルゴ
アンダンティーノ
アレグレット・ヴィヴァーチェ

F.ソル作曲

組曲「黒い聖母の朱い写本」
〜2000/福田進一のために

藤井敬吾作曲
ギター&ピアノ



ギターとピアノのためのソナタ〜
アレグロ・モデラート
アンダンティーノ
アレグロ・ア・ノン・トロッポ

M.ポンセ作曲

休憩


ギターソロ

パルティータ〜
アレグレット・コン・モート
モルト・ヴィヴァーチェ
アダージョ
アレグロ

ドッジソン作曲

ギター&ピアノ


ギター協奏曲Op.67〜
アレグロ
レント(ジャンゴラインハルトへの賛歌)
コン・ブリオ

アーノルド作曲

アンコール
ギター&ピアノ

序奏とファンダンゴ    ボッケリーニ作曲
プレリュード       M.ポンセ作曲



アーノルドのコンチェルトが終わった瞬間、思わずブラボーと叫んでしまった・・。家に帰ってこうしてPCに向かっているのに、未だに手の平が少し赤く、そして熱い。最初の内はこんなに感激するとは思わなかったけど新年早々本当に嬉しい誤算。
今から28年前にもなるんだな・・・確か高校に入ったばかりの頃、FMで濱田滋郎さんがDJをやっておられた番組でジュリアンブリームが演奏するこのコンチェルトが流れたのをラジカセで録音し夢中になって聴いていた思い出がある。以来この曲を今日まで一度も聴いたことが無かった。まさかそれを生で聴けるなんて・・・思いも寄らないお年玉だった。
アーノルドのギターと弦楽の為のセレナードとすっかり勘違いしていたオイラは福田さんの曲紹介を聞いていて何だか変な解説だなと思っていたのだが。いざ曲が始まって第一楽章のギターの旋律が流れ出した途端すっかり30年前にタイムスリップしてしまった。
ブリームの録音では、いかにもマイクを通したというのがはっきり分かるエレキギターのような響きだったが、GGサロンの最前列、おそらく3メートルも離れてはいないであろうすぐ目の前で河野さんの遺作のギターで紡ぎ出される美しいギター本来の音で聴くことが出来た。井口さんのピアノ伴奏のお陰でギターの音がオーケストラに埋没せずにしっかりと聴くことが出来たのも嬉しい。福田さんが最初に仰っておられた通り、アランフェスより好きなコンチェルトというのはオイラも全く同感。全楽章いずれも素晴らしい内容でギターコンチェルトの傑作。高校時代、カセットテープレコーダーで最終楽章を一体何回繰り返し聴いたことか・・。最終楽章エンディングの福田さんのラスゲアードと井口さんのピアノのコンビネーションの興奮は今も耳と目にしっかりと焼きついている。

いきなりハイライトの感想を書いてしまったが、とにかく素晴らしいコンサートだった。風邪気味でキャンセルしようか直前まで迷ったが無理してでも行って良かった。
クラシックの演奏家は大概ステージではポーカーフェイスの人が多いけど、福田さんの笑顔はちょっと違う。今まで遠くからしか福田さんの演奏を聞いたことが無かったが、今日のGGサロンのようにすぐ目の前で演奏を聴いて(見て)初めて福田さんは、ギターを本当に楽しんで弾いているのが良くわかった。実際かなりきつそうな曲もあったけど、大体にして選曲が半端じゃない。難曲のオンパレード・・ミス無しで弾くなんて土台無理みたいな曲が最初から最後まで続いたのだから。福田さんは話術の巧みな人だが、今日は比較的MCは真面目で緊張すら感じられるほどだったのに、いざギターを弾き始めると実にリラックスし、力みが見えない。
ミスっても動揺など微塵も見せず、どちらかといえば照れ笑いが見え隠れしていた。福田さんのギターテクニックを見ていて感じるのは揺れる柳のようなイメージ、実に軽く弾いているのだ。にもかかわらず音はしっかり出ていて・・ポンセのコンチェルトまでは調弦が安定しなかったせいもあるが、やや楽器の鳴りが良くないと感じていたが、ポンセのギターとピアノのためのソナタ辺りから俄然ギターの音が輝き始めた。
井口さんのピアノ伴奏も見事で実に素晴らしいアンサンブルだった。元々ハープシコードとギターの為に書かれた曲という説があるらしいが福田さんによれば、楽譜にピアノやらフォルテ、テヌート、スタッカートなどおよそハープシコードからぬ演奏記号のオンパレードで、実にピアノ的な曲だと説明されていた。
2部の最初のソロで演奏されたドッジソンのパルティータもえらく難しい曲で技巧的な面だけでなく音楽自体がバルトークが入っているというコメントをされていた程、普通のギタリストが弾いたら(そもそもまともに弾けないかも・・)多分難解な曲という印象しか残らないだろう。福田さんは演奏前こそ難曲故の不安を口にしていたが、演奏が始まるやあっという間に実に楽しげに弾ききってしまった。こういうどちらかといえば難解な部類の現代音楽を楽しく聞かせることが出来る福田さんはやはり只者じゃない。
なんだか褒め言葉しか思い浮かばないがアンコール一曲目の序奏とファンダンゴのエンディングで珍しく福田さんがとちってしまい、照れ笑いをしながら演奏を終えられた。続くアンコール2曲目をもう一度ボッケリーニを弾き直したいといいながらもポンセのプレリュードを弾いてくれたサービス精神に拍手したい。序奏とファンダンゴも楽しかったし、ミスもご愛嬌。今度はアーノルド是非オーケストラとやって下さい。
期待しています!