1925年制作のサイレント映画「オペラ座の怪人」の印象が鮮烈だっただけに、それとどう違うのか、どうミュージカル化されたのか、というのが一番興味をもったところです。
サイレント映画で“怪人”はなかなか姿を現しませんが、本作品では冒頭から登場してしまう。その時点で、嗚呼これは全くの別物として観るべきだなと悟りました。それは本作品がミュージカルとして作られている以上、必然的なものだったのでしょう。
サイレント映画ではミステリアス、不気味な雰囲気が作品のミソでしたが、本作品はそれと全く異なり、要は男女3人の三角関係と言って良い。
すなわち音楽の師弟関係から結ばれている“怪人”と新人の歌姫クリスティーヌ、幼い頃から結ばれた恋人同士のクリスティーヌと青年貴族ラウル。
そのためには怪人も冒頭から登場せざるを得ない。その分、“怪人”性は劣ることになりましたがそれはやむを得ません。
時は1870年、場所はパリのオペラ座。華麗なオペラが上演されているこのオペラ座には、仮面をかぶった謎の怪人“ファントム”の存在が隠されていた。
そのファントムは、かねてから密かに一座の若い娘・クリスティーヌを音楽指導しており、そのクリスティーヌが漸く桧舞台に登場するに至って、彼女への独占欲を露に示してきます。
青年貴族ラウルと再会したクリスティーヌはすぐに彼と恋愛関係に陥りますが、そのために彼女はそれまで“音楽の天使”と信じていたファントムとラウルとの間の板ばさみとなり、千々に心乱れる、というストーリィ。
絢爛豪華なミュージカルという点も見応えありますが、何にもまして素晴らしいのは音楽。
「音楽の天使」を初め、ミステリアスでかつ訴えかけるような上に迫力ある歌、音楽、すこぶる聞き応えがあります。
ファントムを演じるジェラルド・バトラー、クリスティーヌを演じるエミー・ロッサムの2人が素晴らしい。
久々に充分堪能できた映画ミュージカルです。
なお、折角の「オペラ座の怪人」、できることならサイレント時代の旧作を観てから本作品を観たら、単品で観るより満足度はきっと大きいと思います。
旧作と併せて観ることを是非お薦めします。
2005.09.04
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