* CR 回路の波形 (位相差が発生する原因) *




上図にCR 1次filterに正弦波を印加した場合の各電圧の変化を示します。 電流の変化は抵抗電圧の変化と同じ形です。

上図は抵抗の電圧降下とcapacitorの充放電電圧が同じ振幅、すなわち抵抗とcapacitorのインピーダンスが同じになる入力信号周波数(cutoff周波数)におけるグラフです。

上図では印加電圧は振幅0から開始される正弦波に対して、抵抗、 capacitorの電圧変化の過渡変化状態から定常状態に移行するまでの変化を表しています。 (一般的な説明では定常状態の説明のみで過渡は省略される場合が多いですが...)

LPFの出力信号としての capacitor電圧はfilterなので大きさが小さくなるは当然としても、入力信号に対して位相の遅れを生じます。 つまり入力と出力は位相の合った同一タイミングでは出力されないということです。 またこれはfilterに印加する正弦波の周波数によって変化します。(周波数の高いものほど遅れる)

正弦波の形をした信号を入力すれば正弦波の形をした信号(但し位相はずれる)が出力されます。 あたりまえのことだといってしまえばそれまでですがこれは重要なことです。  つまり1次LPFに正弦波を入力した場合出力信号は位相が変化して出力電圧が低下した正弦波の波形が出てくるのであって波形の形状そのものは変化(変形)しないのです。 ただし立ち上がり部分はいびつな正弦波となります。


位相が遅れる原因は上図においてcapacitorの正弦波波形の始め(立ち上がり部分)で定常状態にはない区間が生じるためです。 これは電流カーブCOS 0度になる位置までであり、その際、充電電圧は SIN 0度つまりここから定常状態が開始されるということです。 ただしこの時点ではまだ定常状態の位相より遅れている為その後の1/2周期においては波形がまだ歪んでおりこの 1/2周期を過ぎると完全な正弦波となります。 完全化した時点での印加正弦波に対する位相遅れは解消されないので以後この関係を保ちます。

また上図のように capacitor電圧のSIN 0度に相当する点の電位は 0Vではありません。 これは充電電圧の変化が0Vかつ、電流の変化も0Vから始まる為です。 抵抗の無い回路ではこれが0Vから始まるわけですが。

充電電圧の形はSIN -90度から始まる形状ですが、マイナス電圧からでなく0Vから変化するので通常波形に対してOFFSETが乗った形になります。 このOFFSETが完全に解消される為には時間を要します。 これはおもしろいことに CR回路にステップ電圧を与えた時の印加電圧に達するまでの反応と同じです。 すなわち上記のcapacitor電圧がSIN 0度になる時間で CR時定数回路のステップ電圧の60%、さらに1/2周期したところでほとんど100%になるわけです。

立ち上がり部分で抵抗にかかる電圧は定常状態より少ない値のMAX値から下降します。これは上記のように充電電圧が0から始まるために充電電圧はこの時点で定常状態よりも高くなっているからです。 このように早くに下降が始まるのでその後の1/2周期で抵抗、充電電圧とも正常状態に復帰できるわけです。

このようにいびつになりながらも定常状態に復帰するのですが、充電電圧が0Vを通過する 時の印加正弦波との位相差はその後ちじまりません。 これが位相差になるわけです。

電流の発生は抵抗が無い、capacitor単独の場合に比べて少なくなるので、充電電圧も capacitor単独より小さくなるわけです。 逆に言うといびつになりながら1/2の周期で定常状態に復帰できるだけの振幅に充電電圧は落ち着くということなのでしょう。 興味深い反応です。


位相遅れは最大で90度となりますが、90度遅れるためにはcapacitorの電圧は0に近くなってしまいます。 capacitorの電圧が0に近いということはすなわち抵抗の電圧降下と印加電圧のカーブがほぼ等しいということすなわち、抵抗のカーブは電流のカーブを反映したものであるので、上図において抵抗のSINカーブが90度の点というのはCOSカーブの回始点0度と同じわけでここから定常状態が始まるわけなのでこれ以上位相は遅れないということであり、これはつまるところcapacitor単体回路での電流と電圧は位相が90度遅れるということからくる反応なのです。 またいかなる場合も電流波形(抵抗電圧波形)と充電電圧波形の間の位相差は90度になります。



<2018/11/07 rev0.1>
<2018/01/04 rev0>