サッチャー元英国首相の伝記そのものには余り興味はなかったものの、サッチャーを演じたメリル・ストリープが本作品でアカデミー主演女優賞を獲得したというので、観に行った次第。
印象深かったのは、彼女の政治家としての道のりを順に追っていくのではなく、今や老いさらばえて認知症を患い、既に亡くなった夫デニスの幻影に悩まされつつあるサッチャーが、かつての自分を回想するというストーリィ構成。
サッチャーが選挙に立候補し、やがて当選して国会に足を踏み入れ、ついには首相となるという道のり部分はそれ程面白いとは思いません。
一方、労働スト相次ぐ当時の国内情勢、そして勃発したフォークランド紛争、危機に瀕した国家を指導するという立場の重圧感、孤独感は凄まじいものがあると感じました。
本作品の見処はメリル・ストリープの演技にある、敢えて言えばそこしかない、と言って過言ではありません。
とくに、英国首相だった頃のサッチャーではなく、むしろ老いさらばえたサッチャーを演じることにおいて。
※ふと思うと、サッチャー始め当時の主だった各国のトップたち、現在に比較すると皆もっと大物だった、という印象がします。
2012.03.24
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