Go-21トピックス

このページは現在社会で注目を集めている話題をとりあげてそれについてのコメントを掲載して行きたいと
考えています。会員各位の投稿も期待しています。JERの他SkillStorage.com  ”ビジネス虎の穴”からの
コメントもご紹介します。

2001年4月15日までのBack Numuberはこちらへどうぞ→


2002年1月13日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      02.01.06
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            マイナスの非ケインズ効果
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不況期に景気を刺激する為に、減税や公共投資の財源として公債を発行する等、財政拡大を行っ
ていくというのが「ケインズ政策」。

このケインズ政策は、当然の事乍ら、政策発動時には財政を悪化させるものですが、政府の債務残
高が少ない場合においては、国民の多くは「同政策発動に伴う一時的な財政赤字を埋めるべく財政
再建策は、彼ら国民が死んだ後の遠い将来に実施される」と考えるため、国民は将来の増税を織り
込む事なく行動し、当初目論み通りに景気を刺激する事でしょう。

しかし、現在の日本のように、政府の債務残高が大きい場合においては、話が異なってきます。国民
の多くは「今、減税が行われても、近い将来に財政赤字を減らすべく、増税が必ず行われるだろう」と
いうような予想をする事でしょう。

となると、国民は、将来の可処分所得の減少を警戒して、一層消費を抑制します。
又、経済政策の手詰まりが露呈されてくると、国に対する信認が低下し、国債のリスクプレミアムが
高まり(=金利が上昇し)、これも民間設備投資や個人消費を抑制する要因となってしまいます。

このように、財政拡大政策が結果的に民間需要を減少させてしまう事を「マイナスの非ケインズ効果」
と呼んだりします。では、財政再建を行えば、全てが片付くのか・・・(続く)。
次回は、プラスの非ケインズ効果について。  【編】

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■起業家支援特集:所得税還付のはなし
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サラリーマン、OLの方々は年末調整で源泉所得税の還付または追徴され給与所得の源泉徴収票
が交付され、所得税の精算は終わったと理解されてはいませんか?
確定申告を条件に税金が還付されることが多々あります。例えば、わりとメジャーなのが、年間10
万円以上の医療費を支払った場合(医療費控除)とか新規に住宅を取得した場合(住宅取得控除)
など。

つい忘れてしまいがちなのが、サラリーマン、OLの方々が退職して会社を起業する場合(但し、起
業準備期間中給与所得が無い、或いは個人事業者として起業し、赤字の場合等々、一定の条件を
満たしている必要があります)。

財布の中を多少なりとも豊かにするため、そして、自らの税金に対するマインドを向上させるために
も、手続きが少々面倒かもしれませんが、チャレンジしてみては。

(この申告は、退職した翌年以降5年以内であればいつでも提出できます。又、退職した勤務先から
交付される給与所得の源泉徴収票が必要となります。)【編】




2002年1月6日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.12.31
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    構造改革の読み方(1)〜構造改革と小さな政府
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今回より、新連載がスタート致します。日本経済最前線で御活躍されている【案山子】氏からの御寄
稿です。御質問などお気軽にお寄せ下さい。 【編】→<mailto:jerep@jerep.com>

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はじめまして。このほどこのJAPAN ECONOMIC REPORT上で「構造改革の読み方」連載を開始する
事になった【案山子】です。この連載では、最近メディアに登場しない事はない「構造改革」について
わかりやすく解説するとともに、メディアになかなか登場しないその背景や見方について、皆さんと一
緒に考えていきたいと思います。どうか宜しくお願いいたします。

●構造改革とは?●

最近、この「構造改革」ほど頻繁に使われている言葉はありませんが、ではその意味について正確
に答えられる人はどれくらいいるでしょう? 皆さんなんとなく小泉さんがやってくれそうな改革、です
とか、日本の景気回復の最後の切り札や、痛みを伴うもの、という見方はされているかもしれません
が、実はその意味は実にあいまい、人によってとらえかたも様々です。「不良債権の処理」や「財政
赤字問題」といった問題は割と簡単に定義出来るのに、それらをまとめた「構造改革」という事になる
とあまりにもスケールが大きすぎるのか、なかなか簡単に説明出来ないのが実状です。
そこで、ここではちょっと乱暴ですが構造改革を以下の一言で表してみたいと思います。

それは、「労働力(ヒト)、経営資源(モノ)、資本(カネ)を非効率な低生産性部門から、高生産性部
門に移行させる事で日本経済の真の実力を発揮させる事」
−−−でも、これだけでは当たり前すぎて何のこっちゃよく分かりませんね。

そこで、具体的にどのような改革を目指しているかと言うと、
1)市場原理の導入による「小さな政府」の実現  と
2)バブルの後遺症の抜本的処理(不良債権問題)  そして
3)危機的な状態にある財政赤字の解決  という事です。
最近出版された経済財政白書を開くともう少しいろいろと細かい説明がされていますが、ここでは敢
えてこの3つにまとめました。

●「小さな政府」●

しかし、何故「小さな政府」なのでしょうか?そもそも「小さな政府」とは何でしょうか?−−−それは
言い換えるならば、小泉さんも言っているように「民間に出来る事は民間に任せる」という事、裏を
かえせば「政府は極力何もせず、自由競争に任せる」という事ですね。

これは歴史をひも解いてみると良く分かります。実は日本と同じように欧米諸国も低成長にあえいだ
時期がありました。石油ショックとインフレでにっちもさっちもいかなくなった1970年代です。
企業がバタバタと倒産し、ストが頻発、生産活動は低迷するという大変な時代、今の日本と非常に似
ていました。

そんな中、79年に登場した英国のサッチャー首相は改革を断行、日本の特殊法人と似た当時の国
営企業を次々と民営化、政府は基本的に介入せず、市場原理に任せるという姿勢を貫きました。
このショック療法の結果、英国では一時的に失業率が上昇、企業の倒産も増加し大変な状況となり
ましたが、結局数年後に経済は回復、今ではむしろ欧州一強靭な経済を誇るに至っています。

同じような事は米国もそうです。80年に登場したレーガン大統領は規制を大胆に緩和、企業の自由
競争に任せるという姿勢を貫き、この結果シリコンバレーに代表されるようなベンチャー企業群が花
咲き、90年代の米国経済の急成長、ITブームへとつながったのです。ご存知の方も多いシスコ・シ
ステムズやデル・コンピューター、AOLやサン・マイクロシステムズなどといったハイテク企業は皆
この時代に登場したベンチャー企業だったのです。英米の改革成功を目にした他の欧米各国はその
後こぞって構造改革に乗り出します。特に欧州では通貨統合が控えていた為、参加を希望する国に
厳しい経済条件を課し、構造改革を迫りました。

一方、70年代、80年代当時、日本経済は欧米諸国の苦悩を尻目に、絶好調でした。当時は得意の
製造業が高品質、低価格を背景にまさに世界へ進出していった時期で、日本経済は日の出の勢いで
した。そしてそのまま株価と地価の右肩上がりの神話を背景にバブル景気へと突入していった訳です。
しかし、90年代、突如日本を深刻な病が襲います。バブル崩壊という病が。

最初は風邪をこじらした程度かな、と思っていた訳ですが、この病は深刻でなかなか治りません。
心配になった政府は景気対策の為、公共投資という薬で乗り切ろうとします。最初は数兆円程度で
済んでいたのですが、一時的に効いてもすぐ元に戻って悪化してしまいます。そこで、ついに小渕政
権の時に17兆円という巨額の景気対策を打ち出します。だが、これも結局は一時的な効果に終わ
りました。まるで麻薬中毒患者のような有り様の日本経済...、そうこうしているうちに政府の総額
666兆円という巨額の借金の存在が重くのしかかってきました。
もう、これ以上借金を増やす事は出来ません。もう一つの策の金利引き下げもゼロ金利で限界に
来ています。一方で企業は低収益や赤字に苦しんでいるという有り様です。まさに20年前に欧米
諸国が直面していたのと同じような状況に陥った訳です。

「構造改革」はこのような日本経済のにっちもさっちもいかなくなった状況のもと、出てきた議論なの
です。「もはや政府が民間企業の面倒を見る時代は終わった、これからは民間が民間で力強く生き
ていく環境を作らなければいけない。最初は敗れ去る民間企業もあろうが、長い目で見れば結局そ
れが自立出来る筋肉質の日本経済を築くことになる。」と、ようやく日本の社会が欧米から20年遅
れで気が付いた訳です。

小泉総理はまさにそのような環境の中で登場しました。今の特殊法人改革もまさにこの文脈の中で
生まれて来たのです。

以上、構造改革についてその経緯を説明させて頂きました。初回なのでやや丁寧に説明したつもりで
すが、このあたりの事情をよくご存知の方には当たり前の事だったかもしれませんね。
次回移行、特殊法人改革や不良債権の問題、構造改革をめぐる推進派と抵抗勢力や守旧派と呼ば
れる人たちとの対立点などについて説明していきたいと思います。 【案山子】




2002年1月1日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.12.24
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             日銀、タブーに風穴?
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日銀は19日に開いた金融政策決定会合で、金融の量的緩和策を拡大する事を決めました。

金融機関が日銀に預ける当座預金の残高目標を「6兆円を上回る」から「10〜15兆円程度」に引
き上げ、又、長期国債の買入れ額も月額6千億円から8千億円に増額しました。

今回の措置は、大手企業の相次ぐ破綻に伴う信用リスクの拡大、及び、これに伴う金融システムの
動揺の防止等が主な狙いです。しかし、2001年2月から続く一連の金融緩和・量的緩和策で金融
政策の手は打ち尽くしており、今回の措置は実体経済への影響は殆ど無いと見るのが妥当でしょう。
(通常ならば、この時期の金融緩和策の実行とくれば、「日銀からのクリスマスプレゼント」等という
形容句も付いたりするものなのですが。)

一つ今回の金融政策で目新しいことは、不動産を裏付け資産とする資産担保証券(ABS)を、金融
機関が日銀からの資金供給を受ける際の適格担保として加える方針を打ち出した点です。

日銀はこれまで、株式や不動産の買入や担保への活用をタブー視してきました。
これは、日銀資産の健全性、通貨の価値を維持する為には、価格変動リスクの高い資産を日銀の
資産に組み入れるのは避けるべきという考え方に基づいているのですが、それにもかかわらずの今
回の措置に踏み切ったというは、デフレの阻止により真剣・深刻に考える必要があるという姿勢の現
れとも言えます。

もっとも、ABSの中でも適格担保となるのは、かなり格付の高いものに限られると思われる事、市場
で流通しているABS発行残高の金融市場に占めるシェアは極めて小さい事から、実体経済への直
接的な影響はまずないでしょう。何れにしても市場は、日銀よりも政府の動きに注目しているのです。
【編】

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■用語解説:日銀当座預金残高目標の拡大
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金融政策は、従来は「金利」の調節が主軸でしたが、現在は当座預金残高という「量」の調節を行っ
ているので、俗に「量的緩和策」と言われています。

さて、この日銀当座預金、金融機関が日銀に対し預けるもので、日銀が金融市場に資金供給をすれ
ばするほど、行き場の無い資金がこの当座預金に滞留し、残高が拡大します。そして、この当座預金
は金利が全く付きません。従って、金融機関にとっては、金利の付かない当座預金に資金を寝かして
おくよりは、利息のもらえる企業への貸出し等の資産にシフトした方がよいのではというインセンティ
ブが通常であれば発生する筈です。

とはいっても、実際は、信用リスクをとってまで企業に貸出しを行うよりは、日銀の当座預金に資金を
寝かしておいた方が安全だという考え方が強く、強力な効果はありません。

デフレ下で量的緩和策が効果を発揮する為には、先ず、景気回復ありきなのです。

ところで、昔、スイスで当座預金にマイナス金利を課した事例があります。預金しているのに、利息を
支払わなければならない!?さすがにこれは預けている側から見れば、たまりませんね。金融機関
は慌てて当座預金を引き出し、結果的にインフレ、経済混乱へ。経済はなかなか上手くいかないもの
ですね。  【編】




2001年12月23日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.12.16
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          悲観論スパイラルからの脱出
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先週は、注目されていた日銀短観(12月調査分)の発表がありました。

大企業・製造業の業況判断DIは▲38と、9月調査から5ポイント悪化しましたが、市場の事前予想
よりは良い数字でした。

米テロ事件等の影響から悪化に拍車がかかると思われていましたが、意外にも(?)悪化ピッチが
鈍化した形となりました。

(1)米株が反発し、米国景気の早期回復期待等も見られ始めた事、(2)円安進行期待が高まった
こと等が悪化に歯止めのかかりつつ要因の一つとも考えられますが、やや違和感は有ります。
上記に加え、(3)水準が水準なだけに(過去最悪水準)のために、これ以上悪化しづらいというのが
実状に近いでしょう。

ところで、上記のように「意外にも(?)」等と感じてしまう理由は、メディアによる過度な悲観論醸成
にある意味洗脳されているせいもあるでしょう。「財政出動による景気回復を」と言えば、財政破綻
論が展開され、「痛みを伴う構造改革を」と言えば、その痛みの直撃による大恐慌論が展開される。

結局、どういう選択をしてもメディアの唱える「悲観論」から逃れられない「悲観論スパイラル」に陥
っているといっても過言ではありません。

このスパイラルからの脱出には、同時多発テロ後の米国のように「一致団結せよ」とまではいけず
とも、企業や個人が将来の景気に対する信頼感を回復させる事を主眼に置いた政策、究極的には
「政治力」が必要不可欠。しかし、与党内での意見統一すらできない状況下(皮肉にも、与党内で
の意見対立(首相vs抵抗勢力)が、小泉政権の高支持率を生み出しているわけですが)、脱出へ
の道は容易な事ではないでしょう。(という論調も「悲観論」を醸成してしまっているのかもしれませ
んが。。) 【編】




「JAPAN ECONOMIC REPORT編集部 Copyright(C), 1998-2001」
URL<http://www.jerep.com/>




2001年12月16日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.12.09
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             綱渡りのアルゼンチン
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前号のテーマ「エンロンショック」−−配信直後に米エンロンは米連邦破産法(チャプター・イレブン)
の適用を申請。国債金融市場で発行された1050億円の円建て債券がデフォルト(債務不履行)状
態へと陥る事となりました。又、青木建設も民事再生法申請し、ゼネコン淘汰の流れも加速しそうです。

信用不安に投資家が過敏となる中、投資家達の懸念が集まっているものの一つにアルゼンチン経済
危機の動向が挙げられます。

約1300億ドルもの債務を抱えるアルゼンチン政府は11月初旬に国内外の債券投資家に対して債
務交換に応じるように提案。簡単に言えば、「高金利で短期の借入」を「低金利で長期の借入」に換え
てくれ、というもの(常識の世界ではあり得ない話ですが)。応じてくれなければ、デフォルト(債務不履
行)となってしまいます、と言っているようなもので、この債務交換が上手くいったところで、延命策に過
ぎません。

当然、信用不安は増す一方で、今月1日には、同国政府が預金の引出し額を週250ドル迄、海外送
金額を月1000ドル迄(除、貿易取引決済)に制限する措置を発表。

これもまた、同国に外貨準備(アルゼンチンぺソを外貨に交換できる余力)が無くなっている緊急事態
を宣言しているようなものです。

アルゼンチンは、円建て債を海外市場で約1200億円も発行しており、日本国内の地方金融機関や
個人投資家等が多くを保有しています。「エンロンショック」が過ぎ去っても地雷の種は尽かない状況
です。【編】



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2001年12月09日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.12.02
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           エンロンショックと信用不安
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先週は、「信用不安」を想起させる出来事が相次ぎました。日本国債格下げ、新潟鉄工の更正申
請、そしてエンロンショック。金融市場での混乱ぶりは相当なものです。

例えば、格付会社フィッチは、28日になって、エンロンの発行する社債の格付を「BBBマイナス」
から「CC」へといきなり十段階も引下げましたし、米S&P社も投資不適格へと大幅格下げを行い
ました。

格付会社が知り得ないリスクにより、経営危機が急速に表面化したわけですから、格付会社を一
方的に責めても仕方がないですが、格付会社がこんなに混乱している状態ですから、いったい投
資家はどうやって信用リスクを判断していいのやら。

アナリストについてもまた然り。エンロン株の投資判断を示していたアナリストの9割は、「強力な買
い」「買い」「継続保有」を推奨。「売り」を推奨していたアナリストは1割程度しかいませんでした。
「証券会社の下にいるアナリストは客観的・中立的な判断ができない」という通説がまたしても実証
されてしまった事となります。

投資信託会社の運用するMMF(マネー・マネジメント・ファンド)の幾つかも、エンロン債をポート
フォリオに組み入れており、今回エンロンショックを受けて元本割れ。もちろん、元本割れは十分あ
り得る商品特性なのではありますが、販売会社は、個人投資家に対してそういう特性よりも「安全
性」を前面に出してアピールする傾向が強いのが実状でしょう。

世界的な不況が進行する中、投資家が知り得ぬリスクが顕在化する確度は今後ますます高まる
と思われ、金融市場に台頭する信用不安の払拭にはしばらく時間がかかりそうです。【編】

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■用語解説:エンロンショック
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85年にテキサス州とネブラスカ州の天然ガスパイプライン会社が合併した電力・天然ガス等の卸
売り取引で世界最大手の企業。

事業多角化で通信事業等も手掛け、同事業資産を担保にし、資金調達を行っていたが、ITバブル
崩壊に伴い、資産の担保価値が急落。一転して経営危機に。

米エネルギー大手のダイナジーが買収するとの報を受け、信用不安に終止符が打たれると思われ
ましたが、その後、買収合意破棄の報を受け、株価が再度急落。NYダウも大きく下落。

会社更生法の申請に踏み切れば、負債総額は約150億ドルと、過去最大(最悪)の数字となり、米
国のみならず日欧の金融市場にも深刻な影響が出る見込み。


「JAPAN ECONOMIC REPORT編集部 Copyright(C), 1998-2001」
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2001年11月25日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.11.18
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             家計の貯蓄行動に異変
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日本の消費が伸びないのは、将来不安から貯蓄を崩してお金を使わおうとしないから?−−よく言
われている事ですが、2000年の日銀資金循環勘定を見るとある異変に気づきます。

なんと、今まで常に大幅に資金余剰(貯蓄超過)であった家計部門の余剰幅(貯蓄額)が急速に減
っているのです。理由は様々な要因があるのでしょうが、要因の一つとしては人口の高齢化による
影響が挙げられています。

ここで、人口の高齢化と貯蓄との関係に関する代表的な仮説を2つ紹介しましょう。

一つはダイナスティ仮説。各家計は、永遠に存続する王朝(ダイナスティ)を形成するかのように行
動し、子供に財産を残すことを前提に貯蓄行動をとる為、結果的に、高齢化が進もうとどうであれ、
貯蓄率は変化しないというものです。

一つはライフサイクル仮説。各家計が一生涯を通じて獲得できる所得の流入を考慮しながら、望ま
しい生涯の消費パターンを決めると考えるものです。

この仮説においては、個人は所得の増加する若年期から壮年期にかけて将来の消費のために貯
蓄を増やす一方で、老齢期に入って所得が低下した時にそれを取り崩して生活水準を維持しようと
するため、家計全体の貯蓄率は老齢人口割合が高まるほど低下していきます。

従来は、前者の仮説が実状に近いと思われていましたが、考え方が後者に変わってきたと考えれば
、上述した家計の貯蓄が減少している現象と辻褄が合います。

そろそろ団塊の世代が定年期を迎え、中高年消費の大部分を占める時代となりますが、この団塊の
世代を対象とした大手広告代理店の調査によると、人生や生き方に関する価値観・意識は「常に自
己啓発や知的好奇心を持って生きていきたい」が75%で他の世代よりもかなり高く、他の世代の数
字を大きく上回ります。又、消費面では「好きなことには思い切って出費する」が64%で、将来よりも
現在を楽しむためにお金を使う志向が強く現れています。

こうした、団塊の世代を中心とした新しい高齢化社会の到来、そして、彼らの貯蓄や消費に対する意
識の変化というものも、金融・財政政策とは全く別の次元で、消費回復にじわりと影響を及ぼしてくる
可能性があるかもしれません。 【編】



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2001年11月18日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.11.11
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              高齢者の貨幣愛
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日銀が公表している資金循環勘定では、金融機関、非金融企業、家計、政府等、各部門毎の資金
余剰(或いは不足)状況を調べる事ができ、これをみると、家計部門が恒常的に資金余剰(貯蓄超
過)の状態にある事も知る事ができます。

さて、デフレの時代は、モノやサービスの価格が下落し(消費財の低価格化)により名目支出額が
抑制されますから、貯蓄額を増やせる家計部門が受益者に属する部門の一つと言う事ができます。
とりわけ、既に貯め込んできた金融資産残高の実質価値が増加する高齢者は最も顕著な受益者
と言えるでしょう(もちろん、個人レベルでみれば被害者も多数おりますが)。

本来は、貯蓄は将来の消費を目的に行われるものですから、予想外に貯蓄が増加した場合は、そ
の分が消費に向かうと考えられてきました。つまり、デフレ経済においては、貯蓄の実質残高の増加
によって消費が増えるという見方です。

しかし、実際は、受益者である高齢者は、いくら貯蓄を増やしても将来に対する不安が満たされる事
なく、貨幣を愛する(現預金等の貨幣性資産を必要以上に確保しておこうと執着する)意欲が全く衰
えないという状況となっています。

デフレ脱却の処方箋の一つは、高齢者貯蓄を解凍するという(例えばリバースモーゲージ等の高齢
者資産の流動化策をより普及させるとか)、インフレターゲット策とは全く無縁の策なのかもしれませ
ん。            

(実は2000年度の資金循環勘定を見ると家計部門の資金余剰状況に異変が生じており、「高齢者
の貨幣愛」論を覆す見方もでてきています。それについては、また次の機会にでも紹介します。)
【編】

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用語解説:貯金の実質残高の増加
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銀行に預金をしていても、金利はごく僅か。貯蓄残高が殆ど増えないばかりか、振込手数料等で減っ
てしまう事すらあります。

でも、デフレでモノの価格が下がると、同じ金額の貯金であっても、沢山のモノを買う事ができますよ
ね。このように、物価下落の影響を加味すると貯金が増加したかのような感覚を覚える事となります。
「貯金の実質残高の増加」というのは、この現象を指しています。【編】

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読者からのメール
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読者からのメール紹介のコーナーです。公的部門による土地買い上げについては異論も多いかと思
いますが、土地の流動化政策の遅れは明らかに経済の活力を減退させているとの見方が強いはず
です。JEREPでは読者の皆様からの投稿をお待ちしております。又、投稿者に対するご意見・ご感想
も責任もって転送させていただきます。 【編】

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私は経済が専門ではありませんが、インフレとデフレの議論を興味深く拝見しております。インフレ・
ターゲットをデフレ下で設けるのは効果がないと思います。インフレを沈めるために設けるものだと
思います。

今のデフレの原因で一番馬鹿げた人為的政策ミスのデフレが土地の流動性を阻害している税制だ
と思います。これは株式相場で株の売買が出来にくい状態を作るのと同じです。もっと土地の流動
性がなければ自由主義経済は成立しません。

もう一つは中国問題に代表される産業空洞化の問題です。この対策は技術革新をどんどん進める
ことですが、この対応が遅すぎる。今の技術はハード$ソフトの技術であり、それを受け入れるシス
テムが社会になければ、技術革新が進まないのです。ですから、社会システムに関わっている人材
の教育が大切です。政治家、官僚の再教育が重要でしょう。国民が何を望んでいるか、ということだ
け見ていては、赤字の垂れ流しになります。次の時代の社会システムは、こうするんだというヴイジ
ョンが大切です。そのヴィジョンを実現するスピードを上げることです。

私の実感では、80年代から、技術革新が緩慢な流れになっています。技術革新は表面的な革新で
はなく、根本が革新されていなければならないのです。例えば、ウインドウズXPが今度出てきますが
、95、98とあってXPの流れでは駄目です。初めからXPを目標にすべきなのです。ですから、日本
のメーカにも大いにチャンスはあったのです。つまり、次の世代というのは桁違いを実現しなければな
らないのです。その為には今の研究陣容に任せていては駄目です。世界中から良質の研究者を集
めて、今の研究者を入れ替えることです。何故なら、今の研究指導者の多くは二番煎じを目標にして
いることが、そもそも駄目なのです。

赤字会社の建て直しには、赤字になる当然のことが行われてきているのです。儲けている企業は今
でも儲けています。その上で、研究者の数を今の10倍にもっていくことです。日本は工場は中国に
行くしかないのが現状です。したがって、日本は世界の研究開発を引き受けることで生きていくしかな
いでしょう。

また、不良資産は四の五の言わず、政府が早く金を出して買い取ることです。その為に日銀がお札
を増刷するのです。インフレになる危険が無ければ、増刷しても良い筈です。何故かくも遅いのでし
ょう。スピードが遅すぎるのは効果的には犯罪と同じです。こういう誰が考えても正しいことをやるの
に、時間をかけすぎています。図体が大きくて動きが遅いなら、図体を小さくすることです。

国民ももっと経済を勉強し、いかに経済学者が間違った理屈をこねて結果的に国民をバカにしている
か現実を知る必要があります。今の政治家や経済学者のレベルを信じてはいけません。
ノーベル経済学賞受賞者も間違っていたのです。まだまだ書きたいことがありますが、長くなるのでこ
の辺で止めます。

【La Bohe,me】    




2001年11月11日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.10.23
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            旅行業界中抜きの脅威
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秋らしい季節が続きます。行楽の季節ですね。

今回は急成長する宿泊サイトについて。航空会社の航空券購入サイトと並んで、旅行業界の構図を
揺るがすものと言えるでしょう。また、テロの影響を受けて、国内旅行関連企業にはフォローの風が
吹いております。

JTBによると、同社サイト経由商品の2000年度総取扱高は102億円と前年比42%増加、特に国
内宿泊取扱額は57億円と約3倍以上に拡大しています。
これだけ見ると、同社にフォローの風のようにも見えますが、同社の国内旅行個人グループ総取扱
高の約1.6%を占めているに過ぎず、どちらかというとネット戦略は出遅れている(沢山の営業社員
を抱えている中、出遅れざるを得ない)状況です。

そんな中、大手旅行会社にとって脅威となりつつあるのが、宿泊予約サイト「旅の窓口」の急成長。
http://www.abc-store.com/cgi-bin/tm1?09
同サイトの登録会員は127万名を超え、1日1000名以上のペースで増えています。登録している
宿泊施設も国内8000軒以上、海外4000軒以上。毎月のホテル予約数も30万泊を超え、1年前
の2倍以上という破竹の勢い。

人気のキーワードは、「早さ・安さ・利便性」。泊まりたい場所・観光地・設備から、自分の条件に合っ
たホテルがすぐ分かり、更に、ネット予約での料金の方が通常より20%以上、中には40〜50%も
得するようなホテルが多数。勿論、24時間いつでも予約が可能。終電を乗り過ごしたり、突然の残
業などで急に宿泊施設が必要なビジネスマンにも強い味方。又、ネットならではの特性が十分に活
かされているが、旅行先の観光情報やお勧めスポットを教えてくれる「旅の窓口掲示板」。宿泊され
た方の感想等、宿泊施設のクチコミ情報や観光スポットの情報など生の声が掲載されているので、
宿選びの際に大いに参考になります。

仲介手数料が通常の旅行会社よりも少なく、集客力もある事から、宿泊施設サイドからも熱い視線
が向けられています。定期的に開催されている説明会には百名近い宿泊施設関係者が集まり、活
気を呈しています。

急成長する宿泊サイト。差別化が図りにくい中、先行する同社に対し、大手旅行会社も脅威を感じざ
るを得ないでしょう。 【編】


「JAPAN ECONOMIC REPORT編集部 Copyright(C), 1998-2001」
URL<http://www.jerep.com/>





2001年11月04日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.10.27
------------------------------------------------------------------------------
   
読者からのメール(「Baby-Sitting Economy(01.10.21)」に対して)
------------------------------------------------------------------------------


インフレターゲット導入については、過去何度か述べている通り、あまり意味が無い(効果が無い)
というのが弊見です。今回も多数お便りいただきましたが、読者の皆様のご意見もそういう傾向が
強いようでした。

「順序が逆」論等については、9月30日号でも少し触れましたが、今回の読者からの質問にも触れ
られているもう一つの特殊且つ大きな問題−−「(将来不安に起因する)高齢者の貨幣愛」の問題
には、また後日にでも。

読者からのメール(含、質問)をいくつか掲載させていただきます。

クルーグマンのBABY SITTING ECONOMYに関して質問があります。
クルーグマンのホームページで原文を発見し読んでみましたが、クルーグマンの「クーポン1枚で
今なら24時間の子守りを頼めるけれども、夏になったら20時間の子守りしか頼めなくなると知っ
たら?・・・それだったら今お出かけする方がトクだ、という夫婦が出てくるでしょう。」論法に矛盾が
あるのではないかと言う事です。

なぜ矛盾かというと、こういう想定をするということは、とりもなおさず中央銀行がいつでも「クーポ
ン1枚で何時間の子守りを頼めるか」を決める(あるいは変更する)権限をもっているということを
前提していることになるからです。しかし、これはクルーグマン自身が行った当初の設定と明らか
に矛盾します。

というのは、「24時間の価値」をもっていたクーポン券を夏までに「20時間の価値」にまで低下さ
せるためには、クーポン券を一杯ばらまいて、クーポン券のインフレを起さなければなりません。
しかし、「いくら利子を低くしてクーポンを借り易くしても」誰もそれを借りて使おうとしないというのが
当初の状況設定でした(流動性のわな)。つまり、クーポン券の価値を低下させることはできない
ということです。そういう状況のもとで、どうして「夏になったら20時間の子守りしか頼めなくなる」
と国民が予想するようになるのでしょうか。

つまり、クルーグマンは一方では中央銀行が「インフレを人為的に作り出せない」状態を前提にし
ておきながら、他方では「インフレ期待を人為的につくりだすことができる」ことを想定して論を進め
ているわけです。「インフレを作り出すことが出来ない」状態のなかで、なぜ「インフレ期待だけは
作り出させる」のでしょうか。クルーグマンはこの点を説明しなければならないはずです。
ちなみに、「インフレターゲット」は単なるターゲットであって、ターゲットを設定しさえすれば、イン
フレ期待(予想)が国民の中に生まれるという保証はどこにもありません。実際、日銀は「消費者
物価がプラスになるまで」量的緩和を続けるといっていますが、日本国民は近い将来本当に物価
上昇率がプラスになるなどとは誰も思っていません。

要するに、クルーグマンは問題を解決したのではなく、当初自ら設定した前提を勝手に取り外して
しまったというだけのことなのです。
どうお考えになりますか?ご意見をお聞かせいただければ幸いです。 【saito】

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーーーーー

Kruger が説明しているBaby-sitter協同組合のモデルと現在日本が遭遇している経済状況のモデ
ルは同一視出来ない。そして、Baby-sitterモデルからの結論であるインフレ目標論は意味をなさな
いと思います。

理由1:
Krugerのモデルでは、クーポン券を多く発行するということは、それと引き替えに協同組合のメンバ
ーがBaby-sittingの作業を発行することを義務づけているわけで、この条件をもとにメンバーはクー
ポンを自由に使うことが出来る。
言い換えれば、クーポンの増刷はメンバーの作業を義務づけている代わりにクーポンを自由に使う
権利も保証しているわけである.
しかし、現状の日本経済の場合、日銀が紙幣を増刷したとしても、その紙幣そのものは、日銀(国)
の資産であり、国民の資産ではもちろんなく、企業・個人が勝手に使える訳ではない。
企業、個人が使うとしても日銀から借りて使うことになる。
この点で、Krugerモデルとはことなる。現在企業が借金を返済することにやっきになっている(資金
需要が減少している)段階で、増刷した紙幣を使おうとするわけがない。

理由2:
インフレは紙幣が増刷されたから起こるものではない。インフレの直接的な原因は企業の投資意欲
,個人の購買意欲でありこれらを通してしか起こり得ない。これが起きて初めて増刷された紙幣が多く
あれば、インフレの原因になりうる。
インフレを目標にする話は、因果関係を全く逆に捉えているとしか思えない。電気の話しに喩えれば、
電圧をかけて電流が流れるのであって、電流を流して電圧が発生するわけではない。

【chebysheff】

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−ーーーーーーー

感想としては非常にわかりやすい喩えで、金融緩和やインフレターゲットについて良く理解することが
出来ました。とても面白い話だったと思います。

さて、質問ですが、この話の続きでこんな状況が追加されたらどうなるのでしょうか?−−「非常に寒
い冬が続いていて、その後の気象長期予報でも、梅雨が長く冷夏になると予想されている場合、各々
の夫婦はクーポン券を使って寒い冬に出かけられるのでしょうか?

おそらくは出かけるのに良い環境条件が整ってから行くのではないでしょうか?」−−これは私なりに
今の日本の状況である、リストラ、社会福祉、年金などの将来不安が山積し、世界経済動向もどうな
るかわからない状態を反映して喩えてみました。お答えいただければ幸いです。

【piece prayer】





2001年10月28日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.10.21
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     「Baby-Sitting Economy」
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10月9日号に「流動性の罠」について「また別途」と書きましたので、それに関連した話でも。

98年の8月に、経済学者クルーグマン氏が著した「Baby-Sitting Economy」。

自ら「幼稚なたとえ話」という断わりをつけていますが、「不況」「流動性の罠」「インフレ目標」などを
身近な話に置き換えて説明しています。むろん、流動性の罠を抜け出す為の「インフレ目標」導入に
ついては、賛否両論で、彼の見解が「正」というわけではないのですが(ただ、今議論となっている点
を2年前から問題提起(しかもかなり執拗に)していたという意味では評価はできるのでしょう)、頭の
整理にはちょうどいいかと思いますので、一部補足を加えつつ簡単に要約して紹介してみます。

           ・     ・     ・

子持ちの夫婦がたくさん住んでいる町がありました。彼らは子守りを雇うお金を節約するために、ど
こかの夫婦が出かける時に別の夫婦が子守りをしてあげるという相互扶助の仕組みを作りました。

ただ、出不精な夫婦も入れば、出かけるのが大好きな夫婦もいるので、他人の子を1回子守りする
と、クーポン券1枚わたす規制にしました。

しかし、多くの夫婦は、いざ出かける時のためにクーポンを貯め込もうとする。そうすると、町に出回
るクーポンが減り、他の夫婦にクーポンを取らせないようにと、皆が外出を控えるようになる。
これが「不況」です。

そこで町役場がクーポンを追加で発行したら、みんな安心して外出。クーポンを使うようになって問
題解決です。(これが「金融緩和(量的緩和)」です。)

           ・     ・     ・

次に、長い旅行をする時、手持ちのクーポンが足りないととても不便なので、クーポンを町役場から
借りられる仕組み(利子もつけて)を作りました。これによって、必要な時にいつでも借りられるので、
手持ちのクーポンが少なくてすみます。そして、皆が外出する季節(好況時)にはクーポンの利子を
高くして出来るだけ外出しないようにし、みんなが外出したがらない季節(不況時)には利子を低くし
てできるだけ外出したがるようにしました。

でも、ものすごく寒い冬がやってきました。いくら利子を低くしてクーポンを借り易くしても誰も外出しな
い。他人の子守りをしてクーポンを増やすこともできないので、自分のクーポンも使わずに貯めこむ。
だから余計にクーポンを増やす機会が減って、だれも外出しない。・・・と悪循環が進んでいきます。
これが、(「流動性の罠」に陥っている)「日本の現状」です。果たしてこの解決策は?

難しいことではありません。たとえば貯めこんだクーポン1枚で今なら24時間の子守りを頼めるけれ
ども、夏になったら20時間の子守りしか頼めなくなると知ったら?・・・それだったら今お出かけする
方がトクだ、という夫婦が出てくるでしょう。(このようにインフレ期待を人為的に作り出すのが、「イン
フレターゲット(インフレ目標)」策です。)


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2001年10月21日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.10.14
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今日もまた35615人の子供たちが死んだ。
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空爆。誤爆。テロ措置法。炭疽菌。テロ不況。−−−来る日も来る日も新聞紙面ではテロ関連記
事が一面トップ報道。テレビ番組ではワイドショーでも空爆のシーンが何度と無く映しだされます。

確かにNEWSです。経済にも少なからず影響があります。でも、何か、大切な何かが見落とされて
いるような(私は、大それた事を言える程の人間てはありませんが)・・・・

以下にフランスの新聞「Journal de l'ile de la Reunion」の9月24日の投書欄に掲載されていたコラ
ムを紹介します (筆者:Dominique Ramassamy氏/日本語訳:森野栄一氏)。 【編】

     今日もまた35615人の子供たちが飢餓で死んだ。
     犠牲者:35615 (FAO)
     場所:この惑星の貧しい諸国で
     特集号:なし
     新聞論説:なし
     大統領のメッセージ:なし
     非常召集:なし
     連帯の表明:なし
     黙祷:なし
     犠牲者追悼式:なし
     フォーラムの開催:なし
     教皇のメッセージ:なし
     株式市場:変わらず
     ユーロ:回復
     警戒水準:変わらず
     軍隊の移動:なにもなし
     犯罪を識別する推測:なにもなし
     ありそうな犯罪の委任:豊かな諸国家

     世界人口の20%がこの惑星の資源の80%を消費している。ニューヨークへの攻撃が非
     人間的なものとみなされているのであれば、年間、1300万の子供たちが死ぬにまかされ
     るのを私たちはどのように言い表したらいいのか?


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2001年10月14日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.10.09
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       金融政策の限界
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先週、植田・田谷日銀審議委員が、金融政策に関する講演をそれぞれ行いました。

講演内容の共通点として挙げられるのが「金融政策の限界」。

掻い摘んで列挙すると「ゼロ金利政策下の量的緩和(日銀当座預金残高の増加)は殆ど意味が無い。
/長期国債買入れ増加は、(当局の思惑とは正反対に)長期金利上昇を招くリスクが高い。
/インフレターゲットは、正常な経済情勢においては一つのオプションとなり得るが、デフレ下ではター
ゲットを設定しても手段が無く、実現困難。
/円売り介入は、財務省の管轄で、日銀が行う政策対象外。
/デフレ脱却の為には、(日銀による金融政策よりも)政府の政策対応が最重要」等々。

「流動性の罠(liquidity trap)」−−10年前、大学で受講した経済学の教科書によく出てきた用語です
が、まったくピンと来ない用語でもありました。
(一応簡単に言うと、名目金利がゼロとなり、いくら資金を供給しても、金利効果(金利を引き下げて需
要を創出する事)が限界に達している状態(更に簡単に言うと上述のように金融政策が全く無効の状
態)の事を指すのですが)−−まさか自分が「流動性の罠」に陥っている経済状況に直面しようとは!

(「流動性の罠」については別途コラムにて説明したいと思います)  【編】

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   短観は景気の下振れを追認
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10月1日発表された9月調査の日銀短観は、企業の業況感悪化が幅広い業種へと広がっている事
を示唆する内容となりました。

2000年度の企業設備投資計画はこの時期としては異例の下方修正(通常は、期初に保守的な予
想を立て、徐々に上方修正するパターンが多い)となり、又、売上・利益計画も前回迄の「増収・増益」
から「減収・減益」へと反転。

今回の調査結果に米テロ事件が完全に織り込まれているとは言えず、企業を巡る経済環境は引き続
き厳しいものとなりそうです。    【編】


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2001年10月7日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.09.30
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    インフレ目標導入の手段
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今年も残り3ヶ月。あっという間ですね。それにしても、エコノミストの景気見通しは当らない。

大抵のエコノミストは年初は、下期回復型の楽観シナリオを描いていましたが、見通し修正の
嵐(いつもの事ですが)。エコノミストの考え方を参考にするのはよいですが、結論をまともに
受け入れてはならないという事なのでしょう。

通常の財政・金融政策も行き詰まり、最近はインフレ目標の導入を巡る議論が活発化していま
す。一口に「インフレ目標導入」といっても、その政策手段については、各人バラバラに主張して
いる状況ですので、ここですこし整理をしておきましょう。

一つは、日銀当座預金の目標値や日銀の国債買切額の引き上げという現状の政策の延長線。
ただ、日銀が市場に資金をジャブジャブに供給するこの政策は、現状を見る限りにおいては「有
効で無い」という事を確認するものに過ぎないでしょう。

一つは、金融緩和策と積極財政政策との組み合わせ。政府が国債を発行(日銀を含む銀行部
門が買取)し、大規模な公共投資を行っていくもの。しかし、これはまさに「財政規律の喪失」そ
のものとなってしまいます。

一つは、日銀が社債やCP(コマーシャルペーパー=企業が発行する一年内の約束手形)等の
民間債務を購入し、企業の投資を促すもの。しかし、企業が借り入れが容易になったとしても、
投資対象がなければ全く意味がなく、順序が逆です。

一つは、円安政策。円安にして、輸出競争力を高める(同じ円価格の商品の外貨建価格が安く
なるので)とともに、輸入物価を高め、デフレからの脱却を図ろうというもの。しかし、企業のリス
トラ努力が緩まり構造問題を増幅させる等のデメリットもあるし、又、政治経済学的な枠組みだ
け考えれば、世界全体が不況下にある中で、「日本だけ円安を」という選択は困難なものです。

あまり議論はされませんが、市場に任せるのも一つの方法です。「デフレを甘受する→強い企
業は生き残り、問題企業は淘汰される事で構造改革が進展→日本経済に競争力・成長力が
生まれる→デフレからの脱却」というシナリオ−−構造改革とデフレ脱却の両立も不可能では
ないのでは。   【編】



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2001年9月30日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.09.24
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    突発的事件と景気の関係
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先週よりNY株式市場も漸くスタート。案の定、大幅安を記録したわけですが、スタート時にあるニュー
ス番組のアナウンサーが神妙な顔つきで時事刻々と下落するNYダウの数字を見ながら「僅か30分
で何百ドルも暴落しています、これから一体どうなるのでしょうか」と(しかも、ここで番組終了)。
−−取引開始僅か30分だからこそ、売りが殺到しているのですし、「予想の範囲内」の下落であるに
も関わらず、表面的な数字を過剰に表現して報道する姿勢は少々問題かと思います。とはいえ、「予
想の範囲内」とあまり達観しすぎるのも禁物で、取り敢えず状況を追ってみましょう。

          ・      ・      ・

今後の米国景気について懸念されるものとして、先ずは、テロを受けた消費者マインドの悪化、及び
、それに伴う企業業績の悪化。統計によれば、テロの後の小売売上高は大幅に減少(週末は全国民
がテレビ画面に釘付という極めて短期的な現象によるものとも考えられますが)。次に、テロの緊急
対策費としての財政支出の拡大をきっかけとする財政規律の喪失、及び、それに伴うドルの信認低
下。その他、エネルギー価格の上昇等も挙げられているでしょう。

確かに短期的には景気下押し要因ですが、米国の報復が短期間で収束(この可能性は低そうです
が)、或いは、長期化しても経済に与える影響が軽微な程度であれば、今回のテロ事件を受けた財
政・金融面の迅速な対応により、来年以降は反転する可能性も秘めています。(何しろ、財政面では
ブッシュ大統領が200億円の追加財政支出枠を要請したのに対し、議会は400億円にして可決し
てしまうという大盤振る舞いですし、金融面では0.5%の利下げを緊急決定してしまう対応ぶりです
から。)

歴史の前例をみても、大きな突発的な事件の後の株式市場は短期的には必ずマイナス方向に振れ
ますが、その後ほどなく回復する傾向が顕著に見られます。

BARRON'S誌の記事によると、「90年の湾岸戦争では米国がイラクに最後通牒してから3週間で4
.3%下落したが、バクダッドに攻撃してから2ヶ月間で20%も上昇」「41年の真珠湾攻撃直後4日
間で6.5%下落したが、1ヶ月後にはその半分を戻している」等とあります。

従って、「突発的事件」は基本的には中立要因と考え、突発的要因を除いたベースで経済のファンダ
メンタルズ(基礎的条件)を冷静に見ていく事も必要でしょう。(その結果、やはり下降トレンドという判
定になってしまうのかもしれませんが・・) 【編】


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2001年9月23日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.09.16
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   株安は構造改革に資するか
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先週最大のニュースは、言う迄もなく、米国で起きた同時多発テロ事件。

93年の世界貿易センタービル爆破や95年オクラホマ連邦ビル爆破など、米国関連のテロ事件は
何度も起きてきましたが、今回ほど大規模なものは過去になく、又、地震やハリケーンのように規模
は大きくも速やかな事後処理がなされるという性質の事件でもありませんから、金融情勢やマクロ経
済にも少なからずの影響を及ぼす事でしょう。

金融マーケットは、米国が休止状態の中、東京市場においては株安、ドル安に。株価については、テ
ロ事件があると自動的にヘッジファンドが損保株等をカラ売りするプログラムを設定しているとか、テ
クニカルな要因もありますが、報復合戦のエスカレートによる世界経済への悪影響(原油高、物流機
能悪化等)を考えても自然な反応。為替も、通常であれば「有事のドル買い」という言葉に従うのです
が、今回ばかりはさすがに米国を軸とした問題でありますし、追加軍事支出の発生(いとも簡単に議
会で可決されてしまった・・)に伴う財政規律喪失懸念なども考えれば、素直な反応でしょう。 

先週は、テロ事件をきっかけとして日経平均株価は遂に1万円を割り込みました当該事件を抜きにし
ても、なるべくしてなったものと言えるでしょう。

日本経済の抱える様々な構造的な問題・・・(1)金融機関の持つ不良債権問題が依然未解決のま
まである事、(2)そういう中で世界景気の悪化が加速している事、(3)財政悪化により財政出動余
地も限られる事、(4)地方財政も著しく悪化している事、(5)特殊法人問題(特殊法人の抱える不良
債権やその他構造的問題)が顕在化しつつある事、(6)日本国債の格下げ問題、(7)ハイテク企業
の予想以上の業績悪化等々、(8)企業淘汰が遅々として進まない事・・あげだすと際限無い状況で、
一時のカンフル剤的な過去の経済対策等により、騙し騙し支えてられてきた日本経済から、蓄積した
膿がここにきて一気に吐き出されてきたというような印象もあります。

97〜98年にかけても株価が大きく下落する等、深刻な経済状況となりましたが、今回とは背景が明
らかに異なります。つまり、前回は「金融システム危機」が主因となったもの。

従って、金融システムのセーフティーネット(安全網)が整備された段階でこの不況は解消されました。
しかし、今回は「マクロレベルの経済の停滞」という、捕らえ所の無いような大きな要因によるもので、
特に90年代の米国の持続的な経済成長の調整局面という側面が強い事も考えれば、一過性・局地
的な現象とは考え難いでしょう。

          ・      ・      ・

テロ事件のニュースには隠れましたが、国内での大きなニュースは、マイカルの民事再生法の申請。
上述(8)の企業淘汰加速への転機を連想させるもの。株価が下落し、非難する声もありますが、「株
価下落→金融機関の体力劣化→不良債権処理の加速→問題企業の淘汰→塩漬け状態の経済に活
力の芽生え」と繋がっていけば、構造改革に資するのではないかと期待したいと思います。   【編】


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2001年9月16日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.09.09
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   GDP発表と新聞記事見出し
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7日、内閣府は4−6月の国内総生産(GDP)を発表し、実質GDPは前期比0.8%減と、3四半期
ぶりにマイナス成長に転じました。鉱工業生産指数など7月分以降の経済統計を見る限り、景気の
悪化傾向は持続しており、12月に発表される7−9月期GDPもマイナス成長になる可能性が高い
でしょう(金融市場では既に織り込み済みですが)。

同発表に対する日経新聞夕刊の記事見出し「名目GDP年率10.3%減」は、ぱっと見た感じだけ
では凄まじい不況を連想させるものでした。

但し、年率というのは「今回の前期比の増減が仮に4四半期続いた場合」の数字であって、あくまで
も「仮定」の数字。マイナスを4乗するわけですから、必然とマイナス幅が増幅されるものである点に
は留意する必要があります。

又、名目というのは物価の影響を加味しないベースの数字。例えば、GDPが100%個人消費で構
成されるとしましょう(実際は60%程度ですが)。個人消費が前期比10%減っていて、物価も前期
比10%減っているとすれば、名目GDPは、前期比10%減少。一方で、物価の影響も加味した実
質GDPは前期比横ばい(消費が減少したのは、需要が減ったからではなく、物価が下がったからと
いう要因で説明できる)となるわけです。従って、一般的には需要の強さを測る上では、「名目」では
なく「実質」GDPを見ていきます。

とはいえ、実質GDPもマイナスですから、物価が大きく下がり、経済が畏縮する悪循環(モノの値段
が先行き下がると思う→設備投資や消費を手控える→物が売れない→更にモノの値段が下がる)
の最中にいるのも事実。こういう時は負債を減らし、貨幣性の資産(現預金やMMF等)を保有してお
くのが賢い防衛法なのですが、そういう人が増えると益々設備投資や個人消費がが落込んでいく・・
そういう時代なのでしょう。   【編】

====================================
■都市再生というテーマ
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政府は景気対策の柱として、雇用対策と都市再生を軸に置いています。「都市再生」というテーマは
、小泉政権発足時からクローズアップされ(6/24号御参照)、以来6〜8月にかけて関連銘柄として
不動産株が軒並み上昇してきました。

しかし、不動産市場の動向に目を向けると、例えば、「オフィスの空室率」は、ある仲介大手の調査し
たデータによると、年初までは新築の空室率はほぼゼロだったにもかかわらず、3月には6%台、7
月には9%台と急上昇。IT不況や米国景気の減退によるIT企業や外資系企業の需要が急速に後退
している事による事から、不穏な動きを示しています。 

これまでの一連の株価上昇は、「期待感」と「消去法(IT関連株からの逃避買い)」によってもたらさ
れたものであり、その持続性をみる上では、ファンダメンタルズ(企業業績や需給動向など経済の基
礎的条件)を見定める必要があります。    【編】



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2001年9月9日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.09.02
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    雇用指数は遅行指数
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厳しい景気の現状を大々的に示しておき、与党が景気対策を取り纏めるというシナリオか−−−
最近は政府筋のリーク(情報をマスメディアに事前に漏らす行為)が目立ちます(完全失業率が
過去最悪の5%台に乗せるとの報道、与党の景気対策に関する緊急提言(素案)に関する報道
など)。

案の定、完全失業率は過去50年間で最悪の数字。そして、景気対策の提言。

構造改革の痛みとして失業の増加は不可避であり、今後の焦点としては、雇用対策を柱とした2
001年補正予算編成となります(雇用対策が重視される理由としては、一つは構造改革(不良
債権処理など)に伴うリストラや倒産で失業が増えること、一つは公共事業投資に比べればお金
もかからないこと等が挙げられます)。

私たちが景気を読む上で注意すべきは雇用指数は遅行指数であるという点です。
失業率が悪化する現象というのは、次のような景気悪循環の後半において出てくるもの(「設備
投資減退→生産減少→企業業績悪化→賃金カット・雇用削減→失業率増加」)であり、失業率
が悪化している時は既に十分に景気が悪くなっているという事を意味しています。

従って、失業率が過去最悪という時に、緊急景気対策をというよりかは、設備投資等の景気の先
行指数に陰りが見られた時に対策は打たれているべきで、何をいまさらという感じを受ける方もい
らっしゃる事でしょう。

尤も、この過去最悪の失業率悪化も、通過点に過ぎない(今後も悪化傾向を辿る)という事を考
えれば、雇用のセーフティーネットの整備はいずれにしても急務である事には間違いありません。
【編】

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■用語解説:先行指数と遅行指数
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景気指標も色々ありますが、景気の動きに先行して動くもの(先行指数)、一致して動くもの(一致
指数)、遅行して動くもの(遅行指数)の三タイプがあります。
そして、景気を見る上では、先行指数で景気の先行きを占い、一致指数で現状を捉え、遅行指数
で動きを確認するという形となります。

例えば、先行指数としては機械受注、住宅着工など、一致指数としては生産指数、電力消費量、
遅行指数としては完全失業率、消費支出などが挙げられます。

失業率は、日本では遅行指数とされていますが、米国では先行・一致指数的な位置付けにありま
す。これは、米国においては、リストラのスピードが早い事、統計の集計発表が早い事、などによ
るものです。同じ指標でもお国柄の違いで、見方も変わってくるのです。  【編】


「JAPAN ECONOMIC REPORT編集部 Copyright(C), 1998-2001」
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2001年9月2日

             【SkillStorage.com】  ”ビジネス虎の穴” 

      presented by skillstorage http://www.skillstorage.com/

                       No-03
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 テーマ:
           
ネット広告拡大にブレーキ 収入源多角化急ぐ

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事例:  

急成長してきたインターネット広告収益の拡大に減速感が出てきた。

景気の先行き不透明感に加え広告主がネット広告の効果を厳しく評価しており、広告の出稿が伸び悩
んだ。2000年度通期の計上利益は前期比2.5倍と大幅増益になったものの、今後は収益の多角化を
急ぐ。

ヤフーの1-3月期の期中平均広告主数は879社で、前の四半期から27社減った。
従来に引き続いて1-3月期も出稿した企業数は横ばいだったが、新規広告主が125社から97社に減少
したのが響いた。

気の減速や米ネット広告市場の縮小で、企業がネット広告効果を見なおし始めたようだ。売上高の伸び
率は98年以降、四半期ベースで20-40%増と好調だったが広告主の出稿意欲は年明け以降に急速に
冷え込んだ。

このためヤフーでは消費者向けの電子商取引拡大やネット競売の有料化、企業CMの配信代行などを
強化する。2-3年後には広告以外の事業の売上高率を現
在の9%から20%以上に引き上げる。

4月に広告営業体制も刷新した。広告主との直接契約も取りやめ、すべて広告代理店経由で広告を集
める。電通など大手代理店の協力も強化して、多額の広告費を出している新規の大口広告主の獲得
を目指す。

(2001/4/21  日経新聞)

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解説:

多角化というキーワードは新聞や雑誌などに溢れており、実際に事業を継続させていく上で避けては通
れない問題なのかもしれない。

まず事業の多角化の目的、意義について整理したい。多くの場合多角化を行うのはこれまで本業として
収益を上げていた事業対し特化するのに何らかの問題があるためである。たとえば市場の成熟や強力
なライバルの存在などだ。

多角化戦略の採用動機としては以下のようなものが上げられる
()内はヤフーの行動

○主力製品の需要の停滞
 (ヤフーは広告需要に先行き不安)
○収益の安定化
 (需要の不安定による伸び悩み)
○リスクの分散
 (広告以外の事業の売上高率を引き上げる)
○余剰経営資源の有効利用
 (余剰は無く、広告代理店の積極利用)

また多角化を試みる上でその事業を次のような視点から見るのが一般的だ。
()内はヤフーの行動

○標的市場を定義
 (個人ネットオークション市場、ネットショッピング市場 BtoC)
○その市場のどの方向に進むかを明確化
 (運営主体として市場の拡大、シェア拡大、収益源としての確立)
○事業毎のシナジーの有無
 (ブランドを有効活用、知名度の利用)
○競走上の利点、独自の能力
 (圧倒的な認知度の高さ、ユーザ数)

多角化を実行する場合に意識することが必要なのはやはり自社の強みは何かをはっきり認識すること
だ。常に年頭に置かれるのは自分達の一番得意なもの、他と比べて勝っている部分に焦点を置くことが
大切だ。

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OPINION:

「心理戦の勝者 歴史が教える65の絶対法則」(講談社)より面白い話しを紹介します。エビと経済と格
闘技には、古来密接な関係があるというのです。
以下略文です。

「100年前のイギリスも、50年前のアメリカもその時代の経済大国であった。そして両方ともその時代、
エビの消費量が世界最大だったというのだ。現在エビの消費量世界1は日本である。
だから日本のエビの消費量が減ったら亡国の兆しの可能性が有る。
 
また格闘技ファンが増えるのは経済の停滞期に多い。実際これまでの石油ショックの時期と一致してプ
ロレス人気が高まったという事実も有る。
現在日本国内で格闘技は大変な人気が有る。」

経済予測には様々な指標や方法がありますが、直接経済とは関係のないところにも相関関係が存在す
るらしいですね。目からウロコの経験でした。




2001年8月26日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.08.19
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日銀は量的緩和拡大に踏み切ったが
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8月14日、日銀は追加の金融緩和策に踏み切りました。概要は下記の通り。

(1)金融市場調節方針の変更−日銀の当座預金残高をこれ迄の5兆円程度から6兆円に拡大。
(2)長期国債買入れ増額−これまで月4千億円ペースで行っていたものを、月6千億円に拡大。

このタイミングで金融緩和に踏み切った背景は、最近の経済指標において国内景気の悪化が顕
在化した事、日経平均株価がバブル経済崩壊後の最安値を更新した事等が考えられます。

しかし、日銀が今回の金融緩和措置を確たる根拠や理論的裏付けを持って実行したかというと、
この点についてはかなり疑問。昨今の日銀首脳のコメントは量的緩和の拡大には否定的でしたし
、金融市場参加者とてその実効性を評価する事は無いでしょう。事実、前回3月に金融緩和策を
実施してからも景気は悪化の途にあるわけですし。

結局、もはや金融政策には限界があり、ボールは政府に既に投げられている、つまり鍵は小泉政
権の構造改革の行方にあると言えるでしょう。

9月に発表される4−6月期GDP。政府はこれを見て補正予算の編成等の方針を考えるとしてい
ますが、同指標は恐らくひどく悪い数字となるでしょう。いつもなら、日銀に金融政策面での支援を
求めるなどの圧力をかけるのでしょうが、既に日銀は先手を打っています。又、補正予算の編成
(財政拡大)は構造改革(財政緊縮)のスピードを緩めるもの。何れにしても、今回の金融緩和策
に関わらず厳しい情勢が続くのでしょう。  【編】

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■用語解説:金融緩和、量的緩和
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金融緩和という言葉、学生の頃もなんとなく耳にしていましたが、はっきり言ってよく分からない言葉
でした。「緩和って何を緩めるの?」てな感じです。

イメージとしては「財布の紐を緩める」のと似ています。

日銀は日々金融市場に資金を供給したり、市場から資金を吸収したりして、資金需給を調節していま
すが、金融緩和というのは、資金供給度合を強めるという事。

市場に資金が大量に供給されれば、その資金の運用先を探す人が増える一方、資金を借りたい人
は需給関係から低い金利で資金を調達できるようになる。つまり、金利が下がるわけです。

金融政策は基本的には短期金利を上げたり下げたりするのが一義的な目的だったのですが、今や
ゼロ金利。金利を下げたくても下げれない。そこで、出てきたのが「量的緩和」。

「量的緩和」と巷で言われているのは、短期金利はゼロだけど、そんな事はおかまいなしに、とにかく
量を供給するというもの。資金が市場(直接的には、銀行)に滞留すれば、銀行はとにかく運用しなけ
ればならない。企業への貸出も進み、企業は銀行から借り入れた資金を設備投資等へ回り、内需が
拡大するという期待があるわけです。

ちなみに、現在の量的緩和は当座預金残高を増加させるもの。銀行は日銀に金利の付かない当座
預金口座を持っているのですが、金利の付かない預金が増えても収益は生まれないから、銀行が運
用先探しを積極化させるという狙いです。

でも、実際はいくら日銀が資金供給しても、銀行が貸出をしたくなるような健全な企業は少ない、企業
が設備投資したくなるような魅力的なビジネスは少ないという事で、本当に実効性があるのかと問わ
れると疑問符が付けられているものです。(簡単に説明しようとしてかなり端折りましたが、よく分から
ない事があれば御質問下さい。)  【編】


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2001年8月19日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.08.12
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      二兎を追う路線
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選挙直前の世論調査。国民は「構造改革」よりも「景気対策」を求める声が強いという集計結果が
ありましたが、これは「構造改革を掲げる小泉政権を支持する国民は実は景気対策をもとめている」
というねじれの構図を示唆するもの。「たまごが先か鶏が先か」の議論はよくありますが、「たまごも
鶏も先に」となると、なかなか難しいものです。

先週、6月の法人企業動向調査が発表され、設備投資は4−6月期(実績見込)が前期比▲8.6
%と減少幅を拡大、マイナス幅としては84年の調査開始以来で最大となりました。又、設備投資の
先行指標となる機械受注の7−9月見通しの数字も発表されましたが、前期比▲5.1%とこちらも
大幅な減少。電機通信機械の落ち込みが中心。資本ストックの調整(設備投資の落ち込み)は一
層本格化してくる可能性が高まっています。

このような状況下、10日、国際通貨基金(IMF)は日本経済についての年次報告書を公表し、日本
の成長見通しを前年度+0.6%から▲0.2%へと大幅下方修正しました。結果として「マイナス成
長にしない」という小泉政権の国際公約に異を唱えるものとなっています(尤も、IMFは「構造改革
の推進」については大賛成を唱えているのですが)。

とはいえ、小泉政権は引き続き「構造改革」と「マイナス成長にしない事」という二兎を追う路線を進
めていくのでしょう(公約を守る事は善くも悪くも政治家としての使命ですから)。しかし、金融政策は
手詰り状態、米国経済も減速基調という環境下、自民党内の「抵抗勢力」の声も強まる事でしょうし、
一層厳しい政策運営を余儀無くされる事となるはずです。  【編】


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2001年8月12日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.08.07
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減産→雇用調整→消費低迷というつながり
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景気 日韓の教科書問題。靖国公式参拝問題。北方4島沖でのサンマ漁問題。日韓関係に軋みが
生じています。

教科書問題はの騒ぎの発端は、現行の中学教科書が偏向していると批判してきた学者グループが
4年前「新しい歴史教科書をつくる会」を結成し、独自の2002年度版教科書をつくったこと。結局、
中国、韓国などから「歴史をわい曲している」と批判された歴史教科書は、近現代史を中心に137
カ所を修正するに至ったのですが(例えば、韓国併合を「合法的に行われた」としていた記述には
「一面的な見解を十分な配慮なく取り上げている」と意見がつき、全面修正し、又、南京事件を「ホロ
コーストのような種類のものではない」とした記述も削除された)、中国、韓国などは、引き続き「修正
は不十分」という意見。

歴史は事実に基づくべものですが、この事実を積み上げた歴史の解釈は、その国特有のものとな
り、議論をすると収集が着かないことになるため、お互いの気持ちを先ず理解しようとする事が大
切なのですが、そんな事はおかまいなしに、産経と朝日との間での他紙批判報道等、メディア報道
を通じて対立が過熱してしまったような気もします。

自治体や民間レベルの交流で、日韓高校生のホームステイの相互受入れを行っているところがあ
りますが、最近、韓国側が受入れを拒否をするという事例も出ているようです。国家間の軋轢があ
ったとて、草の根レベルでは暖かい交流を続けていければ、それが何れは関係の修復に寄与してい
くのではとは思うのですが、少し残念。

間もなく、終戦記念日。昔はこの時期、戦争の悲惨さを伝えるドラマ・映画・ドキュメンタリー等が、テ
レビで頻繁に放映されてしましたが、最近は視聴率の問題から少なくなった感があります(気のせい
かもしれませんが)。戦争の悲惨さ、いつの世代迄伝えていく事ができるでしょうか。 


株価の乱高下はさておくとしても、先週発表された経済指標は、足元の景気の減速を示唆するにあ
まりある内容のものとなりました。「在庫積み上がり→生産減少→企業業績悪化→雇用削減→先行
き不安感の台頭→個人消費意欲の減退」という動きが一週間の経済指標の中に盛り込まれるもの
となっています。

30日に発表された鉱工業生産指数は事前の予想通り前月比▲0.7%と4ヶ月連続のマイナス。
前年比で見ると▲8.7%とマイナス幅が大きく拡大しています。積み上がった在庫を減らす為に減
産調整を進めている途上ですが、同時に需要の鈍化が企業の予想を上回っている状況でもあり、
下方トレンドは続きそうです。当初は、在庫調整は、電気機械業種に限られておりましたが、徐々に
一般機械業種等、他の業種への波及の動きがある点についても注意を要します。

6月の失業率は4.9%と過去最悪の水準が続いています。企業の採用意欲も減退しており、新規
求人数が前年比▲1.1%と、24ヶ月ぶりにマイナスに転じています(特に製造業の落込みが大き
い)。先日、三菱自工が希望退職を募って予定数の2割を超える応募に僅か1日で達したとの報道
がありましたが、会社側のリストラ圧力と同時に従業員側の転職意欲も強いという傾向が他社の例
も含めて顕著に見られています。何れにしても、雇用調整は残業時間削減から人員削減へとシフト
しており、完全失業率がまもなく統計史上初の5%台に達するのも時間の問題でしょう。

上述のような、経済情勢悪化と構造改革に伴う痛みに対する身構えと言う要因もあり、家計が財布
の紐を固くしつつある傾向もみられています。6月の家計調査では、平均消費性向(用語解説御参
照)が68.9%と最低水準に落込んでいます。

収入はボーナスアップの影響もあり前年比で改善しているにも関わらず、消費性向が悪化している
のは、家計が消費活動を大幅に畏縮させている事実に他ならないものです。

ある意味、賢明な判断と言えますが、マクロ経済にとってはネガティブな動きで、順風満帆に見える
小泉改革にとって、今後待ち受ける多難な前途の一つと言えるものです。        【編】


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2001年8月5日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.07.29
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                  相次ぐ経済指標に要注目

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景気は低迷していますが、景気循環論者にとっては大歓迎?

「山高ければ谷深く、谷深ければ山低く、山低ければ谷浅く、谷低ければ山高く・・」等とはよく言われ
ますが、ハイテク企業にとっては2000年春をピークとするITバブルを経て、まさに「高い山から深
い谷へ」と移行している状況にあります。

富士通の3千億円の特別損失計上(7月28日日経)、ソニーの大幅減益、日立や三菱電気の数千
億円規模の資材調達費削減(7月27日日経)等がこの現状を如実に反映しています。

そういえば95年頃にもハイテク企業の業績が減速し、リストラがキーワードになった事もありました。
新聞紙面の見出しもいつか見たような見出し。歴史は繰り返すものです。

先週は、日経平均株価がバブル後最安値を更新しました。

前号にも記したように、ハイテク株安に象徴されているITバブルの崩壊、世界的な景気後退懸念、
企業業績の悪化、小泉改革期待の剥落、構造改革に伴う痛み(倒産や失業増加等)に対する警戒
感等が基本的な背景です。

4−6月期の四半期決算を見ても、ソニーやNEC等、ハイテク企業の業績は予想以上の厳しい内
容となっています。当初予定していた、下期の回復シナリオは揺らぎ始めており、今後は生産調整
やコスト削減は至上命題となり、下請け部品メーカー等にも業績悪化が波及していく可能性が高い
事でしょう。

改革期待の剥落も継続。「構造改革が進まない」と指摘するむきはいますが、そもそも1−2ヶ月で
抜本的な改革が進むべくもなく(個人的には徐々に着手されており、その改革の痛みの方が要警
戒だとは思いますが)、又、世論調査では小泉内閣支持率もじりじりと低下しており世論は移り気
なものです。

さて、今週は、経済指標の発表が相次ぎ、先ず30日には6月の鉱工業生産指数が発表されます。

米国経済の減速を受け、IT関連の部品や自動車の輸出は大幅に減少している事を裏付ける内容
となる事でしょう。又、31日には6月の完全失業率、有効求人倍率等の発表。過去最悪の5%台
の大台に乗せるかどうかが焦点。2日は、4−6月期のパソコンの出荷台数の発表。堅調に推移
していた出荷台数の伸びがどうなるか。3日は路線価格の公表。これは、国土交通省が毎年発表
する公示地価を基に、国税庁が売買実例や不動産鑑定士ら専門家の意見を参考に算出されるも
ので、相続税や贈与税の算定基準となるもの。引き続き、地価の下落傾向を示唆するものとなる
でしょう。

米国では3日の雇用統計が最大の注目材料。ハイテク企業を中心とする業績悪化が雇用にどの
程度の影響をもたらしているかが懸念されます。  【編】


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2001年7月29日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.07.22
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             サミットでは日本政府の改革方針は歓迎

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先週は、日経平均株価が2万円を割り込み、TOPIX銀行株指数はバブル崩壊後安値を更新する等
、株式市場には暗雲がたれ込めています。

(1)ハイテク株安に象徴されている景気や企業業績の下振れ懸念、(2)小泉改革期待の剥落と構
 造改革によってもたらせる痛み(倒産や失業増加等)に対する警戒感、等が台頭してきている状況
 が示唆されていると言えるでしょう。

週末に行われたジェノバサミットにおいては、小泉首相は「改革なくして景気回復無し」の持論をあら
ためて強調。中には批判的な意見も出て構造改革路線の変更を余儀無くされるのではとの見方も
ありましたが、先進各国首脳は小泉首相の路線を歓迎し、サミット経済声明の骨子にも「政府の改革
方針を歓迎」との文言が盛り込まれる事となりました。

世論調査では国民の多くが「改革に伴う痛みもやむを得ない」と考えている中、来週29日に実施さ
れる参議院選挙の結果にもよりますが、引き続き政府のスタンスは堅持され、株式相場のトレンド
も継続する可能性が強いと言えるでしょう。 【編】


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               アルゼンチン経済危機
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サミットでは、新興諸国市場の経済問題についても取りあげられました。この一つがアルゼンチン
の経済危機問題です。

先週より、アルゼンチン(以下、亜国)がデフォルトする(国の債務が返済できなくなる)との観測が
高まり、国際金融市場に動揺が走っています。97年のアジア危機、98年のロシア危機のように局
地的な危機が、各国に連鎖していき、日本や米国等も含めた国際金融危機に発展したという前例が
あるだけに、今回も安易に無視するわけにはいかないというわけです。

亜国経済危機は、(1)景気低迷に伴い財政再建が進まなかった事、(2)米国を中心とした世界経
済の下振れにより外需による景気回復の目処もつかない事、(3)各国通貨制度が変動相場制に
移行する流れの中、固定相場制(ドルペッグ制度:1ドルを1アルゼンチンぺソに固定)を維持して
きた事、等によります。

上記(1)及び(2)については日本と同じような問題ですね。去る7月12日、亜国政府は、財政緊
縮に向けて歳出削減策を発表し、取り敢えず野党の支持も取り付けましたが、政権基盤は弱くその
実現性を疑問視する見方も強く、IMF(国際通貨基金)や米国も支援に消極的です。

(3)は、変動相場制の下に作動する自国経済の自助回復機能(自国経済が弱まる→自国通貨安
となる→自国製品の外貨建価格が他国製品と比べて相対的に低下する→輸出における価格競争
力が増す→外需拡大により自国経済が強まる)を持てないという問題です。

この点、97〜98年にドルぺッグ制による苦い思いを体験した多くの国は、変相場制に移行してい
る為、従来ほど世界各国に歪みがあるわけではなく、国際経済危機に連鎖する蓋然性は低いとは
思いますが、世界経済全体が下方トレンドから抜け出せない中、局地的な経済危機が発生しやす
い状況には変わらない事でしょう
。 【編】


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2001年7月22日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.07.15
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株式投資のABC−資産形成の成否
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株式投資啓蒙家として活躍されている伊藤様から御寄稿いただいているコーナー。

同氏は、有料情報「徹底、銘柄分析」(年間1万円)を2月から開始され、直接取材による生の情報
も提供されております。又、日経マネー誌では、自己資金での運用レポートを好評連載中。理論を
述べるだけでなく、実践するための同氏の分析はリアリティー溢れ、ためになります。    【編】
http://www.abba-net.ne.jp/~mito/yuryobunseki.htm

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昨年の暮から一貫して高水準を維持している。株式市場の短期的な上げ下げを正確に予想する
のは難しく、下手に保有水準を上下させると裏目に出て結果的に資産を増やすことができないと考
えているからである。

さて、某証券の先代社長が、「株式投資で儲けるにはどうしたら良いか?」と聞かれた時、次のよ
うに言っている。第一に、「儲けるまで続けること」、第二に、「儲けたままで止めること」。

もっともなことであるが、実行するのは難しい。多くの個人投資家が天井圏では欲で面の皮が厚
くなり、信用取引などに手を出して保有比率を高めるからである。
後から振り返ると、撤退すべきところで損を取り戻そうと保有水準を高めてしまい資産を失ってし
まうのである。

上記の言葉を自分流に言い換えると、「安いときに可能な限り投資」「大相場(バブル発生)後の
暴落から逃げる(株式売却)」ということになる。途中で20―30%程度の調整は通常1−2年に
1回くらいあるが、うまく逃げることは難しいと覚悟している。

大相場(バブル発生)後の暴落は早くとも5−6年先になると思われる。その時まで資産を増やし、
その後の暴落を避けることができれば、十分な資産を形成することが可能だと考えている。

読者の方々にも、資産を増やしたうえで大相場(バブル発生)後の暴落から逃げていただければ
望外の幸いである。ということで、最大の真価が問われるのは、10年近く先になると考えている。


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2001年7月15日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.07.10
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生保の予定利率引下げ問題
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生保問題に詳しいネイオ様からの御寄稿です。用語解説付き。     【編】

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先日テレビを見ていたら「パルメザンチーズ」はローマ中田の移籍先、イタリアパルマのパルマ仕込
みチーズの事だと初めて知りました。たぶんソニーやパナソニックが日本のメーカーだと知らないア
メリカ片田舎のヤンキーの気分でしょう。

ところで、小泉首相の諮問機関である金融審議会では、生命保険会社が運用難を理由に、本当にオ
キテ破り(保険業法を変える事)を実行できるようにする議論がされ、中間答申が出されました(金融
庁HP御参照)。

それは破綻前でも既契約の予定利率を下げても良いといった方向性が示された事です。これは契約
者の保険金が削られるか、支払い保険料の中途値上げにつながる話です。なぜならば、「予定利率
は保険料の割引率」といった解釈をしても大正解ではないにしろ、矛盾しないからです。

一方、生命保険の定期保険(一定期間に区切って保障をつける保険)の期間満了後の更新保険料
の値上げは、日本では当たり前ですが、海外ではアメリカもカナダも香港も保険料は更新時は据え
置かれます。同じ種類の保険を全く同じ条件下において、日本では値上げされ、海外では値上げさ
れないなんて、なんか変ではありませんか?更新時に年齢が上がって疾病になる確率が高くなる
から値上げは致し方ないと言った日本の理屈は、海外生保にはありません。

上記二つの話は、今年から情報開示を強化したと主張する保険会社の基礎益を、なぜ三利源ごとに
死差益、費差益、利差益と開示しないのか?に関して、「予定死亡率をだいぶ水増ししている」と言う
疑惑の検証が出来ないように隠蔽しているとの懸念が払拭できずにいる点でつながって来ます。

日本では予定死亡率に関して、昭和30年代のものを未だに使用しているという噂がある。明確に答
えてほしい。

日本人の死亡率が欧米各国と比べべらぼうに高いのか?−−−
この秘密を知る鍵は、日米や日加両国でアクチュアリー資格を取得した人物に聞けば問題点が明確
になる。しかし、財団法人日本アクチュアリー会(高等数学を駆使して保険料を算出する資格をもった
方々の会)に電話して聞いたが、ダブルライセンスアクチュアリーの紹介も伝言してもらえなかった。
また上記制度差の理解は、受付担当者やその上役には無かった。なぜだろうか。

このメルマガの読者の皆さんが、保険会社や関係者に上記事実を訴え少しでも多くの方々に知って
もらった方がいいと言う事を今、痛感しています。各保険会社の契約者懇談会等に積極的に参加して
質問してみるのも一案です。

また、カナダの生命保険が予定利率7.5%なんてこの際、運用環境が違うので・・・と逃げられてし
まいますが、死亡率は戦争や大災害でも起きていない限り、そう簡単に統計資料としてそんな大差
はないと思います。日本の生命保険会社の透明性が確保されていない可能性のしっぽは、海外生
保会社との比較において検討されるべきではないかと私は思います。日本では、保険会社と契約者
の立場は対等で公平なのでしょうか。

「生命保険をめぐる総合的検討に関する中間報告」に対する意見募集を金融庁のホームページで
、8月31日まで募集しています。パブリックコメントから入ってください。→http://www.fsa.go.jp
ファックスによる受付は、03−3506−6236です。
「金融庁 総務企画局 信用課 保険企画室 金融審議会事務局」宛

平成13年7月1日     【ネイオ】

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■用語解説:三利源
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三利源とは、次の三つを言います。

1.死差益
予定死亡率によって、性別・年齢別の予定死亡者数を算出し、その数から実際の死亡者数を差し引
いた時に発生する差益。

2.費差益
予定事業費率によって見込んだ人件費や契約維持費から、実際に支出した事業費を差し引いた時
の差益。

3.利差益
保険会社が契約者に約束した予定利率を上回る実際運用利率が発生した時に、その上回った分の
利率に発生する余剰運用益。



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2001年7月8日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.07.02
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リストラ主因の業績改善の永続性
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そういえば、サラリーマンにとってはボーナスの時期。皆さんはいかがだったのでしょう。日経新聞な
どの調査によれば、大企業では前年比で平均4〜5%の上昇。昨年度の企業業績の大幅改善が反
映されています。個人消費にも幾分好影響をもたらすことでしょう。

日経新聞調査による、国内主要機関投資家を対象とした「買いたい」銘柄ランキング。買いたい銘柄
1位は、ホンダとKDDI。全般的に、上位ランクに入ってくる企業としては、リストラと成長分野への両
輪を持つ企業が目立っています(「売りたい」銘柄上位は、言う迄もなくIT関連企業が独占)。

昨年度の企業業績の改善も、日産の例にみられるように「リストラ」がキーワード。ただ、注意しなけ
ればならないのは、この「リストラ」を永遠に続けていく事は極めて困難であること。昨年度と同じペー
スでリストラを続けていたら、2〜3年で社員数がゼロになってしまう!?なんていう企業もあります
が、現実的にはあり得ないですよね。【編】

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                 6月日銀短観は下振れ予想が大勢
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今週は、2日に発表される6月の日銀短観が注目材料。しかし、足元の景気下振れを受けて、全般的
に下方修正される見通しです。

個別に見ると、大企業・製造業の業況感の悪化が目立つ事でしょう。先月7日に財務省による景気予
測調査が「大幅悪化」という内容となりましたが、その後、状況に大きな変化が無い中、今回もそれに
沿う結果となりそうです。

また、設備投資計画の低迷も続く事でしょう。通常は、期初(3月短観)では固めの数字に見積もって
おき、徐々に上方修正をしていくという傾向が見られますが、今回はせいぜい横ばい、実質的に「下方
修正」とみなされる可能性があります。

マーケットはほぼ織り込み済みでしょうが、予想通りであっても、引き続き株安・債券高の支援材料と
なると思われます。  【編】


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2001年7月1日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                      01.06.24
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  骨太の方針
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先日 有楽町そごう跡に入ったビックカメラのオープンセールに行ってきました。品ぞろえは、通常の
ビックカメラと異なり、サラリーマンのニーズに合うような形となっています。おもちゃ売り場などもあ
りますから、クリスマスシーズンなんかは結構繁盛しそうですね。営業マンの暇つぶしにも最適スポ
ットかもしれません。       

さて、先週発表された「骨太の方針」、「改革プログラム」のキーワードの一つとして「都市再生」があ
りますが、これに先行して最近は都市再生関連銘柄(地質調査会社等)の上昇が目立っています。
マーケットは気が早いですね。

先週、小泉政権が当初予定であった6/27より前倒す形で、「骨太の方針」最終案を発表しました。
概観としては、これを基本方針とし、構造改革への取り組期間として12〜13年間の時間軸を設定。
そして主として2つの構造改革を同時進行させる形で進めていく形となります。

2種類の構造改革の内、1つめは不良債権処理。当初の2〜3年間で集中的に取り組む方針(これ
を「集中整理期間」と言っている)で、日本経済の成長下振れリスクも予め明言しています。素案と比
べると、RCC(整理回収機構)を活用した不良債権処理が新たに盛り込まれた点が大きく異なる点で
すが、「要注意債権」については具体的には触れられていません。

マーケットの注目は、この「要注意債権」の取扱いについてだったでしょうから、今ひとつ踏み込みが
甘いという意見も散見されるところです(尤も、意図的に出し惜しみしているのかもしれませんが)。

もう1つは、「構造改革のための7つのプログラム」。この中の1つ財政改革については、当初素案で
は、「本格的な財政再建に取り組む際の中期目標として、まずはプライマリーバランスの均衡(過去
の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らないこと)を目指す事が適切である」となってお
りましたが、最終案では「均衡」の文字が「黒字にすること」に入れ替わっております。

そして、具体的には、公共事業の縮減の他、道路特定財源の見直しが明記されました。

今回のものは「最終案」ですから、現実に実行に移され、影響が出てくるのは、これから先しばらくか
かるでしょうが、中長期的な飛躍の前には、失業や倒産などの痛みも徐々に出てくる事となるのでし
ょう。  【編】


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2001年6月24日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.06.17
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人気の背後に危機感
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先週、小泉政府の発行するメールマガジン「らいおんはーと」がスタートしました。登録者読者数は、
はや100万名を突破。これは私にとって非常に嬉しいニュースでした。

というのも、私は3年前より国会議員を訪ね、読者と双方向でコミュニケーションのとれる新しい媒体
としてメールマガジンの未知なる可能性を唱え、その発行を議員の方に提案してきてからです。何名
かの若手議員の方が応じてくれ、なかには通巻数百号を超えているものもあります(政治嫌いの私
にとっては、政治への興味を辛うじてつなぐ上で、大変重宝)。

ただ、このようなボトムアップ型の行動では、読者数の増加にも限界があり、広がりが生まれにくいの
が実状でした。そこへ、小泉政権が誕生。トップダウン型でのメールマガジン発行の実践。メールマガ
ジンの発行は誰でもいつでもできる簡単なことなのですが、できる事を直ぐに実行できないというのが
これまでの日本の政治でしたから、今回のメールマガジンの発行も小泉政権だからこそできた重要な
構造改革の一つだと思います。

政府はあまり意識していないかもしれませんが、100万名以上の登録者を抱えるメールマガジンの
告知媒体としての価値は、間違い無く「億円単位」となります。小泉政権は一瞬にして「億円単位」の
財源を確保したといっても過言ではありません。何事も先ずやってみる事が大切ですね。   


先週も特筆すべき事もなかったのですが、どちらかというと景気についての良いニュースはありませ
んでした。

11日は1−3月期のGDPの発表されましたが、第二四半期ぶりのマイナス成長。項目別に見ると、
最もウェイトの高い個人消費は前期比0.0%と家電リサイクル法施行前の駆込み需要等からなん
とかマイナス転換は避けられたものの、住宅投資が前期比▲5.2%というのが目立ちます。これは、
当レポートで再三指摘してきた住宅減税による需要の反動減が顕在化したものと思われます。

GDPは所詮過去の数字であり、いまさら過去を振り返る必要もないかとは思いますが、市場のセン
チメントは低迷気味。政府が発表した6月の月例経済報告で基調判断が「景気は、悪化しつつある」
と下方修正されましたが、これも妥当な表現と言えるでしょう。

2000年3月以来用いられてきた「自律的回復」という表現が削除されただけでなく、過去に使われ
た事はなく景気後退宣言とも言える「悪化」という言葉が初めて用いられたという事から、政府の危
機感が伺えます。 【編】


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2001年6月17日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.06.10
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                日本経済とリンクする島
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サイパンを含むマリアナ諸島が西欧世界に知られるようになったのは、マゼランが世界一周をしてか
らの事。1565年にスペインが領有を宣言し、マリアナの名も当時のスペイン皇后マリア・アンナにち
なんでいるとか。現在は、アメリカの自治領、そして自治政府北マリアナ連邦の下にあります。

日本からの距離は約2400kmで飛行機で2時間半程度。日本に非常に近い事、サイパン自体の経
済規模が小さい事(物理的にも、人口6万人弱、面積は伊豆大島の2倍程度)、観光収入への依存度
が高い事(軍事基地としての需要も強い、お隣のグアムとはやや状況が異なる)等から、同経済は日
本経済の動向に大きく左右されます。結果として、日本経済の低迷に伴い、同島経済も自ずと低迷し
ている印象は拭えません。

現在と10年前との航空便の比較をしてみても一目瞭然です。バブル経済の末期となる10年前は、
日本からは4つの航空会社が乗り入れ(日本航空、全日空、ノースウェスト、コンチネンタル)、又、5
つの都市(東京、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙台)と直行便でつながっておりましたが、今は航空会
社は2社(日本航空、ノースウェスト)のみ、直行便も2つの都市(東京、大阪)からしか発着していま
せん。当然、観光客の輸送力には限界があり、これに比例して観光収入も大きく落込みます。(勿論、
日本経済の影響以外に、そもそも観光資源に乏しい(文化的遺産などはなく、美しい海が同国の観光
資源の殆ど)という要因もありますが。)

10年前には予想だにされなかった現状により、バブル期の過剰投資の傷跡は至るところに見られま
す。テナントの撤退、施設の劣化、高いホテル空室率、スーパーでのサイパンTシャツの在庫積上が
り、等々。

でも、ありのままのサイパンを楽しむには、バブル期の投資がどうなんか関係ないんですけどね。
コバルトブルーの海を眺め、ビーチでのんびりとか、ダイビングしてイルカたちと戯れるとか。
2年ぶりの訪島でしたが、やっぱり最高。 【編】



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2001年6月10日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.06.05
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                  在庫循環の悪化
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小泉政権への期待もあり、株価は底を打ったという記事も数多く見られますが、経済のファンダメンタ
ルズは先週の経済指標を見る限りにおいてはとても良い状態とは言えません。

先週は様々な経済指標(失業率、鉱工業生産、消費支出など)が発表されましたが、何れも事前予想
と比して悪い数字(景気にネガティブ)となりました。

特に顕著だったのが、4月の鉱工業生産指数。4月の生産指数は前月比1.7%のマイナス。又、生産
の減少以上に出荷の減少が大きく、結果として在庫指数は5ヶ月連続で増加しました。

さて、景気循環を見る上で、よく使われる図表として「在庫循環図」というものがあります。

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          在庫増
      |
   (d)←(c)
   ↓ | ↑
出荷減−−−−−−出荷増(前年比)
   ↓ | ↑
  (a)→(b)
     |
    在庫減(前年比)

(a)→(b):回復局面
(b)→(c):在庫積み増し局面(景気拡張期に見られる)
(c)→(d):在庫積み上がり局面
(d)→(a):在庫調整局面(景気不況期に見られる)

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現在はまさに(c)→(d)の終盤の位置。出荷が減少、在庫が積み上がって来ている状態です。これ
は景気後退が著しかった97年後半から98年前半に見られた状況と酷似しております。

この次に待ち構えるのは(d)→(a)の局面。企業が意図せずに積み上がってしまった在庫を必死に
減らそうとする為、生産水準を落とします(所謂、在庫調整)。

最近発表された上場企業の2001年度の企業収益見通しは、上期は低迷しつつも、下期にV字型の
回復により、前年度比に改善するという楽観的な見通しが多い(特に米国景気の回復に依存する傾
向が強い)だけに、この在庫循環の悪化は楽観シナリオの実現の難しさを示唆しているものだと言え
るでしょう。 【編】


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2001年6月3日

             【SkillStorage.com】  ”ビジネス虎の穴” 

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                       No-02
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 テーマ:
             
牛丼戦争 値下げは継続せず
                  吉野家社長 「品質低下招く」


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事例:

吉野家ディーアンドシーの安部修仁社長は9日、期間限定で10日まで実施する牛丼の値引きセールに
ついて「予想を上回る来店客があったが、あくまでキャンペーン。本格的な価格戦争に踏み切る気は毛
頭ない。」と恒常的な値下げの可能性を否定した。

4月4日からの150円引きセールで客数は通常時の3倍、売上は2倍に増えた。特に土曜日の7日には16
6万人が来店し、1日当たり売上高は過去最高の5億1000万円を記録した。

牛肉などの食材の払底で一時閉鎖した店や、持ち帰り容器がなくなり弁当販売を中止した店も出た。

安部社長は店舗運営体制がついていかなかった。」と釈明した。セールは予定通り10日まで実施する。
恒常的な値下げについては「一時的な効果はあるが、最終的に品質の低下を招くことは過去の経験か
ら明らか。」と否定した。

同社は価格競争に走った結果、1980年に経営が破綻した苦い経験を持つ。主力の牛丼で値下げを継
続するには食材など社内体制の抜本的な見直しも必要になる。

ただ「消費者の価格に対する意識の高さは改めて認識した。(単純な値下げではなく)何かをしかけなく
てはいけないとは思う。」と話し、今期中に低価格の新業態やメニュー開発などに取り組む方針を示唆し
た。
 (2001/4/10  日経新聞)

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今回、皆さんもご存知の通り価格競争が勃発した。一連の牛丼各社の動きを時系列に見てみる。

○1,松屋フーズ
  2000.9 牛めし並290円に。
○2,神戸らんぷ亭
  2000.夏 持ち帰り用牛丼並290円を店内食にも適用。
○3,すき屋
  2001.3  牛丼280円に。
○4,吉野家
  2001.4 初旬1週間のみ牛丼並を250円に。
○5,すき屋
  吉野家に対抗し、牛丼並250円に。
○6,吉野家
  2001.4.10 セールを終了し、通常価格に。

松屋の仕掛けた価格競争に吉野家以外は徹底抗戦の構えが見てとれる。吉野屋も他社がこのまま300
円以下の価格を維持できたら何らかの対抗措置が必要だろう。ここでいう対抗措置とは価格面に限定さ
れる。

400円が200円代になるというのは相当のインパクトだ。消費者の目で見た場合、昼食や残業時の夕食が
280円や250円で済むのはとても有りがたい。

1度、200円代にまで落ちた消費者の牛丼の相場観をもしまた400円まで引き上げようとするのは不可能
に近い。これは基本的なマーケティング理論では慣習価格戦略という理論で説明できる。

慣習価格とは社会慣習上、ある一定の価格が定着したものである。ある製品の価格が、長期間に渡って
一定の水準で定着すると、その価格が消費者の観念の中で固定化し、価格の変更が困難になる。

つまり缶ジュースは100円(税込み120円)というのはもう「決まってしまっている」ということだ。

最近は飲料各社がコーヒーなど少し高級感を訴求した商品を150円程度で市場導入をしているが、浸透
は出来ていないのが現状だ。つまりマーケティング能力に最高の評価を得ている日本の飲料メーカーが
価格面以外の訴求点で慣習価格の壁を破れない、ということを表している。

消費者の中で形成されている商品、サービスに対する相場を超える価格は致命的な結果を招く。慣習価
格以上の価格はありえない。だからメーカーは慣習価格で利益を出せるように収益構造の改善を繰り返
すのだ。

今回の牛丼各社の行動における疑問点は以下のようになる。

○300円以下の価格で商品を提供するための収益構造は構築済みなのか?
 本当に無理のない価格なのか?

○価格以外の訴求点は見つからなかったのか?
 価格面を超えるマクドナルドなどとのを違いを見出せないのか?

○牛丼に対する意識が変わり顧客層が厚くなっている。女性客などの増加だ。
 これに対しての対応は済んだのか?
 そして次段階の戦略としての価格変更なのか?

恐れなければいけないのは牛丼に対するイメージダウンだ。せっかく店舗の清潔感や新メニューにより
イメージが着実に良くなった。ここで無理な価格競争により品質の問題が生じることがもっとも怖い。

ただでも,マクドナルドの低価格、ファミレスの低価格、新業態導入。これで牛丼にも価格戦が本格拡大が
あった場合、コンビニや宅配ピザなども何らかの対応を取ることが予想される。





2001年5月27日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.05.22
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                    髭の世界
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先週18日に開催された日銀金融政策決定会合の終了後、日銀は「金融市場調節円滑化措置」な
るものを発表しました。

今回決められた同措置の内容は、
1.手形買入オペにおける手形期間の延長
2.手形買入オペにおける買入対象先数の拡大
3.オペ入札におけるレート刻み幅の細分化
4.国債買入オペにおける買入対象国債の追加
というもの。

金融市場にそれほど大きな影響を与えるものでもないので、個々の措置の解説は割愛させていただ
きますが、現在の金融緩和策に枝葉をつけたようなものとでも認識しておけばよいでしょう。

さて、上記の事項の内、「レート刻み幅の細分化」というのは、入札レートの最低単位を0.01%から
0.001%にするというもの。0.01%という金利でも資金の借り手がいない(入札に応じる人がいな
い)ので、この最低単位を引き下げ、資金の流れを生み出そうというものです。実にミクロな世界です
ね。

短期金融市場のディーラーは資金調達や運用する時に伴い生じる金利の交渉において(普通は電
話でやりとりします)、0.01%,0.02%のことを夫々「まるいち」「まるに」と言い、又、0.011%
とか0.021%とか更に下位の桁の金利が付く場合には「まるいちひげ(髭)」「まるにひげ(髭)」な
どと言います。0.012%だったら「まるいちひげ2本」、0.013%だったら「まるいちひげ3本」。可
笑しな表現でしょ。

「髭の世界」まで踏み込んだ超低金利政策。金融緩和策は行きつく所まで行ってしまったと言える状
況です。 【編】

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■用語解説
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●オペ
手術のことではなく、ここでは、日銀が日々の市場の資金需給を調整する為に行っている、資金供給
や資金供給の公開市場操作(オペレーション)のことを言います。手形買入オペというのは、手形を担
保として日銀が市中銀行に対して資金を供給するオペレーションのこと。国債買入れオペであれば、
国債を担保として市中銀行に資金を供給するものです。  【編】


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2001年5月20日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.05.13
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                米国のデフレへの対応力
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月初に発表された米雇用統計は、失業率は前月比0.2%上昇の4.5%となり、昨秋をボトムとしてじ
わりと上がってきました。また、非農業部門の就業者数は前月比▲22.3%となり、91年以来の大幅
な減少となりました。

一方で、時間当り賃金は前月比+0.2%と上昇。雇用削減が進むと通常賃金も減少傾向となるので
すが、逆の現象が生じているのは、低賃金の労働者が優先的にリストラの対象となっている可能性が
示唆されています。

雇用情勢の悪化に伴い気になるのは、個人消費へのマイナス影響です。

これまでの米国経済を支えてきたのは、GDPの7割を占めている旺盛な個人消費。株高に伴う個人
金融資産の増幅を背景に、貯蓄率がマイナスになる程迄の異常な消費を続けてきたわけですが、株
安(資産の減少)に加え、失業率の上昇など雇用の悪化(キャッシュフローの悪化)が進んでくると、
家計のリストラ(消費の抑制)に迫られるのも必至の情勢かと思います。

もちろん、過度な悲観論に傾倒する事は禁物です。世の中、悲観論者、楽観論者いろいろ存在し、各
自好き勝手な事を言いますし。

但し、これまで日本もそうですが、世界経済はインフレとの戦いであり、いかにインフレリスクをヘッジ
するべきかという点に注目され、個人も啓蒙されてきました。従って、多くの米国民はデフレに対して無
防備のはず。米FRBは先手先手の金融緩和策により対応力の遅れによる衝撃を緩和しようとしてい
ますが(今回の雇用統計を受けて、15日に開催されるFOMCでは0.25%ではなく、0.50%の金
利引下げが実施されるとの見方が大勢となっており、6月以降の追加利下げがあるとの見方も一部
では高まっております)、果たして米国民自身が、逆回転する経済情勢に臨機応変に対応できるかど
うか。デフレ対応の遅れによる衝撃も覚悟しておく必要もあるでしょう。  【編】   


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2001年5月13日


             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.05.01
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                 G7で課せられた宿題
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ワシントンで開催されたG7での日本についての焦点は、前回のパレルモG7において課せられた宿
題2点(金融緩和の強化と金融セクターの強化)について。

このうち、金融緩和の強化(潤沢な流動性供給)については、日銀は3月に量的緩和(実質ゼロ金利
政策)に踏み切り、その答えを出しましたから、日銀総裁も久しぶりに余裕の表情。

G7共同声明においても「金融政策は消費者物価指数がゼロ%以上になるまで引き続き潤沢な資金
を供給すべきだ」と既に日銀が実行しているものを確認するにとどまっています。

もう一つは、金融セクターの強化。こちらはまだ、前政権が緊急経済対策にて文言を入れただけにと
どまっており、具体化には至っていませんから、今回は早急な実行を強く求めらたことでしょう。

          ・      ・      ・

全く同じ経済情勢でも、政府の国民への訴えかけ・説明次第で、国民の意識や行動が変わる事起こ
り得ます。例えば、企業の倒産にしても、あまり好ましくない現象のように言われますが、構造改革を
進めていくうえで避けては通れない事象であることをきちんと説明し、又、その課程によって生じる様
々なリスクを国民が制御・回避できるようなシステムを整えていけば、むしろ前向きの現象と捉えるこ
ともできるわけです(これこそ「政治力」というものであるということを竹中経済財政担当相もよく指摘
しているものですが)。

新内閣も無事組閣され、各新聞社の世論調査では、内閣支持率が軒並み80%前後と過去最高の支
持率を獲得。あとは実践あるのみ、楽しみですね。  【編】  


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2001年4月29日

             JAPAN ECONOMIC REPORT
                       01.04.22
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                  米、緊急利下げ
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18日、米FRBが緊急利下げに踏み切りました(公定歩合、FFレートともに50%引下げ)。

この異例の決定の背景には、(1)株式市場は底入れムードも出てきたが、企業業績や雇用情勢の悪
化が示す通り、実体経済は引き続き厳しい状況であること、(2)先日の株価急落によって懸念される
逆資産効果には、金融緩和により株価を上昇させ、資産効果を促す事で立ち向かう事も必要であるこ
と、(3)日本のバブル崩壊を反面教師にし、先手先手の金融政策により、真性デフレの突入を防ぐ必
要があったこと、(4)株価が底入れし、利下げ期待が剥落したところで意表を付く金融緩和策は、市場
にビッグサプライズをもたらし、株式市場を大幅上昇させる事ができると判断したこと、等が考えられま
す。

事実、タイミングは絶妙で、予期せぬ金融緩和の実施の直後、株価は大幅上昇。
FRBに対する市場の評価は高まっています。 【編】

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                 日銀は景気判断を下方修正
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16日、日銀は4月の金融経済月報を発表。景気の現状判断を2ヵ月連続で下方修正しました。

冒頭の総括判断においては、「わが国の景気は、輸出の落ち込みを主因に生産が減少するなど、調
整局面にある」とし、前回3月の「足踏み状態」という判断からは明らかに下方修正しています(理由は、
「企業収益の大幅鈍化(見込み)と生産の減勢の強まり」)。

金融政策との兼ね合いでは、2001年度の全国コア消費者物価指数(前年比上昇率)が注目されま
すが(日銀は実質ゼロ金利政策を消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまで継続する方針
を明示しているため)、「今後の景気動向には不透明な要素が多いだけに、需要の弱さに起因する物
価低下圧力が強まる可能性にも留意が必要」と非常に慎重な見方を示しています。

ダウントレンドのなか、実質的なゼロ金利政策長期化観測は到底払拭できそうにない状況です。
 【編】   


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2001年4月22日

              【SkillStorage.com】  ”ビジネス虎の穴” 

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                       No-01
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 テーマ:
               経営組織論
                松下電器産業の事業部改革

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事業部制とは?:

独自の市場を持ち、その事業に必要な生産、販売、開発などの職能を持つ自己充足的、または自己完結
型の組織単位(利益責任単位)である。事業部運営に必要な意思決定の権限が事業部トップに委譲され
た自立分権型組織である。

しかし、日本企業では形式上は事業部制をとっていても実際には一つのビジネスを一つの事業部で完結
し、そのための権限が各事業部に委譲されていることが少ないという問題がある。

◆-------------------------------------------------------------------
事例:

松下電器産業の両者は米国やアジアで成長している受託製造サービス(EMS)をモデルに製造部門を分
離独立させる。

□EMSとは:

独自の設計、生産技術や物流機能を武器に完成品メーカーに代わって生産工程を引き受けるサービス業。

□松下電器産業の事業部改革:

松下幸之助氏が作り出した事業部制を解体し、縦割りの事業部に従属してきた製造部門は複数の「ファクト
リーセンター」に再編、収支に責任を負うと同時にほかの事業部や外部企業からの製造も受注できるように
する。

同社の中期計画の骨子では、国内家電シェアを21%から26%(1.25倍)に引き上げることを実現する手法の
一つとして小規模工場を集約して大規模化を進めどの事業部が社内外を問わず、どの向上に発注しても構
わないという社内競争を取り入れる。
(2000/12/20 日経新聞)


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背景:

同じようにソニーも向上の独立分社化を進めている。これらの背景としては以下の2点が挙げられる。
1、デジタル技術の進展
 パソコンにせよ携帯電話にせよ、技術革新によって製品のライフサイクルは劇的に短縮化されている。
 これに対応するためには

 a, 工場が自身で高い生産技術を持っている
  b, 物流機能を保有している
  c, 上記2点から受注、設計、製造、物流、納品のプロセスを完遂可能

という条件が求められている。

2、中国の台頭
 中国製品がシェア世界1の製品分野を見るとテレビ、洗濯機、エアコン、冷蔵庫、オートバイなどが挙げ
 られる。中国のGDP、輸出総額ともに急激な伸びを示しており、日本が輸入を行う主要国も米国に次い
 で2位は中国である(日経ビジネス12-11)。

 既存の事業部やそれを発展させたカンパニー制にも柔軟性が出てきたようだ。今後はさらに社内での競
 争の促進、自社でリソースを注ぐ部分とそうでない部分の切り分けが明確に進むことと思う。


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OPINION:

シリコンバレーなどの華々しいハイテクベンチャーがメディアを賑わせるよになり随分と時がたつ。日本の
エンジニアやビジネスマンもアメリカへ留学またはビジネスで腕だめしに殴りこむ人多いようだ。

MBAやCPAというアメリカを連想させるキーワードも頻繁に見受けられるが中国やインド、韓国などアジア
にも優秀な人材が終結する場所は存在する。ベンチャーなどは韓国系の日本上陸も多い。

前にはアメリカ、振り返ればアジア諸国がすぐそこにいる。日本にならがら既に国際競争に参加できること
を幸せに感じる。