セブンウォーズ 炎の大陸

 すごすぎる。もうすごすぎて、読みながら誰もが脳髄を引っかき回され、はるか前世の記憶を引きずり出されては、運命というまな板の上に身を曝され、神の手によって切り刻まれるような衝撃を味わうことだろう。

 名を上杉勇悟という作家の「セブンウォーズ 炎の大陸」(コスミック出版、857円)は、そんな言葉ですら実は表面を撫でただけに過ぎない、激しくも恐ろしい破壊力を持った物語だ。それは、シャチにもなぞらえられる黒光りした旧日本軍の潜水艦「伊−400」が、21世紀の太平洋上、日本海溝の真上に止まっている場面から幕を開ける。

 搭乗しているのは、「太陽学園」なる全寮制学校に通っていた7人の子供たち。ひもとけば、しばらく前に赴任して来た用務主事の巌さんが、7人の子供たちを導きその使命に目覚めさせたという。

 7人とは天文学志望だった信也、学園きっての美少女・真央、男勝りで正義感にあふれたユリ子、ガキ大将で曲がったことが大嫌いな我聞、天才的な発明家の省太、力持ちで気の優しい定則、そして僕こと進一。勇気と正義感は誰にも負けないと自ら言う彼を語り手に物語りは進む。

 そしてこの7人。実は太古の昔から繰り広げられている太陽の王者と天魔王との戦いにピリオドを打つべく、かつて太陽の王者と戦った7人の勇士が転生した存在だったのだ。巌さんはそんな彼らを導くべく、1万2000年の時を待ち続けていたのだ。

 偶然などでは決してあり得ない、逆らえない運命に導かれて、同じ時代に生まれ友人となった7人の子供たちは、その使命を当然の如くに果たすべく、巌さんに連れられ、潜水艦で海溝へと潜り、直径30メートルのトンネルをくぐる危険を冒して、1万2000年前の状況が今なお続くムー大陸へとたどりついた。

 目的はただ1つ。天魔王の手先として大陸を蹂躙していた魔女を相手に、正義の戦いを挑むこと。かくして7人がそれぞれに才能を発揮し、なにより進一の勇気と正義感が圧倒的な力を持ってすべての困難を撃ち破り、世界に、全宇宙に平和を取り戻す戦いへの幕が切って落とされた。

 ムー大陸の神秘。転生への憧憬。科学への信頼。もしもこの物語が1930年頃に書かれたものだったら、進取の意欲に富んだ画期的な科学未来小説として、未来を夢見る多くの読者に読む人に強い感銘を与えたかもしれない。その名を世に刻み、今なお世紀の稀覯本として、名をマニアの間に轟かせたかもしれない。

 けれども今は21世紀だ。科学の隅々まで行き渡った未来の世界だ。そこに打ち出されたこの物語。これはどういう事態なのか。古典的な雰囲気を徹底して演出してみせたのか。だとしたらすごい筆力だと言って言えないこともない。

 逆に、すべてが心の奥底より湧き出たメッセージを書き留めた、ピュアでナチュラルな物語だったとしたら、とてつもなく貴重なものだと言って良い。信じたいけれども知識が許さない転生。願いたいけれども不安が許さない純粋なる正義。それを真正面から、真っ直ぐに描いてあらゆる韜晦も皮相も撃ち破るパワーが、ここにはある。

 とことんまで貫かれる正義。悪であっても改心すれば情けをかける。打算に覆われ疑心に失われたピュアでナチュラルでウォーミングでヒーリングな感情が、マイクロウェーブのように溢れだして読む人の脳髄を染め上げる。痺れさせる。

 加えて表紙も含めて描かれる、空知さと子の手になる可愛いらしい少女をメーンにした美麗なイラストが、ピュアでナチュラルな物語に華を添える。そこに目を惹かれ手に取り読んで、繰り出される強烈なビームを浴びて脳を痺れさせたまえ。魂を震わせたまえ。そこからどこへと踏み出すか。決めるのは貴方たち自身だ。


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