六吟歌仙 ポケットの巻

 

   ポケットに冷えし銀貨や紐育        ぽぽな
     大公園に秋の禽獣            四童
   月光のあまねく海へ漕ぎ出でて        詠犬
     竜宮城のたなびく煙          振り子
   うすらひを壊さぬほどの地震の揺れ     朝比古
     空へ空へと芽吹くものたち       うさぎ
ウ  囀りに鉄を打つひと曲げるひと         子
     駅歩五分の2LDK            な
   便箋の左端よりゆふぐれ来           ぎ
     席替への日のすこし早起き         古
   新緑の雨へたて笛吹きちらし          犬
     野の生き物に太すぎる蛇          童
   足で踏む鞴を照らす夏の月           子
     すいつちよすいつちよ馬小屋の窓      ぎ
   くろがねの燈篭一つづつ吊るす         な
     紅葉且つ散る心霊写真           古
   花冷えのピアノ連弾休みし手          犬
     桑名からけふ蛤とどく           童
ナオ いつまでも帰らぬ客の肩に蝶          な
     サングラス置く窓際の席          犬
   ストローを入道雲に二本挿し          古
     高床式の暗がりで待つ           子
   ミッキーに聞けば名前は三樹男だと       童
     茶碗の縁の口紅ぬぐふ           ぎ
   スクーターを探偵降りて秋の風         犬
     朝霧けぶるタワーブリッジ         な
   黄落に遣欧使節もどり来る           子
     鮟鱇担ぎだいだらぼつち          古
   月白のさらさら積もる砂時計          ぎ
     胎児はちやうど林檎の重さ         な
ナウ 超音波にて忍者泣く暮の秋           童
     いつのまにやら肩凝り治る         子
   編み棒は家族の眠り掬ひつつ          ぎ
     二重螺旋を抜け地虫出づ          童
   初花へ歌へるやうな雨しとど          古
     春の虹立ち結ぶてのひら          犬

 

起首 2005年10月02日

満尾 2005年12月13日

 

俳句目次に戻る

トップページに戻る