2011 冬
遠藤治

湯の町の文化シャッター閉まる秋
タオルから足の出てゐる小春かな
どの坂も海の高さの小春かな
犬あまたベランダにゐる小春かな
潜水着ぬげば水着の小春かな
あまたなる帝都の台座冬ぬくし
敗荷の濃密にして九段かな
古井戸に昔の冬の水ありて
意のままに意中の人を冬日向
一族のもそもそとして御慶かな
寝正月ほどの厚さの衣をまとふ
水平を疑つてゐる浮寝鳥
消すときは懐手する組織かな

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