審 判

 

審判特集「審判をしよう!」〜基本編〜

 私たちの所属する関西女子野球連盟では、リーグ戦やトーナメント戦で所属チームの選手が審判をしています。そのため毎年「審判講習会」というものが開かれるのですが、その審判講習会で習ったことなどを、私の脳みそが覚えている範囲でまとめて毎年更新していこうと思います。基本編と事例紹介編の2回に分けてお届けいたします。審判の動きに関しては一部ローカル・ルール的な部分もありますのでご了承下さい(あくまでご参考程度にお読み下さいませ)。
 私たちのようにあまりルールのわかっていない“草原の小動物系”チームは、とんでもないミスジャッジをするたびにルールを熟知している“荒野の肉食系”強豪チームに怒られているんですが、もうビクビクしながら審判をするのは卒業したいわ…という人はぜひとも読んで基本の動きを身につけてくださいませ。

※2009年4月に更新しています。

 

 ■ジャッジの基本は

審判でジャッジをするとき大切なことは、「あいまいな仕草をしない」ということです。アウト・セーフをはっきりジャッジして下さい。

ジャッジのジェスチャーははっきり大きく、遠くから見ている人でもわかるようにしてください。そして、「アウト」を宣告するときはひと呼吸おいてから、「セーフ」のコールは出来るだけ早くコールしてください。アウトをひと呼吸おいてコールするのは野手がボールをこぼしたりすることがあるため最後までプレーを見届ける必要があるからです。セーフのコールを出来る限り早くするのは、他にランナーがいる場合は即座にコールしないと、そのままプレーが継続するのか中断するのかによってランナーの動きも変わってくるからです。

また、牽制や盗塁などタッチプレーの場面ではできるだけそのプレーが見えるように近づいてからジャッジをしてください。離れたところにボーっと立って適当にジャッジをすると、本当に見ているのかという不信感が選手側に生じてきます。ジャッジをする瞬間、出来る限りプレー全体が見える位置まで近づいて判断してください。

 まとめると、迷わず、出来る限り近くで、大きくはっきり自信を持ってジャッジすることが大切なようです。

  

 ■ストライクゾーン

 まずストライクゾーンの定義ですが、野球規則では「ストライクゾーン −打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、ひざ頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間を言う。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである」となっています。それでは詳しく見ていきましょう。

●ストライクゾーンの高低

 まず、ストライクゾーンの上限ですが、肩とベルト(ズボンの上部)の中間点の高さになります。アマチュア野球では上限のラインを少しでもかすればストライクになります。またストライクゾーンの下限は、前の足(投手側の足)のひざ頭の下のラインになります。これもそのラインを少しで通過するとストライクになります。
 また、ストライクゾーンを小さくしようと極端にしゃがんだ状態で構えても、自然に構えて打ちにいった時の姿勢の高低がストライクゾーンとなるので、そんなセコイこと考えても無駄な努力です。
 また、打者が実際に振らなくても、振った時の打撃姿勢をイメージしてストライクゾーンの高低をジャッジして下さい。

●ストライクゾーンの幅

 ストライクゾーンの横幅ですが、基本的にボールがホームベースを少しでもかすって通ればストライクになります。ただし、ホームベースの角(接点)をかすって通った場合はボールになるそうです。詳しいことは、こちらをご参照下さい。

[ストライクゾーンの高低]

 

[ストライクゾーンの幅]

 

●ベースを通過した位置で判断

 また、ストライクゾーンは、バッターがバッターボックスのどの位置に立っていても、ボールが『ホームベース上』を通過した時の位置で判断します。
 たとえば右図のようにバッターがバッターボックスの一番前で構えて、投球がその人の前を通過する時は「ボール」の位置だったとしても、ホームベース上を通過した時にストライクゾーンを通っていれば「ストライク」になります。
 また、キャッチャーが捕球した位置が低くても、ホームベース上でストライクゾーンを通過していればストライクになるので気をつけてください。

[ベース上の空間がストライクゾーン]
  

 

 ■1塁審判の動き方

●1塁にランナーがいるときの審判の位置

 1塁審判の立ち位置ですが、ラインをまたがずライン横のファールゾーンに立ちます。ランナーがいない時は野手の守る位置から後方に2〜3mくらいの位置に立ちます。ランナーが出塁した場合は牽制球のジャッジにそなえて少し前に出ます。左投手の場合はボークの判断もしなければなりません。

■1塁にランナーがいないときの立ち位置

■1塁にランナーがいるときの立ち位置

 1塁手の後方2〜3メートルくらいの位置

 ベースから2〜3メートルくらいの位置

   

   

 

●1塁送球に対するジャッジをする位置

 内野ゴロなどのジャッジをするとき、1塁審判はプレーの邪魔にならず、かつ、はっきりプレーが見える場所に移動しなければなりません。基本的に送球に対して直角になるような位置に移動してジャッジをするそうです。
 例えば右図のように、サードゴロでファーストに送球される場合、その送球に対して直角(90度)の位置、つまりフェアゾーンの方へ回り込んでジャッジをします。

 

■サード・ショート方向の打球

 サード・ショートに打球が飛んだ時は、送球の邪魔にならないように、またバッターランナーにぶつからないように、フェアグラウンドの方へ回り込み、そこでジャッジをします。

  

■セカンド・ファースト方向の打球

セカンド・ファースト方向に打球が飛んだ時は、守備の邪魔にならないようにファールグラウンドの方へ回り込み、そこでジャッジをします。
 よく、定位置から動かずにその場でジャッジをしている人がいますが、走り込んでくるランナーと衝突したり、カバーに走っているセカンドやライトと衝突したりする危険性があるので、きちんと回り込んで下さい。

  

■ライト前、キャッチ前にボールが飛んだとき

 ライト前にボールが転がった場合は、送球や走塁の邪魔にならないようにファールグラウンドの方へ回り込んでジャッジをします。キャッチャー前はフェアグラウンドの方へ回り込んでジャッジするそうです。
 これもライトからの送球や、キャッチャーからの送球に対して直角になる位置に移動します。

  

 

 

 ■2塁審判の動き方

●ランナーがいないときの審判の位置

 ランナーがいないときの2塁審判の立ち位置ですが、以下のようになります。

■2塁にランナーがいないときの立ち位置

 塁上にランナーがいない場合は、2塁ベースの5メートルほど後方の位置に立ちます。

  

 

●ランナーが「1塁」「2塁」「1・2塁」「1・3塁」にいるとき

 1塁、2塁、または1・2塁、1・3塁にランナーが出塁したときは、ダブルプレー、バント、盗塁などに備えてダイヤモンド内に移動します。きるだけ近くでプレーを見るためです。ダイヤモンド内では2塁ベースから3〜4m、1塁と2塁を結ぶ線から内側に1〜2mの位置で構えます。

 また、ダブルプレーが生じる場合は、セカンドベース方向へ体を向けてジャッジをします。

 

●ランナーが「3塁」「2・3塁」「満塁」のとき

 ランナーが3塁にいるとき、つまり「3塁」「2・3塁」「満塁」のときはショート後方に立ちます。

   

 

 

 ■3塁審判の動き方

●3塁上にランナーがいるときの審判の位置

 3塁審判の立ち位置は、一塁審判の場合とほぼ同じです。ただ、牽制や2塁からの盗塁があるので、その場合は出来る限り近づいてジャッジをしてください。右投手の3塁牽制の場合はボークの判断もしなければなりません(→参照バックナンバーNO.59)。

■3塁にランナーがいないときの立ち位置

■3塁にランナーがいるときの立ち位置

 3塁手の後方5メートルくらいの位置

 3塁手の後方2〜3メートルくらいの位置

   

   

 

●タッチアップのときの審判の位置

 3塁の審判にはもう一つ大事なジャッジがあります。それがタッチアップの判断です。

■外野フライが飛んだ場合

 打球がどこに飛んでも、「ランナー」と「捕球する野手」の両方が位置が見える場所に移動します。ランナーのスタートが捕球より早くても、守備側からアピールがあるまで審判は特にアウトセーフのジャッジをしなくてもいいです。たとえフライングであったとしても、その場ではとりあえず心の奥にそっとしまっておいて下さい。ランナーがホームインしたあと、守備側がサードにボールを送球しアピールがあった時点で、アウトセーフをジャッジしてください。そのアピールがなければ、そのまま試合は続行されます。

  

■レフトライナーが飛んだ場合

レフトライナーが飛んで、外野手が捕球できるかできないかわからないような場合は、3塁審判は捕球を確認するために外野手の近くまで走ります。この場合、捕球と離塁の確認は主審が行います。

   

 

 ■全体の動き

●ボールが外野に抜けたときの全体の動き

 外野にボールが飛んだ場合は、それぞれの塁審が捕球確認のために近くまで走ります。このとき、ボールが外野手の間を抜けて長打になった場合、捕球確認に行った塁審の代わりに別の塁審がカバーに回ります。
 たとえば下図のようにセンターに打球が飛んで2塁打になった場合、2塁審判が捕球確認のために行くため、セカンドベースが空きます。そこで3塁審判が2塁ベースへカバーに行き、その代わりに主審が3塁のカバーに行き、1塁審判はランナーがベースを踏んだかどうか確認したら、すぐにホームベースのカバーへ向かいます。
 このように審判のカバーリングは時計回りに動きます。

■ボールが外野に抜けた場合

■カバーの基本は時計回り


  


   

 

 

 ■実力テスト!

 最後に恒例の(?)実力テストです。満点めざして挑んでください。

 

問題1
 ショートに内野ゴロが飛んだ場合、1塁審判のあなたは右図のA、B、Cのうち、どこの位置でジャッジを行いますか?正解だと思うボタンを下から選んでクリックして下さい。



 

   

問題2
 2塁にランナーがいます。3塁審判のあなたは盗塁に備えて右図のどこへ移動しますか。下のボタンで答えてください



 
 

問題3
 3塁にランナーがいます。ライトにフライが飛びましたが3塁審判のあなたはタッチアップに備えて右図のどこへ移動しますか。下のボタンで答えてください



 
   

問題4
 右図のようにバッターが極端にしゃがんで構えています。この場合、正しいストライクゾーンの高低は自然に構えて打つときの高低Aか、しゃがんで構えて打つときの高低Bのどちらになるでしょう?



 

 

問題5
 審判がジャッジをする時、セーフはすぐにコールして、アウトは一呼吸おいてからジャッジする。これは本当?

そう
ちがう

  

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 と、いうことでいかがだったでしょうか?細かく言えばもっといろんな動きがあるんだと思いますが、基本を押さえておけば大丈夫かと思います。もともとは審判講習会の内容をうちのメンバーに伝えようと思って作ったんですが、どうせならこっちに載せておこうっちゅうことでご紹介しております。ただ、あくまで個人の知識の範囲ですので、間違いや説明の不足があると思いますがなにとぞご了承下さいませ。

  

審判特集「こんなときどうなるの?」〜事例紹介編〜

 さて、引き続き審判特集です。ここでは「こんなときはどうなるの?」という事例をQ&Aの形でいくつか紹介しておきます。特に気になるケースがあったら簡単に目を通してみて下さいね。

●同時はセーフ?アウト?

内野ゴロで、ランナーがベースに着くのと、1塁手がボールを捕球するのが「同時」の場合があります。こんなときランナーはアウトになるのでしょうか?セーフになるのでしょうか?

答えは「セーフ」。ランナーが塁に到達する“前に”その塁へ触球するか、もしくはランナーの身体に触球したとき、ランナーはアウトになります。“同時”は“前”とは言えないのでアウトではない、という解釈の元に「同時はセーフ」と判定されることになるのです。

 

●ランナーが送球路を走ってボールに当たったら?

キャッチャー前のバントを処理してファーストに送球したときに、そのボールがランナーに当たってしまいました。ランナーはフェアグラウンド内を走っていたのですが、この場合どうなりますか?

右バッターがボールを打った後、インフィールド内を走り、それによって送球の邪魔になった場合は、守備妨害でアウトになることがあります。今回のように、バントしたボールをキャッチャーが1塁に送球したときに、インフィールド内を走っていたランナーにボールが当った場合はアウトになります。
1塁へ走るときはできるだけファールグラウンドを駆け抜けてください。→参照バックナンバーNO.33

 

●1塁で走塁妨害をとられるとき

長打を打って1塁ベースを回ろうとしたら、1塁手がベースに立っていてちょっと走りにくかったのですが、こういう場合は走塁妨害にはならないのですか?

バッターが長打(2塁打以上)を打ったとき、1塁手はファーストベース上に立ってボールの行方をボーッと見ていると、ランナーの走塁の邪魔になります。もし、1塁手がランナーと接触した場合、走塁妨害をとられる可能性もあるので、バッターが長打を打った場合、1塁手はすみやかにベースをあけ、ランナーの進路を妨害しないようにして下さい。

 

●ベースを駆け抜けた後にひそむ罠

1塁ベースを駆け抜けた後、ベースに戻るときにフェアグラウンド内に入って戻った場合、1塁手にタッチされたらアウトになるというのは本当ですか

1塁ベースを駆け抜けた後、少しでも2塁へ行く意志を見せた場合、インプレー(プレーが継続している)と見なされ1塁ベースに帰塁したときにタッチされるとアウトになります。1塁を駆け抜けた後、フェアグラウンド内に入った、入らなかったということが判断の基準になるわけではありません。そのためフェアグラウンド内に入って戻っても、ランナーに2塁へ行く意志がない場合はタッチされてもアウトにはなりません。ただ、これは個々の審判の判断にもよりますが、ベースを駆け抜けた後に左回りで帰塁すると、2塁ベースの方向へ体を向けてしまうので、その気がなくてもインプレーととられてしまうこともあります。なので、どうしても防ぎたいという場合は、右回りでベースに帰塁することが望ましいようです。→参照バックナンバーNO.34

 

●スリーフィートラインは越えてもいい?

走塁のとき、スリーフィートラインを越えてはいけないというルールがありますが、長打を打ってベースを回っているときはスリーフィートラインを越えていることもあると思うのですが、これは大丈夫なのでしょうか?

スリーフィートラインとは、各塁間を結ぶ直線の中央から両側3フィート(91cm)の幅のことをいい、ランナーはこの内側を走らなければいけません。ただし、これはその塁間で挟殺プレーなどのタッチプレーが発生した場合に適用されるルールなので、ヒットを打って普通にベースランニングをしているときには適用されません。

  

●バッターボックスから足がはみ出たら?

バントをしようと思ったら、バッターボックスから足が出てしまいました。こんな場合はアウトになるのですか

バッターボックスから足が完全に出てしまった場合、アウトになります。バントやスクイズの時に多いので、バッターボックスからでないよう心がけて下さい(ライン上はアウトになりません)。詳細はこちらを参照ください→参照バックナンバーNO.32

これはスクイズの時も同様で、バッターの反則打球ということでバッターがアウトになります。

【注意】
2005年までスクイズの時、バッターがバッターボックスから足を完全に出した状態でバントした時は、キャッチャーに対する守備妨害でバッターではなく3塁ランナーがアウトになっていましたが、2006年2月にルールの改正があり、以後はバッターがアウトになります。

  

●ランナーのいない塁に牽制球を投げたら

ランナー2塁でセットポジションのときに、ランナーに盗塁のスタートを切ったのでピッチャーはそのままプレートを外さずに3塁へ送球したらボークになりました。これはランナーのいない塁へ送球したからですか?プレートを外さなかったからですか?

この場合はボークではありません。ランナーのいない塁へ牽制球を投げるのはボークになりますが、ランナーの盗塁を阻止するなど、「プレーの必要がある場合」はランナーのいない塁(ランナーの進塁先)へ送球しても構いません(※)。また、プレートを外さずに投げてもボークにはなりません。ただし、踏み出す自由足が送球する塁へ向けられることが必要です。
さらに牽制の時、ベースカバーに入っていない野手にボールを投げるとボークになりますが、ランナーをアウトにするために必要であれば、ランナーの近くにいる野手に投げてもかまいません(ただしランナーが元の塁に戻る動きをしていた場合はボークになります)。

※以前にアタクシ、牽制の記事で盗塁阻止の目的でもランナーのいない塁にはプレートを外して投げなければならないと書きましたが間違いでした。スンマセン(汗)。世間でもけっこう誤認してることが多いケースなので気をつけてくださいませ。

 

●牽制球の暴投はテイク1ベース? テイク2ベース?

プレートを外して投げた牽制球が暴投になりエンドラインを越えてボールデッド区域に入ってしまったら、テイク1ベースではなくテイク2ベースになると聞きましたが?

「野手」の送球がエンドラインを越えてボールデッド区域(スタンドやベンチ、草むらなど)に入った場合、「テイク2ベース」となります。たとえば、内野ゴロの悪送球でボールがエンドラインを越えた場合は、バッターランナーには本塁から数えてテイク2ベースが与えられ、2塁へ進塁できるわけです。このケースではよく「テイク1ベース」といっていますが、本当は本塁からの「テイク2ベース」ということです。
さて、本件の答えですが、投手はプレートを外した瞬間から「野手」となるため、その送球がそれてエンドラインを越えた場合、「テイク2ベース」でランナーは3塁へ進塁できます。ただし、投手がプレートを外さずに牽制球を投げ、そのボールがそれてエンドラインを越えた場合は「テイク1ベース」となります。

 

以降はバックナンバーを参照ということで省略します。

●ランナーに打球が当たったら?

 →参照バックナンバーNO.16

●塁に2人のランナーが重なったら

 →参照バックナンバーNO.12

●振り逃げができるのは

 →参照バックナンバーNO.15

●1塁手が送球をグラブでなく胸で捕球したら

 →参照バックナンバーNO.25

  

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 ということで、事例を紹介してみましたが、いかがだったでしょうか。他にもいろいろありますが、キリがないのでここらで終わりにしておきます。講習会でも「へぇ〜、ほぉ〜、そうなんや〜」ということばかりでした。ほんまに私の知らないことばかりで、野球というのは難しいのやなぁ〜と改めて感じました。わかってるようで、実は全然わかってないんですねぇ…。知らないということは恥ずかしいことではありませんが、なにかと都合が悪いのは確かです。また機会があればルールについて取り上げていきたいと思いますんで、とくにうちのメンバーのみなさん、試合の審判では迷惑かけないように私と一緒に少しずつ覚えていきましょうね。




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