コーエン兄弟による犯罪コメディ。
55年作品「マダムと泥棒」をリメイクした作品とのことです。
黒人の老婦人であるマンソン夫人の元にある日訪れてきた“教授”と名乗る白人男性。
のっけから保安官を嫌がるそぶりを見せる彼は、そもそもの登場からして怪しいことが見え見え。それにもかかわらず、マンソン夫人は彼に部屋を貸すことを承知し、おまけに地下室の使用も認める。
地下室の使用は音楽演奏の練習のためという触れ込みですが、すぐに地下室からトンネルを掘って、カジノの金庫から大金を奪い取ろうという犯罪計画であることが判ります。
説明されるまでもなく、これってシャーロック・ホームズの「赤毛連盟」のネタですよ。
その教授が集めた各分野のプロというのが、いずれもどこか間が抜けた人物ばかり。そのメンツのままに、犯罪は愚かしく齟齬が生じ、愚かしくも肝心なところでマンソン夫人にバレてしまい、一同窮地に陥るのです。
最後はまさに愚かしさ極まれりというばかりに自滅していくというストーリィ。
犯罪とは愚かしいものとはよく言ったものですが、ここまで愚かしさを発揮すると、犯罪なんてバカらしくてやってられない、そんな気分になります。そこがコーエン兄弟らしい笑いなのでしょうか。
見所は、知能犯を気取りながら口八丁手八丁のペテン師に過ぎない教授を演じるトム・ハンクスの演技ぶり。
まるで別人のごとき表情が窺えるところに、面白さがあります。
そんな面白みはあるものの、かなりシニカルなコメディです。
2005.05.30
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