YAMAHA GX1とKORG 700の関係?
一方それとは別に Hz/V仕様のVCOを採用したのが KORG、YAMAHAであったわけです。KORG、ROLANDの初号機が1973年、YAMAHAはそれから少し遅れ1974年から1975年にかけて GX1、SY1と言うanalog synthを発売しています。 ROLANDがOCT/V仕様を採用したのは1っにはModular synthを見据えていらからでしょうし、YAMAHAが KORGと同じ Hz/Vだったのは1970年代初期に35のVCOを持つ PolyphonicのGX1を開発するためにはantilogぬきのHz/V仕様にするのが当然のなりゆきだったのでしょう。 VCF、VCAに関してはGX1,SY1では先にKORGが開発した diode ringによる VCF、VCAを採用しています。これはKORGがエレクトーン用のリズム音源をYAMAHAに供給していたり逆に1970年代初頭からKORG製品の販路等においてYAMAHAが協力していたとか友好関係があったことからanalog synthで先行していた KORGとの情報交換などが推測されますし実際に技術交流があったという話も聞きます。
YAMAHAにおいても diode ringが使われたのは 1976年の SY2までで 1977年の CSシリーズからは OTAによるSVFが使われており専用IC化がなされています。 SVF VCF使用は diode ring と同じく 2pole filterであり LPF、HPFが同じ回路で実現で、かつQを上げても通過帯域の gainの減少がないfilterだからでしょうか。
YAMAHA と KORGの diode ring VCFの違い 同じ diode ringを使用していますが KORGとYAMAHAのVCFは同じ回路ではありません。大きな違いはdiode ringの駆動回路で KORGは電圧駆動+ diode、YAMAHAは定電流駆動です。またYAMAHAの回路では Resonanceも diode ringによる VCRが使われておりこれはおそらくpolyphonic synthのGX1を見据えた回路だと思われます。
1973年発売のMINI KORG 700や YAMAHA GX1のVCFは hybrid IC化されており700の回路図を見ても回路の詳細はわかりませんが KORG 770においてはそれが個別部品で構成されているためVCF、 一方 SY1、SY2の回路図はNETで見つけることはできますがそれに使用されている Hybrid ICのNE10400、NE10500の回路は見たことがありません。 唯一あるのは YAMAHAのdiode ring VCFの特許に書かれている回路と GX-1 VCFを再現したといわれる MOTM 485 VCFの回路図です。 両者は基本部分は同じで特許の回路図は簡略化されていますので485VCFの回路図がほぼNE10400などのVCF moduleの回路を表現しているものと思われます。
片電源駆動ではありますが上と下のdiodeで対称駆動されているのでCVの変動に対する出力nodeの変動は押さえられることは同じですし、なにより出力 nodeにおいては上のdiodeと下のdiodeを流れる電流は逆相MIXになるため片電源からくるoffset電流もキャンセルされる構造、すなわち差動増幅typeのVCAにおける電流の取り出し方と同様な構造になっているのでCVの変動に対する出力の変動をおさえられるのは同じです。 実際、2電源でドライブされている diode ringはMS50の diode ring VCFくらいだと思います。 原理を知る上では2電源タイプの方がわかりやすいです。 またKORGのVCAや、YAMAHAの VCFの VC resonance回路はとも2電源ドライブのようです。 原理に沿ったわかりやすい回路のMS50 Diode Ring VCF。 GX1のVCFも700のVCFも上記の簡略化した回路図部分だけでも結構複雑でVCF全体としてはさらに複雑でこれに比べるとMS50のVCFの方がシンプル。20年ほど前にMS50のVCFは作りました。このころは diode ring VCFもまだ一般には有名な回路ではなかったように思います。
GX1は1974年以前の技術で35voiceのアナログ方式のPoly synthを構成するという今考えても真にモンスターシンセでありました。また 通信関係の技術を応用した当時としてはめずらしいKey assigner方式を採用しておりこの時期この方式を利用したsynthとしてはOberheimの4Voiceがあるくらいではないでしょうか。 4Voice の Key assignerは E-MUの技術協力によって実現されたそうですが。 35Voiceで当時700万の価格だった GX1。 現在でもこのような analog poly synthは存在しません。 KORGと同様の Hz/V方式 diode ringを使用した analog synthではありますが これだけのものを作りだせたのは長年のエレクトーン開発の技術力のゆえでしょう、
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