“関心領域 ★★☆
The Zone of Interest
(2024年アメリカ/イギリス/ポーランド映画)

監督:ジョナサン・グレイザー
原作:マーティン・エイミス
脚本:ジョナサン・グレイザー
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー、ラルフ・ハーフォース

 

ナチスによるホロコーストを描いた作品。
監督は「アンダー・ザ・スキン/種の捕食」のジョナサン・グレイザー。
本作は、カンヌ国際映画祭グランプリやアカデミー賞国際長編映画賞&音響賞のW受賞をはじめ数々の映画賞を受賞。

描かれるのは、ホロコーストの象徴ともいうべきアウシュビッツ収容所と壁ひとつで隔たれた隣地で、穏やかで幸せな日常生活を家族の様子。
その家の敷地には、花壇や温室、プールも備えられ、収容所司令官であるルドルフ・ヘスの一家が満足家に暮らしている。
壁ひとつ隔てた隣の収容所では、ユダヤ人の大量虐殺などが行われている、というのに。

極めて地味な作品、淡々と一家の暮らしが描かれています。しかし、その淡々さが不気味、恐ろしいとも感じます。
一家の主人であるルドルフが隣地で行われていることを知らない筈がない。
一方、その妻は、この家の豊かな暮らしに満足していて、手放すなど考えられない、断固拒否するという姿勢。
その妻は、隣接する収容所で行われていたことに全く気付かずにいたのでしょうか。
それを疑うのは、後からこの家にやってきた女性が不気味な気配を察知し、すぐ逃げ出していくからです。

それなのに、その妻やほかの家族たちが気づかずにいたのは何故なのか。気づきたくなかったからか・・・いや、全くの関心外だったからでしょう。
そこで初めて、「関心領域」という題名の意味が、重く感じられます。

関心がないから気づかない・・・なんと恐ろしいことでしょうか。
しかし、その“関心外”という姿勢は今、世界に広く蔓延しているのではないでしょうか。
民主主義国家対強権国家(独裁国家)、近年強権国家のほうが勢いを増しているように感じるのは、民主主義国家における、見て見ぬふり、関心外という風潮が広がっているからではないのか。
本作が示しているのは、決してこの司令官一家の特異な生活だけでなく、現在の世界に通じる問題なのだと思います。
無関心である、ということこそ恐ろしい・・・。

2024.05.26

           


   

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