ビデオコミック『魔獣戦線』(1989年版オリジナルビデオアニメ)



ビデオコミック『魔獣戦線』
製作・発売:徳間ジャパン/販売:徳間コミュニケーションズ

1980年代後期、オリジナルビデオアニメが急速に市場を広げたこの時期、原作の表現をそのままに、しかも原作連載時に駆け足となったラストをアニメオリジナルの展開で制作するという触れ込みで、満を持してアニメ化されたのがこの「ビデオコミック」版。(上の画像は全3巻出揃った後に、LD化されまとめられた初回限定のBOXセット版の外箱。)

監督は、出崎統氏のスタッフとして『あしたのジョー2』『コブラ』などに参加した大賀俊二氏。作画監督は当時スタジオZ5での仕事で人気を博していた、本橋秀之氏。シリーズ構成・脚本担当が、ライター・脚本家として人気だった会川昇氏(当時の表記)。

当時、「あの」『魔獣戦線』が「あの」会川脚本でアニメ化されるというコトで、ファン的にはどんな風に変わってしまうか…と戦々恐々としながら初回第1巻の発売を待っていたのだが。

フタを開けてみれば、細胞の化け物と化した研究所の慎一から、巨大サルをぶち殺すまでの流れを過不足なくケン・イシカワ的ケレン味たっぷりのセリフを交えながら展開。声優陣も違和感なく、本橋氏の絵は期待通りシャープで、大賀監督の演出も師匠譲りの抑制と開放が交じり合い、原作リスペクトでありながらアニメとしても不満のない作りとなっていた。

以後、2巻までで原作のほとんどを消化し徐々にオリジナル要素を含み、同巻ラストでは慎一が源蔵から魔獣の力をすべて奪われるという展開。翌年発売の3巻ではマリアの死から親子対決が描かれる。原作から導き出されるであろうストーリーラインは外しておらず、安定した作りであった。ただ最後の神への闘いを見据えた慎一vs源蔵の親子戦に至る描写は、やはり非常に形而上的な概念へ飛ぶために、舌戦となってしまっているのが会川氏らしかったが…。主人公・慎一にブレがなく、容赦ないバイオレンスがエスカレートしながら風呂敷が広がっていく、賢ちゃんアニメとなっている。


各巻ともジャケ絵は石川賢先生描き下ろし。VHS版・LD版とも同じ。

単発版、限定BOX版の二種が存在したこの作品だが、限定BOX版にだけ全80ページの豪華なブックレットが付属している。プロット・シナリオを基にした内容紹介、本橋氏のキャラクター設定画、スタッフ一覧、会川氏のコメンタリーの他、

石川賢インタビュー3ページ!!

アニメ作画参考用描き下し、慎一最終形態イメージ画!
同じく13人の科学者勢揃いスケッチ!


表紙絵は限定BOXと同じイラストを使用。

…やばい。やば過ぎだ。おまけにインタビューは『魔獣戦線』だけでなく、プロフィール、ダイナミックプロ入社時やデビューの経緯、「少年アクション」連載時の想い出など、他では知るコトの出来なかった賢ちゃんの横顔が、明らかにされている。ココまで石川賢ファン冥利に尽きる編集があっていいのだろうかっ!というほどの貴重な情報源であった。1990年当時は、まだまだ「石川賢」という作家を「"とダイナミックプロ"の一員」以上にピックアップするメディアがなかったのだ。

デビュー時に注目していたのは「永井豪」と「ジョージ秋山」という話や、『それいけコンバット隊』は豪ちゃんがアタマだけ描いていたネームから発展させて考えた話、終了1、2回前に「少年アクション」休刊が伝えられて慌てた話など、最重要事項が惜しみなく盛り込まれている。たとえLDを観る術はなくとも抑えておくべき代物だろう。


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