六吟歌仙 交信の巻
冬麗やまだ見ぬ人と交信す 朝比古
隣の席の湯気立つ珈琲 四 童
足首の薔薇のタトゥーを見せられて 掃除機
グッゲンハイムの螺旋階段 振り子
名月をはたく煙突掃除人 不 孤
ワルツ歌うて虫売帰る うさぎ
ウ 「アフリカの爆弾」を読む夜半の秋 童
石鹸の香に横恋慕する 古
髪洗ふ背中を不意になぞる指 童
ごめんなさいを消すはたたがみ 機
大粒の雨が涙にかはるとき 子
あれこれ詮索するおせつかい 孤
夏の月キスしてちよつと仲直り ぎ
見たことのない火口湖の色 童
ドラッグとラピスラズリを懐に 孤
水輪ひろごる劇場跡へ 子
花びらに先導されて宇宙船 機
ゆつくりまはる朧ある星 童
ナオ 春の山はためくものを遠く見て 古
中也惑乱曇天の朝 孤
死に遅る羊の乳をあびるまま 子
聴いてゐるのは風の歌だけ 機
図書館へ光を放つ西瓜畑 ぎ
約束といふひややかなもの 古
うつくしき小指を立てて新酒注ぐ 童
胸の汗粒ぜんぶあげる 子
少しづつ言ひわけうまくなつてきて 機
波をすばやく飲み込む渚 ぎ
月天心恋愛成就特効薬 古
かりがね渡る貧しき国へ 孤
ナウ 雪煙かの狼のかたち成す ぎ
白い頁に最初の言葉 機
経を繰る南京玉すだれの如く 孤
シルクロードの大きく芽吹く 古
花闌けてスカーフなびく開脚前転 子
きしきし海が匂ふぶらんこ ぎ
起首2001年11月25日
満尾2002年1月7日
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