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シャロン・イズビン・ギターリサイタル

バリオホール

 2001.12.7(金曜日) 19:00開演 




プログラム

サヴィオ


バトゥカーダ作曲
アマゾンの鳥
デ・メロ作曲

ベネズエラ風ワルツ第3番

ラウロ作曲

黒いデカメロン

ブローウェル作曲

スペイン舞曲第5番
 
グラナドス作曲

アルハンブラの思い出

タレガ作曲

アストゥリアス

アルベニス作曲
休憩

アパラチアの夢(日本初演)

デュアルテ作曲
4つの歌(日本初演)

シーマー作曲
荘重なアレグロ〜大聖堂より

バリオス作曲
ワルツ第4番

バリオス作曲

アンコール

サパテアード〜サインスデラマーサ
2曲目ボーっとしてて聴き取れず
3曲目セイス・ポル・デレーチョ〜ラウロ



会社から歩いて行ける距離と油断していたら道に迷ってしまった。本郷近くのバリオホール。こんなところにホールがあるとは・・・コンサート開演後に多数遅刻者が見られたのも場所の悪さが災いしていたのかもしれない。
シャロン・イズビン。トロントのコンクールで優勝した時の2位がバルエコ、3位がフィスクという華麗な?コンクール歴に加えジュリアード音楽院の教職を務めるというキャリアしか知らなかった彼女。ステージに現れた姿を見た時、思わず豊かな髪の毛にまず驚かされた。最近とみに薄くなりし我が頭と引き換え、彼女の髪がなんと羨ましく思えたことか・・・。
馬鹿な話はさておきバリオホールは客席数の割りに天井が高く音響は余り良くないという印象。前から2列目右側の通路寄りという彼女の演奏を見る(聴く)には申し分の無い位置に陣取ることが出来たが聴こえてくる音は予想以上に小さく最初はギターが悪いのかと思ったほど。ハンフリーを使うギタリストは最近多いようだが個人的にはあの音色は余り好きではない。まあホールが別のところだったら全く違う印象を持ったかもしれないけど。
テクニック面では左右の手の動きが非常に無駄が無く特に右側から彼女の演奏を聴いていたせいか右手の手首の位置が殆ど動かないのが印象に残った。時折音色を変化させる時に右手を弦に対し斜めに変えるのと、甘い音で唄わせる時にだけ指を伸ばし気味にする以外、ホームポジションは殆ど変わらなかった。
そのせいか音が小さく感じたのは彼女の動きの少ない右手のタッチのせいかと思っていたくらいだが、1部の最後を飾ったアルベニスが素晴らしい出来で、やはりタッチのせいではないようだ。・・てことはホールが悪いのか座った位置が悪かったのかもしれない。アストゥリアスの中間部の唄いまわしは新鮮で自分もまた弾いてみたくなった。直前のグラナドスの代わりにトローバ辺りをどう弾くか聞いてみたかったけど。

オープニングの2曲はいずれもはじめて聴く曲。南米のリズムが心地よい。但し1弦の高音部の鳴りが最初の内悪く感じた。彼女は曲ごとに解説しながら演奏を進めていたが、聴衆の反応が固いのに面食らっていたような感じがした。後半のバリオスでも、パラグアイのジャングルのパガニーニという説明に彼女なりに笑いを取ろうとしていたような気がしたのだが反応は意外にクール。逆に演奏中の聴き手の集中度はかなり高く彼女もそうした聴衆の反応は肌で感じていたはず。多分弾いていて気分は悪くなかったと思う。
黒いデカメロンでは演奏順が変更され戦士のハープが最初に演奏された。彼女に献呈された曲だけに彼女なりの理由があるのだろう。
この日の演奏は、唯一音量がやや不足気味の点を除けば、殆ど傷の無い安心して聴いていられるステージだった。ギターの音色は好みの問題だが、シーマーの4つの歌では、甘くノイズの極めて少ない美音で弾かれていてギター独特の弱音の美しさを堪能出来た。
後半ではアンコールで弾かれたサパテアードが白眉。メカニックも冴え音楽も躍動していたし聴衆の拍手の音にもそれが表れていた。
アンコール2曲目はぼんやりしていてうっかり曲名を聞き逃してしまったが、洒落た南米風のリズミカルな曲で彼女の得意なレパートリーなのだろう。フィナーレとなったラウロは昨年ラッセルがコンサートの最後で弾いた曲。途中ネックを立てながら弾いていたのはカッコ良かった。ステージでの立ち振る舞いは終始落ち着いていて、堂々たるもの。やはり演奏の間の動作というのも演奏にかなり影響を与えるものだ。
彼女のステージマナーの良さは光っていて一流のギタリストの片鱗を感じた。
コンサート終了後、サイン会が行われたが、翌日の鎌田さんのレッスンの練習をしなければならない為、すぐに会場を出た。それにしてもあの界隈は9時を過ぎるとなんともいえず寂しい。もう少し賑やかな場所が華のある彼女には似合う気がしたのは私だけだろうか。