EARLY石川賢の部屋-4-

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Shurabakkure 修羅場っくれ

〜週刊少年チャンピオン 1971.8/16(34)号・8/23(35)号〜

「ギャグまんが界のサラブレッド・石川賢が贈る時代ギャグの大迷作!」とはキャッチコピー。お、賢ちゃん得意フィールドじゃん!やったね!...というわけで、賞金稼ぎの<修羅場の三次>が主役。こいつが田舎訛りを持ってて、それ指摘されるとキレるのね。

1話で立ちはだかる敵が、また賢ちゃん趣味。刃渡り1mはあろうかっていう刃物で、追手の首をチョーン!と斬るなり叫ぶ。「おれっちの首にかかってる 賞金が欲しいんでしょー ヒヒヒヒ」...というやいなや、もう一本取り出して合体!巨大なハサミになるっ!で、景気良く追手を一蹴したところへ三次登場。

対抗する武器はナゼか、中華どんぶりと長いハシ。特に理由も語られぬまま、森の中での闘いへGO!で、三次にとってはこの敵が記念すべき500人目の賞金首。賢ちゃんらしいワイルドなセリフを吐くぞ!

記念もあってゆっくり楽しみながら殺してやるっス!

...ああ、たまりませんわ。で修羅場の三次、案の定、敵に田舎訛りを突っ込まれて大いにキレます(笑)

2話は、妖怪の頭領の生け贄になったカワイコちゃんと「チュー」するために三次、妖怪退治。しかもキスシーンで終わるという賢ちゃんマンガ、奇跡の一本(笑)。


Hashire KOICHIRO 走れコウイチ郎

〜別冊少年チャンピオン 1971.8月号〜

...トビラ見るなり...やばいなあ、コイツ(笑)タイトルは『走れコータロー』のパロディなワケだが、競馬マンガかというとさにあらず。いいかね星くん、

これは賢マンガ唯一と言っていいラブコメなんだよ!

惚れた女の子に好かれるために、空手で己を鍛えて告白したコウイチ郎。しかしチビでデブが嫌いな上、今現在の出版コードでは書くわけには行かない身体的欠陥と方向音痴を責め立てられた上、空手は趣味じゃないといわれる。

で、愛する彼女の好む陸上部に入部してハチャメチャやるという話。だが星くん、ここからが大事だ。「アーン!」と泣きながら走るコウイチ郎の姿を見て何と、

彼女がコウイチ郎を見直して終わるんだよ!


Yakekuso JANBO やけくそジャン坊

〜週刊少年チャンピオン 1971.9/13(38)号〜10/4(41)号
掲載号は9月〜10月なんだけども実際は8月発売、「夏休みビッグプレゼント」として連載された作品。 …というか、「やけくその新連載」ってなんだ。「やけくそ」って。 同時期にマンガの神様が『やけっぱちのマリア』連載していたからか(いや)。

この年は賢先生、『修羅場っくれ』の時代モノ、『走れコウイチ郎』の学園モノと描いて来て、 主人公のキャラ設定をカチッと決めたメソッドに忠実に、プロフィール作りから 入ったような作品。恐らく「ジャン坊」の名前は、主人公が「チビ」なのに やけくそになると体に似合わぬバカ力を発揮、盛大に「ジャンボ」に暴走するという ギャップを表したネーミングだ。そうなったら敵も味方もありゃしない バイオレンス…『魔獣戦線』と何が違うか…っていう。

流石賢アニィ、開幕早々意味の分からないバイオレンスが展開されている。 敵はマスク番長集団「デストロ団」。夏休みの宿題が終わり浮かれて街に出た女子学生を次々とさらい、 空き地に並べたガラスケースに昆虫採集のごとく、素っ裸で陳列する。

「きっとナイトは現れる」と信じる女子学生の前に現れたのは、引っ越してきたばかりの 主人公ジャン坊だっ。だが彼は弱い。ただひたすらボコられて飛ばされて電車に轢かれて… 絶体絶命通り過ぎてようやくキレるヒトだった。やけを起こしたら最後、 デストロ団も女子学生たちも見境なくバイオレンスの餌食になった!…というところで、 最後のコマは賢ちゃん登場、「来週も ジャカスカ やけをおこすよー ヒヒヒ」って、アニィ。

2回目は、下着も付けない素肌に上着の袖をざっくりと通したジャン坊の姉・ジャジャ江さん登場。 大学2年生で「かげき派」をしている。しかも案の定、「反権力」を口にはするが、 行動には思想も何もありゃしない。ただただ火炎瓶を投げ、破壊活動するだけの暴力学生である。 ああ最低です、いや最高です賢アニイ。

そこにたまたま居合わせた、ジャン坊の彼女が巻き込まれ、ジャジャ江と機動隊にぐちゃぐちゃに されて恋は終了。やけになったジャン坊は大暴れ…という。ジャジャ江さんの方がキャラ立ってます。



3話目はジャン坊の学校へ。先生相手にキレ倒し、スカトロ対決に。いよいよダイナミック らしくなってくる。というよりもう、「やけ」なんだか「やけくそ」の「くそ」だけ 取りだしてないかと。

最終回・4話目は、ジャン坊・ジャジャ江に弟のジャリ男でハイキング。弟を虐待する 展開かと思えば、近眼の上に少しアタマのネジが外れたハンターが、ジャン坊たちを 動物と間違えて、猟銃で狙う…という展開。賢アニイのふるさと・栃木県那須郡烏山町 が舞台だ。

もはや「やけ」起こすっていうフォーマットすら投げ倒した最終回のグダグダ加減は、 「ああやっぱり」というダイナミック信者のハートを射ぬいてくれるコト請け合い。

Gekiga-Roadshow Shinkai seihuku
劇画ロードショー・深海征服

〜別冊少年チャンピオン 1973.9月号(20世紀FOX映画『深海征服』より)〜

別冊チャンピオンは他に比べ、メディアミックス的な作品が多い。というのも、映画のコミカライズ『劇画ロードショー』とスターやアイドルの伝記マンガ『スタードキュメント』というのをかなりの間、柱に据えていたからだ。主な描き手は桜多吾作、田辺節夫、岡崎優、やまと虹一。そういう意味では賢ちゃんが執筆したこの作品は、希有な例かも。

海底牧場の開発のために、深海での様々な実験を重ねていた「ラボ」が突然の海底地震で消息を絶った。生死も不明な彼らを救助するために立ち上がったのは、最新鋭潜水艦・ネプチューン号とそのクルーたちだっ!

ネプチューン号は、巨大化したや現代科学では考えられないや恐竜帝国の一味のようなたち相手に大奮戦。「放射能の影響か...」と脈絡なく呟くも、なんだかんだで脱出して生きていた「ラボ」のクルーと無事合流、冒険を終える。

結局魚の謎は明かされないので、注意。

この号の巻頭ピンナップに、ペット屋の軒先の水槽で撮ったような冒険風景を交えて、映画『深海征服』が紹介されている。寡聞にして、俺はこの映画を知らないのだが、東京12チャンネル(現・テレビ東京)の日曜昼辺りにやってそうですね。...映画マニアの賢ちゃん、辛かったろうなあ(苦笑)。

ところでこの時期、賢ちゃんは『ウルトラマンT』の真っ最中。ゆえに、主人公に光太郎さん入ってます。ネプチューン号の制服にもZAT入ってる気が。また同じ号には、蛭田充が、全く暖かくない家族同士の遺産を巡った殺し合いを描く『昭和四人衆』、岡崎優があっさり赤ん坊を捨てるカップルと、大して気にせず一人生きてく赤ん坊と、それ見て精神状態が通常の状態でなくなる老警官を描いた『OH! じいちゃん』など、面白いマンガがてんこ盛りだゼ!


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