ブロードウェイでトニー賞を受賞したミュージカルの映画化。
いやあー、凄い作品でした。
冒頭から最後まで緊迫感みなぎり、一瞬たりともその途切れることがない。
ミュージカルにおける歌は、ストーリィの楽しさを盛り上げるものとばかり思っていましたが、ホラー的である本作品においてはまるで違う働きを果たしています。
さしづめ緊迫感をいっそう盛り上げ、ストーリィを端的なものたらしめている、という感じです。
昔、松本幸四郎さん(当時:市川染五郎)がこのミュージカル劇を舞台で演じたことがあってその時誘われたのですが、○肉パイが・・・という話を聞いて遠慮し、後で後悔したという思い出があります。
そのこともあって、ジョニー・デップ主演のことは抜きにしても観に行こうと思った次第。
ストーリィは、19世紀の英国、ロンドンが舞台。15年ぶりにロンドンに主人公が戻ってきたところから始まります。
背景は、厚い雲に覆われ、どんよりと暗い雰囲気のロンドン。本作品のもつ陰惨さを冒頭から予告しているようです。
愛する妻と生まれたばかりの愛娘に恵まれ幸せな理髪師だったベンジャミン・バーカーは、彼の妻に邪な欲望を抱いたタービン判事によって無実の罪で終身刑を言い渡されます。
ロンドンに戻ってきた彼はスウィニー・トッドと名を変え、フリート街にあるミセス・ラベットが経営するミート・パイ店の2階という元の場所で、再び理髪師として腕を振るい始めます。
彼の目的はただ一つ、妻と娘を奪った男タービン判事への復讐。そして理髪師が使う道具と言えば剃刀。当然の如く復讐劇は陰惨な光景から始まり、しかも階下がミート・パイ店となれば・・・・。
陰惨といえば陰惨、これ以上ないくらいですが、ここまで圧倒されてしまえば何も言うことありません。そのうえ、何の言葉も口に出させないまま終わってしまうところが、何とも相応しいと言えるでしょうか。
冒頭からこんなことかな、と予想されたことであり、これ以外の結末はありよう筈もないというストーリィです。
スウィニー・トッドを演じるジョニー・ディップ、彼を慕うミセス・ラベットを演じるティム・バートン夫人のヘレナ・ボナム=カーターの熱演が抜群。
敵役タービン判事を演じるアラン・リックマンは、「ハリー・ポッター」のスネイプ役とはだいぶ印象が異なりました。
これはもう、一度観たら忘れられない映画です。
※ただ、個人的な趣味として、復讐劇はデュマ「モンテ・クリスト伯」のような方がいいなぁ・・・。
2008.01.26
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