Southren Cross Kid サザンクロスキッド
週刊ヤングマガジン 1982年1/4(1)号〜10/11(20)号 原作・高千穂遥
のっけから個人的な感想だが、この『サザンクロスキッド』のヒロイン、
ユウキ・リカが賢アニィ女性キャラの中で最も可憐な美少女ではないか。
この時期、俺が熱心に読んでいた賢マンガは、『5000光年の虎』と
100てんコミックス『魔獣戦線』。あとはせいぜい『ザ・ジョークマン』。
ソコヘ、切り盛りしていた店へ現れた街の暴れ者にただたじろぐ、
美少女…である。正直「え?コレが賢ちゃんの絵?」とマニア歴の
浅い俺は、恥ずかしくも疑ってしまった。
まあ、それはさておき高千穂遥先生ですよ。
当時のSF界重鎮ですよ。『ダーティペア』『クラッシャージョウ』ですよ。
永井豪ファンクラブ元会長ですよ。この頃中学生だった
俺には天上界のヒトだった高千穂先生と石川賢が組む!というだけで、
お祭ですよ。
その上、メカニックデザインは高千穂先生率いる
「スタジオぬえ」!線が多い!ディテールがウソっぽくない!
色々トンガってる!正直舞い上がってましたね。キッドのバイクを
模写しまくってました。
〜講談社ヤングマガジンKC(新書判)全2巻(1巻1982.8.10初版 / 2巻1982.11.10初版)〜
そうそう、この作品の魅力って「バイク」なんですよ。
当時っていえば、ガンダムブームの最中。『ガンダム』から入って
ハインラインの『宇宙の戦士』読むというマニアがSFファンから
眉しかめられてた時期なんすが、そういう宇宙空間が「正しい」
とされていたご時世に、バイク一台の他は肉体一つで敵に向かう
復讐鬼のガンマンていう設定にシビレましたね。
物語の冒頭、まずそれが語られるワケですよ。ロボット相手に
訓練しているキッド。彼が「かあさん」と呼ぶコンピュータに
よる教育で、キッドの肉体は人類の限界域まで引き出されてい
るらしい。そして彼は自らの復讐のために、「母さん」の下を
離れ、宇宙へ身一つの旅に出る。
宇宙のエネルギー体系を変える、ある鉱石の鉱脈を見つけた
キッドの父は、組んでいたマイク・デビラスに裏切られ、
ボロ布のように殺される。キッドも半死においこまれるが、
復讐の執念で生き延び、今ココからその復讐のゴングがなる!
というスタート。ヒロイン・リカの店を荒らし、父を殺した荒くれ達は、
その配下。行きがかり上、二人は旅をともにすることになる。
ついでにキッドが持ち込んだ宇宙船の設計図を見て、ついていく
コトを決めるメカニック・ビリー共々、旅が続く、とこういう話。
同時期(というかやや先行していた)『5000光年の虎』とどうしても
比較され、もう一つの評価ではあるこの作品。宇宙という舞台、
鉱石の奪い合いで殺された父の復讐といった設定の共通点に加え、
身一つとはいえ虎よりは小道具が多くて、賢ちゃんぽくない、
高千穂御得意のチーム構成の主人公など、
ハードな賢ファンは敬遠するのかも知れない。でもね。
〜講談社ヤンマガKCスペシャル全2巻(1巻1986.8.18初版 / 2巻1986.10.18初版)〜
でもね、俺結構好きなんだけども。人間の肉体限界であるという
ところから繰り広げられる、やたら髪がツンツンでグルグルおめめの
おねーちゃんの、パワードスーツ剥ぎ取ってしまう戦いやら、
超能力の醜い男相手に、顔をゆがめ骨を軋ませ、歯を食いしばる
戦いと、見せ場はキチンと用意されている。
で、案外見逃せないのが、メカニックのビリー。最初は等身高かった
のに、ラストへ向かって縮みまくり、冗句満太郎状態へ。で、
メカ好きの血が騒ぐ彼は、無闇に小物メカ作るんだが、こういう遊びが
賢ちゃんオリジンぽい。
大体役に立つのか?という類で、コーヒーポット専用ロボとか
工具が意志もって動いてたりとか。同時期の賢ちゃん原作アニメ
『サイボット・ロボッチ』のデザインワークとリンクしてる
ディテールも面白く、味気のないメカにキッドが豪ちゃんの
似顔絵描いてしまったり(「ナガイゴウ カカレテシマッタ」と泣く)、
コメディリリーフとしても機能している。
物語自体、「父の復讐を成し遂げる」という割合真っ直ぐな話
だけに、もっと寄り道する話を見たかったのは山々だし、最後も
いささか強引かなと思えるが、「総統」と嘯くマイク・デビラス
の基地の中で繰り広げられる、キッドへの洗脳とそれを意思の力で
吹き飛ばす戦いは必見モノ。もうダイナミックなグルグル目ン玉が
全開。
絵的には、少年マンガカラーから大友克洋風を取り込み始めた頃で、
もう一つこなれてない印象も正直あるが、お陰でユウキ・リカの
ようなサプライズもあるワケで、当時以来基本的に復刻がないのが
残念だなあ。(新書判とヤンマガKCの間で改変はナシ)
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