“運び屋 ★★★
The Mule
(2018年アメリカ映画)

監督:クリント・イーストウッド
原案:サム・ドルニック
脚本:ニック・シェンク
出演:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン、マイケル・ペーニャ、ダイアン・ウィースト、タイッサ・ファーミガ、アリソン・イーストウッド、アンディ・ガルシア

 

2008年「グラン・トリノ」以来の、クリント・イーストウッド、監督・主演映画。
監督を務めるだけでも驚きなのに、88歳にして主演までとは、いやはや驚きました。

本作は、著名な園芸家だった老人が大量の麻薬の運び屋を務めていたという、実際の犯罪に基づいたストーリィ。
退役軍人のアール・ストーン、家族を顧みず、デイリリーというユリの栽培に情熱を注いでいます。しかし、品評会で最優秀賞を受賞したのももはや過去の出来事。家は差押えを受けて出ていくしかないものの、顧みなかった妻や娘からは相手にされず、途方に暮れる状況。
そんなアールに見知らぬ男が、ある場所からある場所へ車の運転をするだけで金がもらえる、という仕事を紹介してきます。
車の運転をするだけで金がもらえるならと、むしろ喜んで引き受けたアールでしたが、何度も仕事をするうち、自分の運んでいるのが大量の麻薬と気付きます。

年を取って、金もなく、家も追い出され、家族からも見放された孤独な老人が、唯一手に入れた生きるための道・・・という印象を受けます。

しかし、それでも自分らしさを失わずにいるアールには、古き時代において一徹に生きたガンマン、といった風貌を感じます。
世間から見放されたような老人でありながら、仲間と僅かながらも心を通わせようとし、犯罪仲間の身を心配するアールは、枯れているようでユーモア感覚もまだ残しているという、中々に味わいのある人物です。
老いたクリント・イーストウッドからこそ、このアールという人物を演じられる、だからこそ監督かつ主演なのかと、感じ入った次第。

それと同時に、本作でのクリント・イーストウッドには、彼自身の来し方、長きにわたる俳優人生の集大成といった雰囲気も感じられて、感慨深いものがあります。

本作を見終えた後、昔見たクリント・イーストウッド作品をもう一度観たくなってきました。

2019.03.10

           


   

to 映画note Top     to 最近の映画 Index