四肢麻痺している主人公が尊厳死を求めて闘いを始めるというストーリィ。
実歳の人物ラモン・サンペドロの手記を元にした映画とのこと。
主人公のラモン・サンペドロは、若い時に引き潮最中の海へ飛び込んで海底に頭を打ちつけ、首の骨を折ったことから首から下の全身が麻痺し、20数年もの間ベッドにくくりつけられた生活を送ってきた。そしてついにラモンは、自ら尊厳死を求めることを決意する。
彼の尊厳死を支援する団体のジュネ、女性弁護士のフリオ。その一方で、彼の死を思いとどまらせようとする貧しい子持ち女性ロサが、ラモンの人生に関わってきます。
全身麻痺といっても、頭脳も明晰で年寄りでもないラモンがここで死を選ぼうとするのは違和感があります。でも、彼は既に20数年もの長い間、ベッドに寝たきりの生活を送ってきた。その長さを思うと、これ以上の長い人生を今のまま耐えろという権利が誰にあるのか。
ラモンのために兄は楽ではない農業に人生を費やし、義姉のマヌエラ、甥のハビがラモンのために尽くしている負担も大きい。
ラモンが自ら死を選んだことの是非を決めることは難しい。
所詮他人事であればこそあれこれ言えるかもしれないが、身内の人間にとってはそう簡単なことではない筈。
女性弁護士のフリオ自身も病気をもち、次第に痴呆化が進み、いずれ植物人間になってしまうことを怖れている。その彼女ですら、結局ラモンとともに死を選ぶことは出来なかった。
自ら死を選ぶということも、大きな勇気と決意を有することなのでしょう。
登場人物の誰よりも、無言でラモンを見送る義姉マヌエラの姿に胸打たれます。ずっとラモンを看護してきて誰よりもラモンのことを理解している人物と思います。自分の思いを押し殺してラモンの気持ちを尊重しようとする、その姿が一番ラモンに沿ったものであるように思います。
これは、いつか自分の身に起きるかもしれない問題。その意味で真剣に観入った作品です。
2006.01.29
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