科學小説神髄-アメリカSFの源流

 SFマガジン95年10月号のコラム「世界SF情報」に、SF雑誌「ギャラクシー」が休刊になったとの記述がある。休刊といっても紙媒体の話で、「ギャラクシー」自体はインターネットを通じて発信する電子雑誌に模様替えをしているとのこと。電子雑誌化で先行する「オムニ」といいこの「ギャラクシー」といい、コストがかかるなら紙を一切やめてしまう思い切りのよさが、いかにもアメリカ的だ。

 同じコラムの同じ項に、SF雑誌として最古の歴史を誇る「アメージング」が廃刊になったとある。こちらは電子雑誌化はおろか、他社に身売りされて再刊される見通しもまったくたっていない。こうなると電子雑誌として残る「ギャラクシー」の方が、よほど幸せだと思う。

 東京創元社から刊行された「科學小説神髄-アメリカSFの源流」(3000円)は、野田昌宏さんが1960年代後半にSFマガジンに発表したコラム「SF実験室」をまとめたもの。ダイム・ノベルと呼ばれた安価な小説本の中から、今のSFにつながる科学冒険小説があらわれて来る話、「アメージング」を含むSF雑誌が次々に創刊されて栄枯盛衰をたどる話など、発表から30年近くたった今読んでも面白い。

 かねがね「SFは絵だねえ」とおっしゃる野田大元帥だけに、本書にもダイム・ノベルズやSF雑誌などに掲載されたイラストがふんだんに転載されている。カラーの図版が数点と、鮮明な印刷がうれしいモノクロの図版が多数。オフセットでなかった初出時の印刷より鮮明かもしれない。

 SF雑誌が少なくなっているのは米国も日本も同様。とはいえ「ログアウト」「スニーカー」といった、ファンタジーやゲーム小説を中心とした雑誌は隆盛だし、こうした雑誌の中から日本SF大賞をとった「戦争を演じた神々」(大原まり子、アスペクト)も誕生している。

 野田大元帥が初期の米国SFについてやったような分析を、誰か日本のSFについてやってくれないだろうか。この10年ほどの流れがあまりにも急激で、ちょっとわかりづらくなっているだけに、意義深い仕事になるような気がするのだが・・・。

 電子媒体化は新聞も他人事ではない。

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