E.G.コンバット&E.G.コンバット2nd

 「E.G.コンバット2nd」(原作・イラスト・☆よしみる、著・秋山瑞人、610円)はすっげえ面白え。いやもう面白えって言葉も足りないくらいの面白さで、電撃文庫の中でも結構厚めの物語を最後まで一気に連れてってくれる。

 優秀な成績で月の学校を出て地球に配属された女性士官が生成晶だかプラネリアムだかってな地球を侵略する敵と戦い生き残ってすっげー。けど同期のライバル女で軍のエライさんの一人娘の陰謀で、月へと戻され訓練学校の教官となって落ちこぼれ舞台を鍛え上げるってのが前作「E.G.コンバット」(原作・イラスト・☆よしみる、著・秋山瑞人、610円)の顛末だ。んでもってその女性士官とこルノア・キササゲ大尉、落ちこぼれ隊員たちの能力を引き出し、双脚砲台を操る試験ですっげー成績を修めて、月じゅうを唖然とさせて目出たく第1巻の終わりとなった。あの時は哭いたねー「面白え」って。

 落ちこぼれ鍛えて1等賞? ふーんなんだかありきたりな設定だねって言わば言え。いかにもな美少女たちのイラストだねって眉を顰めて放り出したきゃ放り出せ。けどその戦闘描写の残酷さと訓練描写のハードさと、人物描写の豊かさとそしてそれら描写の土台となる文章力の確かさに、触れたら絶対に放り出せなんかしないから。んでもって残酷でハードな展開故に胸を和ませ目を落ちつかせるイラストの優しさが、かえって有り難く思えてくるから。ほらハマったでしょ? じゃあ第2巻だ。

 さて待望の第2巻では、ルノア・キササゲ大尉にぞっこんとゆー落ちこぼれ部隊とは正反対の超優秀部隊でトップを張るカデナ・メイプルリーフが、ルノアに自分たちの教官になってとお願いする場面から物語は始まる。実戦にはまるで役立たないペーパーテストをいかにこなすかで、ルノアの教え子たちとカデナたち優秀チームとが一緒に勉強をして云々、ってなエピソードが続いてなかなかホノボノ学園ストーリーじゃん、と思わせたところにまたもや悪逆非道なかつてのライバルから、ルノアを危険な地域に送り込もーと策謀をめぐらす。教え子たちの落ちこぼれ部隊が全滅する危機を回避するため、生き残る可能性では従来のルノア隊のはるかに上を行くカデナたちエリート部隊の教官になり、危険な地域へと偵察に出たまでは良かったが……

 ってな展開の物語の、驚嘆と感動のラストは読んで戴くとして、第1巻で自分たちでも信じられない成績をおさめた落ちこぼれたちがぼわーっとしてすっとぼけた朝飯を食べる場面を描く筆の転がり具合といー、間に挟まれたペーパーテストの解答用紙の個性たっぷりな記述ぶりといー、後半に起こる事件を経て落ちこぼれたちが尋問を受ける場面でのそれぞれのキャラの受け答えといー(ぱー、なペスカトーレの意外な1面も見られるゾ)、読み手を飽きさせない言葉のサービス、シチュエーションの大売り出しでページを置いて息をつく暇を与えてくれない。

 とどめはルノアほか一党が巻き込まれる月を舞台にした大仕掛けとその結末で、物理的にどーかは非学故に検証の術がないけど、早川方面ですらあまり読んだことのない月をぶちぬく「自由落下坑」ってな大仕掛けを物語の舞台へと選び、登場人物たちによって演じられるヒューマンドラマなドラマににジワリと湧く感動と涙、そして本当の結末に至って解るおおいなる謎が、ますますもって次への期待を煽って止まない。

 ルノア・キササゲ大尉が月の中心で見たものは? おそらくはそれが軸となって宇宙に蠢く陰謀と、ルノアおよびその変てこりんな教え子たちが活躍を演じる物語へと発展するとは思うけど、弱ければ死んでしまう世界に生きている人々だ。誰もが生き残ってハッピー、ってな終わりを期待するのは哀しいけれど多分難しいだろーから、先へと続けずまんまヘロヘロとホノボノな学園ドラマを演じ続けていって欲しいっって、そんな気持ちもどっかにあるけど、やっぱり先を読んでみたい、ルノアとその部下たちのすっとぼけた日常ぶりと圧巻な戦いぶりを見てみたいって気持ちの方がはるかに強い。

 あと、これほどまでにリアルでシリアスな展開が続いているにも関わらず、単にライバルを潰そーとゆー目的でルノアに意地悪とするライバルの存在が、邪魔で鬱陶しく思えたりもするけれど、彼女がいないとルノアが落ちこぼれ部隊を指揮することもなかった訳で、それだとドラマなんて最初から成立しなかっただろから、ここは必然と存在を認めて何故に彼女がルノアを疎ましく思うのか、んでもって彼女の言うことが何故にすんなり(地球の危機だとゆーのに)認められてしまうのかってのも、謎と絡めて物語りを進めていって戴きたい。


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