原作を読み終えたばかりのところで、そのまま本映画を観ました。
名優アンソニー・ホプキンスにエマ・トンプスンという配役ですから、2人の演技の見応えあるところに言うことはありません。
原作が執事スティーブンスの第一人称による語らいだったのに対して、映画はあくまで第三者の視点に立つことになります。おまけに時間と言う制約もあり。
原作を見事に追っていますけれど、登場人物の微妙な心の揺れ、それを映画の中から汲み取っていくのはかなり難しいことなのではないかと思います。映画を観ながら、あぁここだよな、ここ!と思うところが幾度もあり。
最も相違点を感じるところは、映画と原作から受ける印象の違いです。
ダーリントン卿に仕えた執事時代の回想、そこには苦味もやや後悔することもあった、というのが映画からの印象です。しかし、原作から受ける印象はちょっと異なります。
スティーブンスは最高の執事であろうとしたのであって、偉大な国際情勢の現場に立ち会うことになったのも、一方で少しばかりの悔恨も抱えることにもなったのもその結果に過ぎないとも言えるのです。そして、回想において明るい部分も、今後に向けての前向きな部分も原作にはあるのです。
原作は軽々とした気持ちで読めましたが、本映画を観ている間はどうしても重たい気分になってしまいます。
※アメリカの若手政治家を“スーパーマン”のクリストファー・リーブ、イギリスの若い雑誌記者をヒュー・グラントが演じているのが、いかにも米国・英国のイメージ代表らしく面白い。
2006.12.03
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