実話に基づくストーリィとのこと。
2015年、アムステルダムからパリに向かうフランス高速鉄道の車内において、銃を持ち込んだ犯人により銃乱射、無差別テロが発生しようとしていた。
たまたまその列車に乗り合わせた米国人青年3人が、果敢に犯人にとびかかり、乱闘の末に取り押さえる。また、銃弾を受けて倒れた瀕死の男性乗客に対して救命措置をとり、命を救ったというのがその事件。
勇敢な英雄行動に対し、青年3人ともう一人の紳士がフランス大統領から勲章を受け、さらに3人は郷里でも再び表彰され凱旋パレードが行われたという。
さも劇的なサスペンスが展開されるのだろうと思ったのですが、そこが他の監督とは全く異なる手法をとるクリント・イーストウッド監督。
テロ場面は最後の一部だけで、それまではずっと、幼馴染3人の少年時代から語り出され、3人のうち2人が軍隊に入り、たまの休暇をもう一人も米国から呼び寄せてヨーロッパ各国を観光旅行して回る様子が描かれます。その観光の様子がむしろ楽しいくらいです。
そして最後の観光地パリへ向かう途中、たまたま、偶然に上記事件に遭遇したという次第。
3人が格別優れた、勇敢な青年、という訳ではありません。一人は多くの人を救いたいという願いを抱いて軍隊の選抜された部隊への配属を志望しますが、適格条件を満たしていないという理由で落第、他部隊に回ったという経歴。
しかし、そんな彼が突然の出来事にて少年時代からの願いを果たし、英雄になってしまう。
ごく普通の日常生活の隣り合わせに、テロという凶悪事件の悲劇があり、またこれもたまたまにして英雄として称賛を浴びる出来事がある。それらの間は僅か紙一重に過ぎない、という事実を強烈に感じさせられます。
一方、そうした事態に直面した時、自分は同様の行動を取れるか、と言ったら正直言って余り自信はありません(第一そうした経験もありませんし)。
なお、本作で唖然とさせられたことは、主人公である青年3人を演じたのが、本人たち自身であるということ。
もしかして・・・と思ったのは、パリでの表彰場面にオランドフランス大統領本人が登場していたから。
また、上記人たちだけでなく、実際に事件が起きた列車に偶然乗り合わせていた乗客たちの多くが本人役として起用され、自らを演じていたとのことです。
全く、こんな配役は前代未聞! クリント・イーストウッド監督、毎度ながら予測不可能な手法で驚き、楽しませてくれます。
2018.03.03
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