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アンダンテ・バウム・コンサート

中村 創


 2002.1.26(土曜日) 17:00開演  





プログラム

第一部

魔笛の主題による変奏曲

F.ソル作曲
第7幻想曲

F.ソル作曲
リゾンの泉Op.47

N.コスト作曲
休憩

第二部

カスティーリャ組曲

モレノ・トローバ作曲
アクアレル

S.アサド作曲
マズルカ
アパショナータ
マヒーへ

A.バリオス作曲

アンコール

ワルツ3番    A.バリオス作曲



コンサート開始前ぐらいから冷たい小雨がぱらつく生憎の天気となった。昨年の東京国際以来、ようやく中村君のギターをゆっくり聴ける機会に巡り合えた。彼は今年成人式を迎えたばかりだそうでまだまだ若いギタリストの卵。
最初の魔笛の演奏直後に、彼自身の口から今年地元でプロギタリストとしてのデビューリサイタルを行うという説明があった。5歳の時から父親の薫陶を受けてギターの英才教育を施された彼にしてみれば、既にコンサートの経験も豊富だろうしデビューということでの気負いも無いかもしれない。若さに似合わず落ち着いたステージマナーもそうしたキャリアと無関係ではないだろう。彼は足台を使わずギターレストの最新モデル?を使って演奏していた。これは昨年の東京国際でも使っていたが、両腕をギターに触れなくても楽器がしっかり両足に固定されていた。ただ気になったのは身体との密着部分が減ることで本来楽器の音量は豊かになるべきところがかえって右手のパワーが伝わりにくくなってしまっていたように見えたのだが。想像で確たる根拠は無いが身体とギターの接触部分(密着部分)が減ったせいで右手のパワーが楽器に伝わりにくくなるということは考えられないだろうか。タッチにウェートがかけ難くなる為、音が軽くなるような気がしたのだが・・今度自分でも試してみたいところだ。

演奏自体はとても端正で、表現も若々しく音色も美しい。ただ音量が小さめで迫力という点で今ひとつという印象。昨年の東京国際ではそういう印象は持たなかったのでたまたま楽器のコンディションが悪かっただけなのかもしれない。
静かに丁寧に音をつなげていく彼の演奏はとても好きなタイプ。魔笛は装飾音が省かれていたがスタートでやや緊張していたのか特に第4変奏のアルペジオで右手のタッチが浅くなっていた。今日の彼の演奏全体を通じて感じたことだが、中声部の音量はもっと大きい方が良いと思う。1弦、6弦はしっかり出ているが2,3弦が弱い。もう少し大きめの音で弾かれると表現の幅もずっと広がると思う。
第7幻想曲はコンクールの時よりはずっと落ち着いて弾いていた。古典をきちんと弾けるのは彼の強み。コストも出だしミスがあったが演奏はなかなかなもの。難しい曲を上手くまとめていた。

後半はスペイン物から始まる。メロディーの歌わせ方に色気が感じられなかなか楽しめた。
続くアクアレルは今日一番楽しみにしていた曲。弾くだけでも大変な難曲だが彼は、素晴らしいテクニックで弾ききった。終曲途中で音を見失ってしまうミスがあったのは残念だったけれど。終曲は音楽が無窮動で難しいフレーズがこれでもかとばかりに続いていく。つまづくと復帰が難しい曲なのかもしれない。それにしてもこんな難曲をステージで弾かなければならないとはプロギタリストって大変な職業である。
バリオスはやはりメロディーの線がはっきりしているので安心して聴ける。彼には申し訳ないがこうしたどちらかといえばゆったりとした音楽を彼の美しい音で聴かせてくれる方が、超絶技巧の連続よりもずっと映えるような気がした。
美しい音と丁寧な音楽作りの美点を伸ばし、さらに迫力ある演奏の出来るギタリストになって欲しい。期待しているよ、創君。(^^ゞ


コンサート終了後のスナップ
向かって左〜中村君とのデュオのパートナーもやっているギタリスト河村一平君